04
店を出て少し歩いてコンビニに入った。
コンビニに入る時に繋いだ手を離され○○は残念に思った。
「家は実家か?」
ローはかごを持ちアルコールの棚の所で聞いた。
「え?ううん!家は田舎だからここの近くで一人暮らし」
○○はへらりと笑った。
「なら、良いな。好きなの入れろ」
ローはぽいぽいとアルコールを選びかごに入れていく。
「え?えーっと、じゃあ……」
○○はカクテルを数本とジンジャーエールを入れる。
「コーラじゃねェのか?」
ローはニヤリと聞く。
「え?うん、前はコーラ好きだったけど、今はこっちのが好き」
○○はにこにこと笑った。
「飯も買うか」
ローは一瞬穏やかな目をしたがすぐに弁当コーナーへ移動した。
「へー、ロー君はおにぎりなんだ」
○○はかごに入れられていくおにぎりを見る。
「紀州梅は?」
○○は定番の昆布やおかかが入る中、何故か梅は入れなかった。
「要らねェ」
ローは不機嫌そうに声を出した。
「そうなんだ」
○○は言いながら梅のおにぎりを入れた。
「要らねェ」
ローが○○の入れた梅のおにぎりを棚に戻す。
「あー!私食べたいのに!」
○○は梅をもう一度かごに入れる。
「…………要らねェ」
ローは再び梅を棚に戻した。
「……そ、そんなに嫌いなんだね。じゃあ、ツナマヨにする!」
○○は頑なに梅を拒否するローを不思議そうに見ながらツナマヨのおにぎりをかごに入れた。
「そうしろ」
ぶっきらぼうなローの言い方に○○は嬉しそうに笑った。
「そう言えば良かったの?」
「何がだ」
「いや、さっきの……」
○○は店であった出来事を思い出した。
確かあの子もローの事を1年の頃からカッコイイと言っていた。
「お前は俺の恋人だろ?」
ローは○○の手首を掴むとぐいっと自分の方へ引き寄せた。
そのローの仕草に○○は顔に熱が集まる。
「なら、俺以外の事を考えんじゃねェ」
ローの低く心地よい声に○○の頭はくらくらとし、心臓は物凄い速さで脈打った。
そして、壊れた人形のように仕切りに頭を上下させた。
「会計済ませて行くぞ」
ローは○○の手を掴んだままレジへと向かった。
「っ!!ここ、どこ?!」
○○は我が目を疑った。
「俺のマンション」
オートロックの玄関を解除し、豪華なエントランスを通り抜け、エレベーターを上り、重いドアを開けた。
「‘俺の’?」
○○はポカーンと口を開けたまま聞く。
「あァ。お前、すげェ顔してるぞ」
ローは呆れた様に言うと鍵を玄関に置き、靴を脱ぐと部屋へと上がる。
「来いよ」
「あ、うん。お邪魔します」
○○は靴を脱ぐと揃えて置き、ローに続いた。
「…………何か意外」
部屋には本が雑然と置かれていた。大きく豪華な家具の上に医学書や生物学、進化論や植物学と色々な種類の本達が置かれていた。
一目見て綺麗な部屋では無かった。
「温めるか」
ローテーブルに買ってきた袋を無造作に置き、おかずなどを持ち台所へ向かう。
やたら大きなオーブンレンジに物を入れスタートボタンを押した。
「……自炊とかするの?」
○○はローに並びオーブンレンジを見た。
やたら綺麗なキッチンだが、冷蔵庫や炊飯器などは一通り揃っていて、どれもこれも大きく高級そうだった。
「ペンギンとシャチが勝手に作ったりするな」
ローは温めの終わった物を取り出すとローテーブルに向かった。
「座れ」
ローはアザラシ柄のふわふわな帽子を取ると、その辺に投げた。
「……うん」
○○は緊張気味に頷くと座った。
「だから、何でそんなに離れる?」
ローはニヤリと笑った。
「う、うん」
○○は真っ赤な顔でローに少し近付いた。
「ククク、食え」
ローは笑うとおにぎりを差し出した。
「頂きます」
○○は緊張気味に受け取ると包みを剥がし、一口食べる。
「ん!そうだ!お金!」
○○は慌てておにぎりを置くと自分の財布を取り出す。
「要らねェ」
ローはおにぎりを大口でかぶり付いた。
「ダメだよ!割り勘!」
○○は千円札をローに差し出す。
「…………」
ローはじっとおにぎりを咀嚼しながら千円札と○○を何度か交互に見た。
「はい!」
受け取ろうとしないローの手に○○は無理矢理千円札を握らせると、安心したようにおにぎりにかぶり付いた。
「…………変な女」
ローはそう言いながら笑った。
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