01
ペット。それは忙しい日常に終われた現代人の癒し。
「良いなぁ。猫とか飼いたいなぁ」
○○は濡れた髪を拭きながらテレビを見ていた。
画面上には可愛らしい子猫がもふもふとオモチャにじゃれついている姿が映されていた。
「可愛い!!でもなぁ、一人暮らしの部屋に一匹で残すのは可哀想だしなぁ」
○○はため息をつきながら、テレビを食い入る様に見ていた。
「犬でも猫でもハムスターでもない。魚は?駄目?んー」
ペットショップの店員は首を捻った。確かに犬でも猫でもハムスターでもないペットとはかなり難しい。
一度気になり始めると、ペットが欲しくて堪らなくなる。だが、アパートはペット犬、猫、ハムスターなどが禁止。魚類は綺麗だが、反応が余り無いのでつまらない。○○は仕方無いとため息をついた。
「あれ?」
ペットショップから出た○○は非常に懐かし顔を夕方の街に見付けた。
「……あの!シャンクス……さん?」
○○がそう話しかけると大柄の赤い髪の男が振り返った。
「私、○○です!お久し振りです!その節はお世話になりました!」
○○は不思議そうにするシャンクスを本人と確信すると嬉しそうに笑い、頭を下げた。
「あ!あァ!○○さんか!久し振りだな!元気そうで何よりだ!もう、大丈夫なのか?」
シャンクスは思い出したのか、嬉しそうに笑うと声を出した。
「はい!お陰様で!もう、スッカリ元気です!」
○○はそう笑うと力こぶを作るように腕を上げた。
○○は昔、交通事故に巻き込まれた。
車同士の事故に巻き込まれ、事故を起こした車が逃げた。そこに居合わせたシャンクスが素早く救急車や警察を手配した。
シャンクスの記憶力のお陰で逃げた車も程なくして捕まった。
○○は後遺症もなく、シャンクスのお陰で無事に復活を遂げたのだ。
「そうか、それは良かった。さすがにあの事故は驚いたからな」
シャンクスは染々と声を出した。
「えぇ。本当に。生きているのはシャンクスさんのお陰です。本当にありがとうございました」
○○は頭を深々と下げた。
「頭を上げてくれ。そうだ!腹減ってないか?俺さ、ここ初めて来る場所で、美味しい飯屋ないか?」
シャンクスは穏やかに○○の頭を上げさせると辺りを見回した。
「美味しい……」
「出来れば酒も出る所が良いな」
「あ、はい」
○○はシャンクスに促され、辺りを見回した。
「全国の地酒を集めているお店があるんです。行ってみます?」
「お!それは良いな!是非!」
「ふふ、こっちです」
勢い良く頷くシャンクスに○○は楽しそうに案内を始めた。
「あァ!まさかこんな所でこの酒が飲めるとはな」
シャンクスは嬉しそうに徳利を傾けた。綺麗な琥珀色の液体がお猪口に入れられる。
「まさか、シャンクスさんの地元のお酒があるなんて、良かったですね」
「あァ。やはりこれが一番馴染む」
シャンクスは嬉しそうに喉を潤した。
「最近疲れてたからなァ」
「お忙しいのですか?」
シャンクスのため息にも似た吐息に○○は尋ねた。
「んー?あァ。まァな」
シャンクスは何とも言えない顔で頷いた。
「時々さー、猫が羨ましくなる」
「猫、ですか?」
「あァ。お代わり!」
シャンクスは徳利を振って店員に追加を要求した。
「アイツ等、好きな時に寝て、好きな時に飯食って、好きな時に人に甘えて……。俺もそんな生活してみてェなー!って」
シャンクスは笑いながら新しい徳利を受け取るとお猪口に注いだ。
「っ!なら!私、貴方を飼います!」
「…………」
「…………」
「…………は?」
「…………え?」
思わず出た○○の言葉にシャンクスは唖然とした顔をして口を開いた。
「っ!!!」
自分が何を言ったか気付いた○○は顔から火が出る程に恥ずかしくなった。
「っち、違っ!すみません!この前からペットが欲しくて!猫なんか最高だなぁ!って!でも、うちのアパートペット禁止なので、何か良いのないかなぁ?って思ってた所にシャンクスさんがそんな事言うから!あー!本当にすみません!!!!」
○○は恥ずかしさのあまり、早口でそう捲し立てるとカウンターテーブルに頭を押し付ける様に下げた。
「だっはっはっはっ!!!!!」
「っ!!!しゃ、シャンクスさん!!」
シャンクスは店中の人間が振り返る程の大声で笑った。たくさんの人から視線を受け、○○の羞恥心は余計に煽られる。
「クックックッ、悪っ!いやー!うん!良い考えだ!!」
シャンクスは笑顔のままで頷いた。
「じゃあ、俺を飼ってくれ」
貴方を飼います。「え?」
「宜しく頼むな!」
「は?」
「あー!もしもし?俺だ。一ヶ月休みくれ!」
「は?」
「あー?じゃあ、2週間!え?ダメ?」
「……」
「おう!それでいいや!」
「……」
「ってな訳で宜しくな!ご主人様!」
「…………は?」
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