さあ!君を捕まえよう(後編)
「はぁ、部下の結婚式に上司が未婚とか格好つかねェな」
シャンクスは自身の赤い髪を撫で付け、上等のスーツに身を包み、派手なネクタイを絞める。
「だったら、人妻なんて狙ってないで、まともな恋愛でもしろ」
ベックマンが待ち合い室で煙草を吹かす。
「そうなんだけどよー。あいつの笑顔が離れないんだよ」
シャンクスははぁとため息をつく。
シャンクスはもう、ずいぶん前に出会った子連れの女性○○に一目惚れしてしまったのだ。
まぁ、相手が人妻なので下手に手も出せずにいたが。
「全く、この人は」
やれやれとベックマンが紫煙を吐き出す。
「あ」
シャンクスが声を出す。
「どうした?」
「○○さんだ!」
シャンクスがじっと入り口を凝視する。
着飾っていて、公園で見た時とずいぶんと印象が違うが、確かに○○だった。
「あれか?……ずいぶん若いな」
ベックマンが勝手に想像していたのは、子供もいるから同じくらいの年だと思ったのだ。
「やべ……。ドレス姿も可愛い……」
シャンクスはじっと○○を見つめ続ける。
「どうやら新婦の友人らしいな」
ほらとベックマンが席次表を見せる。
「本当だ」
シャンクスは急に結婚式が楽しくなってきた。
「相手は人妻だからな。不倫なんかさせたら辛いのは向こうだぞ」
「解ってるよ!」
ベックマンの言葉にシャンクスは睨みを効かせる。
「思うだけなら勝手だろ」
「……そうだな」
ベックマンはため息と共に紫煙を吐き出す。
「先輩!おめでとうございます!」
「ありがとう」
○○の祝福の言葉に新婦がにこりと笑った。
「すみません、私なんかがのこのこやって来て……」
○○はバツの悪そうな声を出す。
「何言ってるの!今日は楽しんでね!」
「はい!」
なんの話だろうとシャンクスは彼女達の会話を立ち聞きする。
シャンクスは招待客の中でも位が高いので、新郎新婦の座る席のすぐ前だ。
なので、会話がよく聞こえる。
「旦那さんが亡くなってずいぶん経つわよね。そろそろ次考えたら?子供達も父親が欲しい時期でしょ?」
新婦がにこりと笑う。
「まぁ、……良い人がいれば良いですけどね」
○○は困った様に笑う。
「何か条件はあるのかい?」
新郎も知り合いらしく、気軽に○○に聞く。
「え?あ、そうですね。子供がいると、割合お金がかかるのでしっかり働いてる人が良いですね」
○○はあははと笑う。
「なら、俺立候補!」
いつの間にか後ろに立っていたシャンクスが声を出す。
「あ、あれ?貴方は!」
○○は驚いてシャンクスを見る。
「あぁ!社長なら良いかもな!」
新郎が笑って頷いた。
「社長?」
そう言えば名刺にそんな事書いてあったなと思い出す。
「37歳独身!赤髪の代表取締役!金と愛情には苦労させないぜ?」
ニヤリとシャンクスは笑った。
「あはは、それは是非ともお願いしたいですね」
○○はクスクスと笑った。
「言ったな」
「え?」
シャンクスはニヤリと笑った。
さぁ!君を捕まえよう「丁度ここ結婚式場だしな。予約取るか?」
「は?」
「○○の子供にも好かれてるしな」
「よ、呼び捨て?」
「本当に失恋したと思ってたんだぞ?」
「あの」
「大丈夫だ。幸せにするよ」
「いや、だから」
「私達の結婚式で新しいカップル誕生ね!」
「めでたいね!」
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