亭主元気で留守が良い(後編)

「よう、○○。良い格好だな」

シャンクスが目を細めて○○の姿を見た。

ハッと破られた服に気付いて錠のされた両手で自分の胸辺りを隠した。

「俺以外の男に触らせやがって。来い」

シャンクスの言葉に○○はふらりと立ち上がり、足が動いた。

「待て!こいつは自分の意思でここに来たんだぞ!」

大砲が降る船の上で船長が無謀にも四皇の前に立ち塞がった。

「そんな事知った事じゃねェな。○○が俺の女である以上、お前は俺の敵だ」

シャンクスが静かに言い、○○に手を伸ばした。

○○は何かに操られる様にシャンクスの腕の中へ入る。

「じゃあな」

シャンクスは○○の顔を自身の胸に押し付け、剣を引き抜いた。






「お前、何で素直にあいつの船なんか乗ったんだ」

先程までの怖い雰囲気のシャンクスと打って代わって、のほほんとした様子で聞いてきた。

「えっと。私が行かなきゃ、村の子達を売るって言うから」

○○は初めて乗るレッドフォース号の船長室にシャンクスと二人きりでいた。
珍しい物だらけでどうしてもキョロキョロとしてしまう。

「だからって、お前が犠牲になる事じゃねェだろ」

「じゃあ、どうしろってのよ!」

○○は勢い良く立ち上がった。
ガタンと座ってた椅子が倒れた。

「わ、私達の冗談に悪乗りした貴方のせいで私が今までどんな目に合ってきたか!!貴方と結婚したせいで、結局私は行き遅れじゃない!!」

今まで貯まっていた物が一気に溢れだしてしまった。

「私はただ、普通に結婚して、普通に暮らしたいだけなのに!」

○○はボロボロと涙を流し始めた。

「……俺と結婚した事後悔してるのか?」

シャンクスは椅子の背に体重をかけながら聞いた。

「あ、当たり前でしょ!」

○○は目をそらしながら言った。

「俺の事、好きじゃねェのか?」

シャンクスはじっと○○を見た。

「っの!!好きだから困ってるんじゃない!!」

○○は睨む様に声を出す。

「結婚した時は別に何とも思ってなかったけど、何年もこんな生活してたら、本当に夫婦になったって!勘違いしちゃうじゃない!」

ひっくと嗚咽が漏れる。

「いつの間にか溺れてるから困ってるのよ!本気で好きになっちゃったから、苦しいんじゃない!!」

○○はえーんと泣き出した。

「もー!やだ!返してよ!私の心!返してよ!」

○○はボロボロと泣き崩れた。

「嫌だよ」

シャンクスはぎゅっと○○を抱き締めた。

「なっ!?」

「良かった。俺、嫌われてたらどうしようかと思ったよ」

シャンクスは嬉しそうに声を出した。

「俺も○○が好きだ。だから、心は返せない。その代わり、俺の心も体もやる。それで勘弁してくれないか?」

シャンクスは抱く力を弱め、○○と向き合った。

「はっ?」

「俺は海賊でお尋ね者だ。だからお前を船に乗せる事も、ましてや結婚する事も出来ねェ」

シャンクスは真剣な顔付きで言う。

「だから、出来るだけ安全なあの島で、俺の嫁として暮らしてくれねェか?」

「お、大頭は?」

「ん?」

「大頭は一緒には暮らしてくれないの?」

○○は眉を八の字にして不安そうに聞く。

「…………俺は海賊だ。海の上で生き、海の上で死にてェ」

シャンクスはきっぱりと言いきった。

「一緒には暮らせねェが、今まで以上に愛してやるし、金も入れる」

「……」

シャンクスの言葉に○○は項垂れる。

「悪いがお前を連れて行く事も出来ねェ」

シャンクスは自分の譲れない思いを口にする。

「…………じゃあ、条件がひとつある」

「何だ?」

「浮気はしちゃダメよ?」

○○は困った様に笑う。

「…………どこからが浮気?」

「そう言う質問する人の嫁にはなりたくありません」

「だー!悪い!わかった!浮気はしねェ!」

シャンクスは今までの真面目な雰囲気が嘘のように慌てた。

「それと、お土産は甘いお菓子が良いな」

「条件ひとつって……」

「何か問題でも?」

「アリマセン」

シャンクスの言葉に○○は楽しそうにクスクスと笑った。

「なァ」

「何?」

「名前」

「名前?」

「名前、呼んでくれねェのか?」

シャンクスはじっと○○を見る。

「そ、そうね。……じゃあ、次に帰って来る時までに浮気しなかったら呼んであげる」

○○はにっこりと微笑んだ。

「っ!!わかった!見てろ!」

「あ、1週間とかで帰ってきて『浮気しなかった!』ってのはノーカンだからね?」

「…………」

「わかった?」

「…………ワカリマシタ」

「よろしい」

○○は嬉しそうに笑い、それを見たシャンクスも嬉しそうに笑った。








亭主元気で留守が良い










「○○!ただいま!」

「あら、お帰りなさい」

「3ヶ月!浮気しなかったよ!」

「へぇ!…………これ?なに?」

「へ?!何故その名刺がそこに?!」

「ふーん。名刺貰ったの?」

「ハッ!!罠か!!」

「大頭はまだまだね」

「ま、待ってくれ!○○!」



***



○○様!ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます!

一緒にいたいのは女の願望で、家に置きたいのは男の願望ですね!

シャンクスって、もし実際しても女を船に乗せなさそうだなぁって思いました。
(まぁ、あんまり話の展開なくなるけど(笑))


それでは!感想などおまちしてまーす♪

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