07
「…………」
どれくらい振りにこんなに深く眠れただろう。
ローはそんな事を考えながら目を覚ませた。
今まで仲間と雑魚寝などはした事はあったが、女と並んで寝た事は無かった。
ヤるだけヤって追い出すのが今までだった。(むしろ、自分のテリトリーに女は入れないので、女の部屋かホテルでヤって自分が出る)
まァ、気に入った女は何度か体を重ねた事はあったが、殆どが一夜限りと言うやつだ。
昨日の○○の様に生理だと抜かしたらその場で他の女に電話をしたり、そのまま帰るだけで二度と誘われても受けなかった。
それだけローにとって○○はイレギュラー的な存在だった。
「…………?」
ベッドには自分以外乗っていなかった。
鈍臭い奴だからなとローはベッドの周りを覗いたが居ない。
まさか、ベッドを抜け出すまで自分が気付かずに眠っていた事に驚きながらベッドから立ち上がった。
寝室から出て、居間に行く。
「えーっと、あ!あった!」
キッチンの方からそんな声が聞こえ、ローはホッとする自分に違和感を感じた。
(寝た女が朝いなくなった方がホッとしてたのにな)
ローはそんな自分に苦笑しながらキッチンへと足を踏み入れた。
「あーっと、これと」
「○○」
「うわ!!」
○○からしてみれば、突然後から声をかけられて驚いた。
「ロー君!おはよう!!」
○○はローの顔を見ると嬉しそうに頬を染めて笑った。
「何してる」
「あ、あのね!ロー君良く寝てたし、起きそうもなかったから朝ご飯作ってたの!」
○○は「ほらね!」と小さな鍋に入れられた白いドロッとした物を見せた。
「…………」
「美味しくできたと思うよ!」
○○はにこにこと笑った。
ローをローテーブルに座らせると器によそったそれを目の前に置いた。
「なんだ?これ」
ローは不思議そうに器を手に取り匂いを嗅ぐ。
「昨日のツナマヨおにぎりが残ってたからリゾットにしたの!」
○○は「頂きます!」と食べ始めた。
「…………」
ローはスプーンでそれをすくう。
口をへの字型にしてから、口へ運んだ。
「…………」
「どう?」
○○はドキドキとローに聞く。
「…………悪くない」
ローはスプーンをもう一度動かした。
「良かった!」
○○はにこにこと安心したように笑った。
ローはその笑顔に暖かみを感じた。
「行くのか?」
帰り支度をする○○にローが聞く。
「うん、今からなら着替えて大学行けるから!」
○○は靴を履きながら笑った。
「そうか。昼は学食に来い」
ローは○○の後ろ姿に言う。
「え?うん!講堂側?」
○○は靴を履き、振り返りながら立ち上がる。
ローとの身長差は広がり、首が痛かった。
「そうだ」
「わかった!じゃあ、……ま、また来て良い?」
○○はおずおずとローに聞く。
「あァ」
ローは口許に笑みを浮かべて頷いた。
「ありがとう!」
○○は嬉しそうに礼を述べてドアノブに手をかけた。
「○○」
「ん?なに?っ!?」
ローに名前を呼ばれ振り返ると、そのまま唇を奪われた。
「…………」
○○はローが離れても放心状態だ。顔は真っ赤だったが。
「くく、良い顔だな」
ローはニヤリと楽しそうに笑った。
「っ!!!お、お邪魔しました!!!」
○○はローの顔を間近で見つめた後真っ赤な顔のまま逃げるように立ち去った。
「い、意外だ!本当に意外だ!」
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