雪の降る日
「さ、寒い!!!」
雪の降る中、甲板では○○を含めた下っぱが雪かきをしていた。
「○○は寒がりだなぁ!!」
ケラケラと笑われる。
○○はセーターの上にコートを着て、マフラーを巻き、耳付き毛糸の帽子を目深に被っていた。
手には手袋、足元はモコモコブーツ。
その姿に誰も海賊とは思わないだろう。
「寒いですよ!何でそんな薄着なんですか?!おかしいんですか?!」
○○は赤い頬にガチガチと震える口を開いて声を出す。
「鍛え方が足りねェんだよ!!」
ケラケラとクルー達は○○を笑った。
「うー!冷えた!何か温かい物貰おう」
○○は手を自分の息で暖めながら船内を歩く。
「お!○○か」
「お、お頭!」
○○の乗る船の船長。
四皇赤髪のシャンクスがひょこりと顔を出す。
「雪かき終わったのか?」
「はい!」
「御苦労さん!」
シャンクスはにかりと笑った。
「なら、時間あるだろ?ちょっと寄ってけ!」
シャンクスは自室を指差した。
「え?良いんですか?」
○○は下っぱであって、なかなか船長であるシャンクスと話す機会はない。
少し緊張しながら聞く。
「もちろんだ!俺が誘ってるんだぞ」
だっはっはとシャンクスは高らかに笑った。
「じゃあ、少しお邪魔いたします」
○○は緊張しながらも何とか笑顔で答えた。
2人は船長室へと入る。
「そこ座ってくれ」
シャンクスは適当に椅子を進める。
「は、はい」
座ろうとして、はたと気が付く。
「あの、お頭」
「ん?どうした?」
「脱いでも良いですか?」
「ぶふっ!!!」
○○の言葉にシャンクスが噴き出す。
「は?え?な、」
「あ、あの。コートとか……」
シャンクスが慌てていると、○○がモコモコと着ていたコートやマフラーを手で持つ。
「あ、なんだ、それか。もちろんだ。楽にしてくれ」
シャンクスは残念そうに笑った。
「?はい」
○○は不思議に思いながらもマフラーや手袋、帽子を取る。
「そこの机にでも乗せとけ」
シャンクスが指差す丸机に○○は遠慮がちにマフラーなどを乗せた。
コートも脱いで、身軽になると、ようやくホッと息をついた。
「寒かったろ?」
シャンクスは笑いながらカップを取り出す。
「はい。皆さん薄手なので見ていてこっちが寒いです」
○○は困った顔で笑う。
「お頭も薄手ですよね」
○○はじっとシャンクスを見る。
いつもと変わらぬ格好だ。
「だっはっは!鍛えてるからな」
シャンクスは笑った。
「ほれ、ホットワイン」
シャンクスはカップに入った暖かいワインを差し出す。
「す!すみません!お頭にこんな事させてしまって!」
○○は慌てて立ち上がると、カップを受け取る。
「良いよ。ここは俺の部屋だしな」
シャンクスはにかりと笑う。
「○○はいつも良くやってくれてるからな。前からちゃんと話してみたいと思ってたんだよ。なかなか機会がなくてな、遅くなっちまった」
シャンクスもカップを手に椅子に座る。
「いえ……。海賊としては全然役立たずですけど」
○○はため息混じりに首を振る。
○○は勇敢に戦う海の戦士を目指して海賊になる決心した。
しかし、戦闘の腕はそこそこ。
なまじ四皇の船になど乗っているので、戦闘では役に立たずで懸賞金すら付かない。
結局は雑用全般を引き受けている感じなのだ。
「なかなか筋肉も付かないですし……」
○○はため息をつきながら腕を捲る。
海賊にしては細く白い腕だ。
「良いじゃねェか!海賊なんて自由だ!お前に合った海賊になれば良いのさ」
シャンクスはぐびりとワインを煽る。
「お頭!」
うるると○○はシャンクスの言葉に感動する。
「それに、女があんまり筋肉付けても抱き心地悪くなるしな」
「だ、抱き?!」
「あァ。やっぱり抱くなら柔らかい方が俺は良い!」
「やわ?!」
シャンクスの言葉に焦る○○。
「仲間じゃ無かったら抱いてるのになァ」
シャンクスがじみじみと○○の頭から爪先まで舐める様に見た。
雪の降る日「いや、あの」
「それとも抱かせてくれるか?」
「…………ご遠慮願います」
「つれねェな!」
「あわわわわ」
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