この距離で
赤髪海賊団。
彼らの率いる船長は四皇と呼ばれ、恐れられる存在。
船長であるシャンクスは隻腕の剣士としても有名。
○○はそんな片腕のシャンクスを補佐する役目としてレッドフォース号に乗るクルーだ。
特に戦闘が出来る訳でも、料理が旨いわけでも、歌が上手な訳でもない。もちろん、床上手と言う訳でもない。
ただ、本当にシャンクスが片手では出来ない事を補佐するだけの役目だ。
5年と言う長い期間をシャンクスの隣で過ごしている。
かと言って特に恋人と言う訳でもない。
「お頭!朝ですよ!」
お世話係の○○がシャンクスを起こす為に部屋を訪れる。
「うー、後5分」
「そう言って起きたためしないじゃないですか!うりゃ!」
○○がシャンクスの上から無理やり布団をはぐ。
「いやん」
「………………はぁ」
恥じらうシャンクスに○○はため息をつく。
「次の島ではしっかり処理してください」
「処理って、お前なー」
シャンクスは笑いながら体を起こす。
「仕方がないでしょ、片手じゃ出来ないとか言うんですから」
「○○がシテくれたら良いじゃねェか」
「お断りします」
「冷てェな!」
シャンクスは気にした様子なく笑う。
「はい!馬鹿な事言ってないで、早く着替えちゃいましょ」
○○がクローゼットから適当に服を選ぶ。
「ヘイヘイ」
シャンクスは片手で器用に脱いでいく。
○○は脱いだ服の左の袖の結び目をほどく。汚れが結び目に溜まるからだ。
「あ、そのシャツ脱いでください」
「は?今着たばっかりじゃねェか」
シャンクスは眉間にシワを寄せる。
「すみません。私のミスです。ボタン、取れかかってます」
○○が自分の鎖骨辺りを指差す。
その行動が妙に色っぽく見え、シャンクスはごくりと喉を鳴らす。
「面倒臭ェ」
○○が裁縫道具を持ってシャンクスの座るベッドに近付いて来た。
「そう言わず」
○○は困った様に笑う。
「わざわざ脱がなくてもこのままで大丈夫だろ?」
シャンクスがニヤリと笑う。
「……刺さったらごめんなさい」
「だはは!○○に刺されるのも悪かねェな」
先に謝る○○にシャンクスが笑う。
「えーっと、白い糸をっと。では、失礼します」
○○は針に糸を通し、ベッドに膝を立てて乗る。
「お頭、すみませんが、もう少し寄りたいんですが」
シャンクスが胡座をかいているので、ちょっと遠くなるので、針作業がしにくい。
「なんだよ、乗れば良いだろ」
「刺されたい?」
「ほら」
シャンクスの冗談に針をシャンクスの目に近付ける。
シャンクスは笑いながら足を開いて投げ出す様にベッドに座る。
「ありがとうございます」
○○はにこりと笑うとシャンクスの足の間に入る。
「良い匂いだな」
シャンクスが目の前に来た○○の髪の匂いを嗅ぐ。
「ヤソップさんやルウさんも同じシャンプーですよー」
○○は一度ボタンを外し、糸を綺麗に取る。
「つれねェなァ」
シャンクスが苦笑を漏らす。
自分の正面に座る○○に、下半身がじわりと疼く。
「そう言う事はそう言うお姉さんか、恋人としてください」
○○はボタンをシャツに縫い付けて行く。
「俺はお前とシテみてェな」
「それは残念」
「残念ってお前なァ」
シャンクスはケラケラと笑う。
「早く恋人でも作ったらどうですか?」
○○は呆れながら言う。
「お前は作んねェのかよ?」
「お頭のお世話係を卒業したら。じゃないと、邪魔するじゃないですか?」
○○が糸切り鋏に手を伸ばす。
「お頭……返してください」
○○が取るより先にシャンクスが糸切り鋏を手に取る。
「ヤラしてくれたら返す」
「重すぎます」
「なら、キス」
シャンクスはすっと目を細める。
ーーブチッ
「はい、終わりました」
○○が糸切り鋏を使わずに、糸を噛み切った。
「ホントにつれねェなァ……」
シャンクスは残念そうにため息をつく。
「はい、馬鹿な事してないで、今日も可愛いクルーが待ってますよ?」
○○は裁縫道具を片付けながらにこりと笑った。
「野郎しかいねェのに可愛いもクソもあるか」
シャンクスはニヤリと笑う。
「ふふ、さぁ、行きましょ」
○○の言葉にシャンクスは素直に従った。
この距離で「いつになったら俺の恋心は報われるんだ?」
「クスクス、初恋は実らないんですよ、お頭」
「なんだよ、それ」
「さぁ?」
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