犠牲になるのは君ひとり
グランドライン後半の海新世界。
そこに皇帝のごとく君臨する4人の海賊達。
その一人、泣く子も黙る赤髪海賊団を率いるのは赤髪のシャンクス。
その男が今1番気になっているもの、それは○○。
赤髪海賊団に所属する女海賊だ。
「なァ、○○!良い酒が手に入ったんだ!」
「はい!今夜は宴ですか?コックさんに知らせておきますね!」
「いや、そうじゃなくて」
「○○ー!見てみろ!これ綺麗だろ!」
「これ、岩塩ですよね!」
「そうだ!」
「じゃあ、コックさんに渡しておきますね!」
「だから、そうじゃなくて!!」
「お頭報われないな」
ルゥの奴がお頭と○○の様子を見て声を出す。
「デレッデレの四皇ってのも嫌なもんだな」
俺はため息混じりに言う。
我らが赤髪海賊団大頭、赤髪のシャンクスは赤髪海賊団クルーの○○の尻を追いかけっぱなしだ。
何かあると真っ先に嬉しそーな顔して「○○ー!!!」だ。
そんで、対する○○「じゃあ、○○に伝えておきますね!」とお頭を取り合わない。
スルースキルが高いのか、天然なのか……。
いや、ありゃ天然だな。
「お頭ー」
「なんだよ、ヤソップ……」
キッチンへ行ってしまった○○の背中を未練がましく追っていた顔がそろりとこちらを向いた。
「三十路過ぎのおっさんのする顔じゃねェ」
「うるせェ!!!」
俺の声にお頭が拗ねた様に口を尖らせる。
だから、そんな顔すんな!!!
「だから、○○に振られたくらいでメソメソすんじゃねェ」
俺はついついため息混じりになる。
「振られてねェ!!!」
「そっちかよ!!!」
俺は情景反射的に突っ込む。
「いやな、好きな女追いかけて、一喜一憂する経験はもちろん俺にもある」
「だろ?」
俺の言葉に嬉しそうにするお頭。
「だがな、それは多感な十代、二十代の頃だ!あんたは30過ぎたおっさんだろ?!」
「俺は永遠の18歳だ!!!」
「無理だ!!!」
俺はまたもや反射的に突っ込む。
「…………お前は良いよな、ヤソップ」
「あん?」
なんだ?急に潮らしくなりやがる。
「お前には奥さんいるじゃねェか」
ポツリと呟くお頭。
「まァな。俺はあいつ意外いらねェからな」
俺はあいつを思い浮かべる。
会いてェが、死んじまってるから会えねェ。
俺も死んだら会えるかと思ったが、あいつは天国にいるだろうしな。
海賊なんざやってる俺が天国に行くなんて気持ち悪い考えはねェよ。
地獄に行くに決まってる。
それに、今会いに行っても「何しに来たの?帰りなさい!」って追い返されちまう。
それでも、会いてェなァ。
「だろ?俺にとって○○がそれ何だよ!」
お頭は真面目な顔でそう言った。
俺があいつを思う気持ちと、お頭が○○を思う気持ちが同じ?
「…………そうか。なら、まどろっこしい事してないで、とっとと手に入れちまえ」
俺が言うとお頭は複雑な顔をする。
「そうしたいのは山々なんだがな」
お頭はため息混じりに言う。
おやおや、ずいぶんと弱腰じゃねェか。
「お頭らしくねェな」
「あァ?!」
「四皇が聞いて呆れるぜ?」
「……」
「俺たちは海賊……だろ?」
「……そうだな」
お頭はニヤリと笑った。
犠牲になるのは君ひとり○○にゃ悪いが、お頭の犠牲にでもなってもらうか!
***
10000hitリクエストの没バージョンを手直ししてアップ!
ヤソップは奥さんと小さなウソップを置いてきた事を気に病めばいい。
ところでヤソップは奥さんが亡くなってるの知ってるのかな?
[ 8/72 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]