おまけ

シャンクスは大学には行かないつもりでいた。
会社を設立するつもりでいたからだ。

だが、彼の恩師であるロジャーとレイリーがそれに反対した。

「経済能力もある。頭もそれなりに良いなら大学は行くべきだ。思いきり遊べば良い」

そう言って2人共笑った。
シャンクスは仕方なくベックマンやヤソップ、ルゥなどの仲間と共に同じ大学に進んだ。
すでに会社は設立していて、学費を払う事は苦労がなかった。

確かに本格的に仕事をしている訳ではないが、同じ世代の同じ勉強をする仲間は多いに越した事はなかった。

大学と言う所は高校までとはまた違った雰囲気だった。
全国から集まった人間は個性豊かに見えた。

そんな中○○と出会った。
彼女は覚えていない様だが。



ある講義の時。
その講義は仲間内でシャンクスしか取っていなかった。
シャーペンの芯が折れ、筆箱を漁ったが何故か無かった。

「あれ?おっかしいなァ」

つい、声を出してしまっていたらしい。

トントンと肩を叩かれそちらを見ると隣の机からシャーペンの芯を差し出してくる女がいた。

「これ使って良いよ!」

甘ったるい声の女だった。

「あァ、悪いな」

仕方がないとシャーペンの芯を一本取り出してその女に入れ物を返した。


講義が終わってからもその女がしつこくくっ付いて来るのでどうしたものかと考えていた時。

「っ痛っ!!」

「あ、大丈夫ですか?」

その女が彼女に当たったのだ。
彼女はおろおろとしていたが、女は彼女を突き飛ばして俺を追ってこようとした。

「あ!忘れ物ですよ!」

彼女は女をわざわざ呼び止めて何かを渡した。

「ひぇっ!!!何するのよ!」

それはカタツムリだった。

「?貴女の持ち物かと思いました。しつこいと嫌われちゃうらしいですよ」

彼女はくすりと笑うとその場を立ち去った。

彼女は女がシャンクスを追っているのが解った様だった。

それからシャンクスは彼女を目で追った。
同じ学科で名前は○○と言うのも何とかわかった。

○○の見える席に座り、何とか彼女との接点を探した。


そんなある日。
男子の一人が○○の事が好きになったらしいと耳にした。
これはいけないと思い、シャンクスは彼女と同じ教育課程を取るベックマンに彼女を連れ出すよう頼んだのだ。

そして何とか付き合う様になり、○○もシャンクスの事が好きだと言うところまで来たのだった。









「すでに俺は告白をしてから何ヵ月も耐えているんだ」

シャンクスはまだ人気のまばらな学食のテーブルに突っ伏していた。

「……」

ベックマンは無言で今日の昼は何にするか考えていた。
ヤソップとルゥはまだ講義中だった。

「そんでさ、やっと両思いってやつになったんだよ」

シャンクスはじめじめとした声を出す。

「…………」

昼飯はカツカレーに決めたベックマンは一番近い喫煙所を思い出していた。

「なのに、何でなにも進展がないんだ?ちゅーのひとつでもしてもバチは当たらないだろ?」

シャンクスは大きなため息をついた。

「あんたの事が嫌なんじゃないか?」

ベックマンはタバコの箱を取り出した。

「は?それはないだろ!」

シャンクスはむすっとした顔をベックマンに向ける。

「なら、臭うんだろう」

ベックマンは空のタバコの箱をくしゃりと潰した。
シャンクスの愚痴と言う名の惚けに付き合わなくてはならない様だ。

「ま、マジか?」

シャンクスは慌てて自分の臭いをくんくんと嗅いだ。

「……わかんねェ」

シャンクスは再びぐったりとテーブルに突っ伏した。

「とっとと抱いちまえば良いだろ」

ベックマンはタバコが無い事に苛立ちを感じながらシャンクスを見た。
情けない姿だが、自分が着いて行こうとしている男だ。やる時はやる…………はずだ。

「無理矢理やって怖がらしたくねェし、かと言って俺もそう持たねェよ……」

シャンクスは自分の手を見つめた。

「嫌われたくねェなんて、笑っちまうよな」

シャンクスは自分の手を乾いた笑いで見た。

「……良いんじゃねェか」

「ん?」

「たまにはそうやって恋ってやつに溺れてみるのも」

ベックマンはにやりと笑った。

「…………ベック……きも」

「殴るぞ」

「わ、悪かった」

拳を握ったベックマンから慌てて距離を保つシャンクス。

「まァ?恋はいつもハリケーンとか言うしな?」

シャンクスはクスクスと笑った。

「ハリケーン、ね」

ベックマンはタメ息をつきながら辺りを見回した。

「……」

ベックマンの目には一人の女が映る。○○とはまた別の派手でない、だが雰囲気のある女だった。

「○○……」

「恋はいつも、ハリケーン…………か」

情けないしシャンクスの声を聞きながらベックマンの目は彼女を追っていた。
ベックマンは意を決して立ち上がった。

「お、おい!…………ようやく、か」

シャンクスは彼女に近付いて行ったベックマンを見た。

「でもさー、時と場所を選んだ方が……あーあ……」

ベックマンは彼女と二言話して帰ってきた。

「……どうだった?」

「…………タバコは持ってないとよ」

「だろうなー!!」

シャンクスはベックマンの言葉に大笑いをした。








「まァ、諦める気はねェさ」

「クク。だな」

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