02
「えぇぇ!!OKもらったぁ?!」
「しー!」
友人の大声に驚いて口を塞ぐ。
残り少ない講義を受ける為○○は講義室にいた。
「良かったじゃん!」
「うん!自分でもビックリ!」
○○は興奮ぎみだが嬉しそうに笑った。
「ずーっとだもんね!1年から」
友人がクスリと笑った。
「う、うん。…………あぁ!」
○○は頷いてから思い出した様に叫んだ。
「な、なに?」
「名前!名乗るの忘れた……」
○○はぐったりと机に突っ伏した。
「あーぁ、何やってんのよ。次会ったら言いなさいよ」
「うん」
落ち込んでいる○○に友人が呆れながら笑った。
「あんな、性格最悪そうなのに」
「そ、そんな事ないよ!トラファルガーくんは優しいよ!」
○○は顔を上げて口を尖らせ否定した。
「でもさ、秘密にしておいた方が良いよ」
友人はこそこそと声を潜めた。
「どうして?」
「これから卒業にかけてあいつに告白する人が増えるわ。あんたみたいに」
友人は○○を指差す。
「そしたら、○○あなた目の敵にされるわよ」
「…………」
「死にたくなければ黙ってるのね!」
「な、なるほど。わかった」
○○は真剣な表情で頷いた。
「きゃー!」
急に騒がしくなる講義室。
何だろうと振り返るとローが講義室に入ってきた所だった。
「ローくん!何してるの?」
「私に会いに?」
「そんな訳ないでしょ!ねー?ローくん!」
「これ終わったらカラオケ行くんだけど一緒にどう?」
次々と女子達が話しかけていく。
○○のいる学部は女子の方が多い所だ。
席を立たない女子生徒もチラチラとそちらを見ていた。
ただ一人留学生のボニーが嫌そうに顔を歪めた。
「○○」
「え?」
それら黄色い声を無視してローは○○の前に立った。
「あれ?名前言ったっけ?」
不思議そうにローを見ると小さく舌打ちをした。
「これ終わったらここに来い」
ローはメモ用紙を渡し、そのまま講義室を出て行った。
「なにあれ?」
「なんで□□さん?」
こそこそと言う女子は無視して○○はメモ用紙を見る。
そこには、お店の名前とローの電話番号とメールアドレスがあった。
「ったー!」
○○は嬉しそうに叫んだ。
「良かったわねぇ」
友人は本当に付き合うのねぇと少し呑気に思いながらも心の中で祝福をしていた。
○○はすぐさまアドレスを登録すると
『□□○○です!これから宜しくお願いします!』
と素早くメールを作成した。
すぐに返信が来た。
『あァ』の一言だったが、○○は迷い無くそのメールを保存した。
「ねぇ、本当に行ってくれないの?」
○○は講義が終わった教室で友人の袖を引っ張った。
「うん。今日バイトだし、明日は就活だからね!頑張ってね!」
バイバイ!と友人は講義室を後にした。
「ここか」
見るからにお洒落なお店で○○は困った顔をした。
「…………ここにトラファルガーくんがいる!せっかく誘ってくれたんだから行かなきゃ!」
○○は身だしなみを整えると店の扉を開けた。
ーーカランカラーン
ドアに付いた鈴が乾いた音を鳴らした。
「いらっしゃいませ」
ドアを開けて入ると白いシャツに黒い腰からの長いエプロンを着けたウェイターが声をかけてきた。
「あの、待ち合わせを」
「あ!来た!」
○○が声を出すと店の奥からシャチがやって来た。
やはりウェイターの格好をしていた。
「ど、どうも」
「こっちだ!」
シャチは手招きをすると○○はそれに従った。
「カッコイイ店だろ?」
「は、はい」
「キャプテンの店なんだぜ?」
「は?」
「アハハハ!変な顔!」
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