雪遊びは程ほどに

冬島の近くを通り過ぎたモビー・ディック号は甲板に雪が大量に積もっていた。

○○を筆頭に白髭海賊団のクルー達は「オヤジの為に!」を合言葉に雪掻きをしていた。

しかし、前回の掃除とは違い、なかなか進まない。

理由はひとつ。
彼の加入のせいだった。



「キャッ!!」

雪掻きに真剣になっていた○○の後頭部に目掛けて雪玉が飛んできた。

「あははは!当たり!!」

嬉しそうに指を弾いたのはエース。
彼は最初こそオヤジである白髭に楯突いていたが、改心、和解してからは生来の人懐っこさから白髭海賊団の末っ子として可愛がられていた。

そして、何故か○○の邪魔ばかりをしていた。

「もー!エース君も手伝ってよ!」

○○はぷんすかと怒りながらエースを振り返る。

「船が汚れてようと、雪が積もってようと、オヤジの凄さが変わるわけじゃねェだろ?」

にかりと笑うエース。

(((いや、そうだけどよ!!!)))

クルー達は心の中で突っ込んでいた。

「そうだけど!違うの!」

○○は雪掻き様のシャベルを雪に突き刺した。

「何が?どう?」

エースは不思議そうに聞く。

「何か、3才児と話してる気分」

○○は深くため息をついた。

「じゃあ、雪掻きしないエース君はあっち行ってて」

○○はしっしっと手を振る。

「むっ!何だよ!」

エースはムッとした表情で○○の後ろを追いかける。





「あいつら仲良いなー」

雪掻きの指示をしながらサッチは笑った。

「そうだねい」

マルコは興味無さそうに呟いた。

「おい、マルコ!お前のお気に入り持ってかれるぞ」

ニヤニヤとサッチがマルコを見る。

「あいつはみんなのお気に入りだろうがよい」

マルコはふんと鼻をならす。

「そんな余裕ぶっこいてると簡単に拐われちまうぜ?」

「言ってろ」

サッチの言葉にマルコは面倒臭そうに吐き捨てた。






「おりゃ!」

「冷たっ!!」

エースが雪玉を○○に投げて雪掻きの邪魔をする。

「もー!!いい加減にしなさい!!」

○○は手を腰に当てた。

「エース君は火なんだからあっと言う間に雪なんか溶かしてよ!」

「嫌だね、勿体ねェ!」

○○の文句に間髪入れずに答えるエース。

「雪遊びなんてエース君はまだまだお子ちゃまね!」

「そんな俺にいちいち反応する○○だって、似たようなもんだろ」

ニヤリとエースが笑った。

「っ!!くー!」

○○はくるりとエースに背を向けるとスタスタと歩き出す。

「おーい!どこ行くんだよ」

エースは両手をズボンのポケットに入れ、追いかける。

「……」

○○は少し離れた場所で雪掻きを始めた。

「おーい!○○!」

「…………」

「おい、コラ!」

「…………」

「無視すんな!」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「……はぁ、わかったよ」

「じゃあ、雪掻きしてっキャッ!!」

沈んだエースの声に○○が振り返ると、雪玉を顔面に投げ付けられた。

「だー!ッハッハッハッハッ!!ひっかかった!!」

エースは腹を抱えて笑い転げる。

「…………っ!!!っのぉ!!!」

「うおっ!!」

怒りに駈られて力任せに投げた雪玉がエースの顔面にクリーンヒットする。

「へっ!やりやがったな!!」

「っと!危な!」

エースの投げた雪玉をギリギリで避ける○○。

2人は雪玉を投げ合っていた。



「おらー!!お前ら!!遊んでるなぁ!!!」

サッチが遠くから大声を出した。

「す、すみません!!サッチたいちょっ!!!」

「顔面ヒット!!!」

○○の慌てた謝罪にエースが雪玉を投げ付けた。

「……エース君なんてもう、知らない」

冷たい言葉をエースに投げて○○は雪掻きを再開する。

「え?!ちょ、○○!!」

今までと違う雰囲気の○○に狼狽えたエース。

「わかった!俺も手伝う!」

エースは右腕を火に変える。

「あ!待て!エース!!」

焦った声を出したのはビスタ。

しかし、その制止の声は遅く、エースは火拳を雪のかたまりに当てる。

雪が熱でみるみる溶け始める。

しかし、そのせいで高い所に積んであった大量の雪が雪崩を起こす。

「っ!」

「「「○○!!!」」」

白髭クルー達が焦った声を出す。
その雪崩の下に○○がいた。

雪崩は○○を巻き込んだかの様に見えたが、ギリギリの所でエースが○○を抱えて跳んだ。

「っ危ねェ!!」

船の縁に左手の小指だけを引っ掛け、右手で○○を抱えたエースがぶら下がっていた。

「オー!お前ら無事か?!誰か引き上げてやれ!」

サッチがホッとした表情で叫んだ。

「ん……エース……くん」

「ん?どうした?」

○○の戸惑う声が聞こえてエースが○○を見ると、顔を赤くしていた。

「そ、その。揉むの……止めてくれるかな?」

○○が恥ずかしそうに言うのは、エースが手が丁度胸にあり、しかも指が動いているのだ。

「……うわぁぁぁ!!!」

自分の行動に驚いたエースが○○の胸から手を離す。

「え?あ!やっぱり寒中水泳ぇぇぇ?!」

離された○○の体は海へと落下を始める。



ーーバサッ


突然目の前が青一色に染まる。

「へ?あ!落ちてない」

○○は慌てて自分の状況を判断しようと上を見上げる。

「ま!まままままままマルコ隊長!!!!」

「耳元で騒ぐない」

「っ!!!すみません!」

○○は腕だけ不死鳥化したマルコに抱えられ、寒中水泳を免れたのだ。

「羽だと抱きにきィ。掴まれよい」

「へ?はい!…………ど、どこに?」

「首にでも掴まれ。いちいち聞くなよい」

「す、すみません!!」

○○は落とされない様にがっしりとマルコの首に抱き付いた。

それを確認してからマルコはバサリと舞い上がる。

「ま、マルコ!」

エースの所まで飛び、止まる。

「寒中水泳なら、テメェでやってろい!!」


ーーガンッ


「うわぁああああ!!!」


ーーボチャーン


「え、エース君!!」

○○の驚きの声を無視してマルコは船上へと舞い降りた。

「馬鹿が一人落ちた。誰か助けてやれ」

「「「は、はい!!!」」」

マルコの地を這う様な声に元スペード海賊団の面々がいち早く反応して頷いた。

「ま、マルコ隊長」

甲板へと下ろされてから怖々マルコを見上げる○○。

「なんだい?」

「た、助けて頂いてありがとうございました!」

○○はぺこりと頭を深く下げた。

「……」

マルコは無言で○○の頭をくしゃりと撫で、その場を立ち去った。

「か、カッコイイ……!!」

○○は同じ海賊としてマルコを尊敬の目で見つめた。








雪遊びは程ほどに









「よう!マルコ!このムッツリ!!」

「あァ?!」

「首に手をかけさせなくてもお前なら余裕で運べる癖に!」

「うるせェよい」

「ぐふふ!可愛いな、マルコちゃん!」

「黙れい!!!」

「ぐはっ!!!!」






***




たまには純情エースも良い!

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