ポッキーゲーム

「あ、今日ってゾロの誕生日だね?」

○○がふと店を見回してカレンダーを見て思い出す。

「あ?あァそうだな」

言われた本人はあまり気のない返事をする。

「それだけ?淡白にも程があるよ?」

○○は不満げにゾロを見上げる。

「元からだ」

ゾロはそう、ビールを傾けた。

「……そうだね。確かにそうだ」

○○は小さくため息をつく。

「とにかく、お誕生日おめでとう!!」

「おゥ」

カツンと重いグラスの音が響く。

古びた中華料理店。
調理場と隣接したカウンター席の他に、この少し奥まった6畳の座敷があるだけ。

今2人が座るのは6畳の座敷で、他の客からは見えない場所だ。

掃除はしているが、古い中華料理店によくある少し油っぽい座席はデートにははっきり言って不向き。

しかし、それを言っても「へェ、そうか」の一言で終わってしまうので特に何も言わない。
最初の頃はそれが不思議でならなかった、と言うかちょっと寂しくも感じたが今ではすっかりと慣れてしまったのだ。

なので、特に問題ない。




「で?プレゼントは?」

ゾロが思い出した様に手を出す。

「ごめん、今思い出したから何もないや。次までに何か用意しておくね」

すまなそうに○○が言う。

「…………。そうだな」

ゾロは少し考える素振りをしてからニヤリと笑う。

「何?その顔怖い」

「うるせェ。さっき買ったの出せ」

○○の言葉に少し不機嫌そうにゾロが言う。

「え?うん。はい」

○○は先程コンビニで買った袋を出す。
最近乾燥気味でのど飴を買ったのだ。

「……やっぱり。お前これ好きだな」

ゾロが出したのはイチゴポッキー。
それはとてもゾロには不似合いな品だった。

「うん!本当はつぶつぶが好きなんだけど、売り切れだったんだよねぇ」

○○は残念そうに声を出す。

「これで良い」

ゾロはイチゴポッキーの箱を断りなく開ける。

「あ!私の!」

「うるせェ」

ゾロはバッサリと言うと袋を開ける。

そして一本口に入れもぐもぐと食べる。

「甘ェ」

「そりゃね」

ゾロの言葉に不満げに○○は言う。

そしてもう一本口にくわえる。

「ほれ」

ポッキーを口にくわえたまま器用に声を出すゾロ。

「は?」

「こっち、食え」

ゾロが自分でくわえた方とは逆側、イチゴチョコがコーティングされた方を指でさす。

「はぁ?何言ってるの?」

○○はすっとんきょんな声を出す。

「知らねェのか?ポッキーゲーム」

「まさかゾロの口からその単語を聞く日が来るとは思わなかった!」

○○はショックに似た感情が沸き出した。



あのストイックなゾロがこんな俗世な事をする日が来るとは…………。



「嫌だよ!ここお店だよ?」

「見えやしねェよ」

「…………」

何だかゾロらしくない。
○○は戸惑いを隠せずにいた。

「ほれ、俺の誕生日忘れてたんだろ?」

ニヤリと笑うゾロ。

「本当にゴメンナサイ」

○○は頭を下げる。

「許さねェ」

ゾロは痺れを切らした様に○○の隣へと移動する。

「ほれ」

「…………」

○○はちらりと厨房の方を見てから意を決して口を開く。

もぐもぐと両側から食べ進めるゾロと○○。

そろそろ良いかとポッキーを噛み切ろうとする。

「っ!!」

しかし、ゾロの手がそれを許さず、そのまま2人は唇を重ねる。

「ちょっ!ん!」

○○の抵抗など無いものと同じように口付けを堪能するゾロ。

舌を絡め、呼吸を奪う。



「お待たせいたしました!麻婆豆腐です!」

「おう」

定員が麻婆豆腐を持って来るのに元の席に当たり前の様に座ったゾロが受け取る。

「お客様、大丈夫ですか?」

「お、お構い無く」

それに引き換え、真っ赤な顔でうつ向いた○○はそれだけをようやく口にした。

ちなみに腰は抜けていた。










ポッキーゲーム









「ゾロの馬鹿!」

「次までにプレゼント用意しとけよ?」

「ま、まだ欲しいの?」

「当たり前だろ?全然足りねェよ」

「そ、その顔怖い!」





***



HAPPY birthday ゾロ!!!

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