幼馴染みと聖夜
『なァ、○○!今度の月曜日休みだよな!』
電話越しのシャンクスが楽しそうな声を出す。
「え?……あー、その日仕事だわ」
○○が手帳を見ながら言う。
『は?振り替え休日だぞ?』
「それでも社会人なんてそんなものよ」
『……クリスマスイブだぞ?』
「そうだねー」
『……』
シャンクスが押し黙る。
「なによ」
『楽しみにしてたのにて……』
シャンクスのふて腐れた声が鼓膜を揺らす。
「仕方ないでしょー。仕事なんだから」
○○はため息交じりに言う。
『恋人になって初めてのクリスマスだろ?』
「あれ?恋人になったっけ?」
○○は眉を寄せる。
『お前は恋人でも無い男と寝るのか』
「あれはシャンクスが無理矢理した事でしょ?」
『……』
「とにかく!月曜日は仕事です!」
『……』
「まぁ、夜は空けてあげても良いけど?」
『本当か!?』
○○の言葉に打って変わって嬉しそうな声を出すシャンクス。
「シャンクスが良い子にしてたらね」
○○はクスクスと笑った。
『解った!じゃあ月曜日はそっち行く!』
「うん。待ってるよ」
『よし!じゃあな!』
「うん、バイバイ」
ーーピッ
携帯の通話を切ると○○は上機嫌で手帳の24日にハートマークを描いた。
そして24日。
○○は上司と2人で取引先から会社へ帰るために並んで歩いていた。
「無事に契約取れましたね!」
○○は背の高い上司を見上げてにこりと笑った。
「そうだね」
上司は少しダルそうに頷いた。
「これで自社に帰ったら終わりですね!」
「そうだね。せっかくの休みでクリスマスなのにねー」
上司はふーと息をつく。
「あはは、そうですね」
「あれでしょ?彼氏待たせて」
「彼氏じゃなくて幼馴染みです」
「あらら、冷たい」
上司は表情を崩さずに言う。
「冷たくなんか……」
「おい」
急に声がして慌てて振り返る。
「え?シャンクス!なんでいるの?」
○○は背後にいた季節外れの麦わら帽子をかぶるシャンクスを不思議そうに見る。
「お前仕事とか言って、こんなオッサンと一緒に何してんだよ」
「あらら、オッサンって酷い言われようだな」
上司は苦笑しながらシャンクスを見下ろす。
「シャンクス君よ。盛り上がってる所悪いけど、この方私の上司のクザンさん」
○○はため息をついて上司ーークザンを紹介する。
「……うー」
「唸らないでよ」
○○は唸るシャンクスに頭を抱える。
「会社には俺が行くから○○ちゃんは直帰で良いよ」
クザンが2人を見ながら言う。
「まさか!甘やかさなくて良いんですよ!上司にそんな事させられません!」
○○は慌ててクザンに首を振る。
「○○、そんな……」
「シャンクス。夜は空けてあるって言ったじゃない!」
「……おう」
「それとも今日は止める?」
「悪かった!」
○○の言葉にシャンクスは頭を下げる。
「あらら、尻に敷かれてるねー。若者よ」
クザンはニヤニヤと笑った。
「じゃあ、シャンクス後でね!」
「……おう」
○○はシャンクスに手を振る。
○○は急いで帰路についていた。
早足で自分のアパートを目指した。
部屋の明かりはついていない。
「あれ?」
○○は息も絶え絶え玄関を開ける。
「ただいま!」
○○は部屋に入ると明かりをつける。
「なんだ!いるじゃん!」
○○はベッドに座るシャンクスを見る。
「……」
シャンクスは無言で項垂れている。
「ちょ、不機嫌ね」
○○はコートを脱いでハンガーにかけ、クローゼットにしまう。
「……」
シャンクスは口を尖らせる。
「あのね!別に楽しみにしてたのはシャンクスだけじゃないのよ!」
○○は腰にてを当てる。
「……信用できるか」
シャンクスはふて腐れた様に声を出す。
「じゃあ、証拠でも見せようか?」
○○は広くないキッチンへと行くと冷蔵庫を開ける。
「ほら!」
「あ……」
冷蔵庫の中にはシャンクスの好きな○○手作りのケーキが入っていた。
「私だって、シャンクスとクリスマス過ごすの楽しみだったから、昨日の夜寝ないで焼いたの!」
○○は顔を赤くして言う。
「○○!!」
シャンクスは驚いてケーキを見てから○○を抱き締めた。
「幼馴染み以上恋人未満、でしょ?」
○○はクスリと笑った。
幼馴染みと聖夜「ここまでしてまだ恋人じゃねェのかよ!」
「シャンクス良い子にしてなかったじゃない」
「……うー」
「ふふ。シャンクス、メリークリスマス!」
「メリークリスマス!さて、抱くか」
「こら、調子に乗るな!」
「っ痛ェー!!」
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