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「若!お早く!」

部下に急かされようとゆっくりとした足取りを崩さずに派手な男は歩んだ。

プライベートな飛行場にはプライベートジェットが待機し、これに乗れば彼はこの国に戻る事は二度と無い。信頼する部下とは向こうで落ち合う事になっている。
この国に未練はない。最後に贔屓にしていたガキ共と遊べた事が良かったと派手な男は珍しく感慨深げに笑いを口の端に乗せていた。

「…………」

せっかくの気持ちの良い門出だと言うのに、男の視線の先には招かれざる客がいた。

「よォ、久し振りだな」

遮る物がない飛行場で赤髪を激しく揺らしながらも堂々と男は立っていた。男の羽織る黒いコートの裾がバタバタと風に靡いていた。

「フッフッフッ!とんだ見送り人が来たもんだ。それとも俺の邪魔をしに来たのか?」

派手な男はサングラスの奥の目を細目ながらも口許の笑顔はそのままだった。

「邪魔なんかしねェよ。…………ただの見送りだ」

赤髪の男の笑顔は派手な男には胡散臭く映った。

「お前がここを離れてくれれば俺も、俺の嫁も安心だからな」

「フッフッフッ」

赤髪の男の言葉に派手な男の笑みは嫌に深くなった。

「それとも何か?まだあいつに」

「誤解するな。お前の手垢の付いた女に興味はねェ」

赤髪の男の言葉を遮るように派手な男は強く声を出した。

「そうか。なら安心だな」

赤髪の男は可笑しそうに派手な男の様子を見て笑った。

「……まだ何かあるのか?」

「……いや」

派手な男は歩みを再開させ、赤髪の男に並ぶ。これでお互いの姿は視覚では確認できなくなった。

「俺はお前が思っているより、お前に興味がないさ。良い旅を」

赤髪の男はそう口にすると派手な男が歩いてきた方に歩き出した。

「…………」

派手な男は振り返る事無く歩みを再開させた。

「若!出します!!」

「……わかった」

派手な男の口許に笑みはなかった。




「シャンクス!!」

若い男が赤髪の男にぴょんぴょんと飛ぶように走りながら走り寄ってきた。

「どうだ?ルフィ」

赤髪の男が穏やかな顔で麦わら帽子の若い男を見た。

「おう!バッチリだ!!これでエースに肉おごって貰える!!!」

麦わら帽子の若い男が嬉しそうに笑った。

「そいつは良かったな」

赤髪の男はそう行って麦わら帽子の上から若い男の頭を撫でた。







「ロー!!!」

○○はようやく見付けたローへと抱き付いた。

「○○。無事だったのか」

ローは心底ホッとした様に声を出した。

「私は大丈夫!病院にも行ったの。それよりローの方が!!!」

○○はボロボロになったローの服や、殴られて出来た痣、切り傷を見て心配そうに声を出した。

「今から警察署に来い」

ローの後ろからスモーカーが顔を出した。その後ろでは制服警官が戸惑いながらヴェルゴやモネをパトカーへと詰め込んでいた。

「断る」

「何?」

ローの否定の言葉にスモーカーは青筋を立てた。

「これから卒業式だ。こいつらはそれが終わってからじゃねェと行かせねェ」

ローは後ろに控えるペンギン、シャチ、エースそして○○を見てさも当然と声を出す。

「…………チッ!!!なら、終わったらすぐに来い」

スモーカーは不機嫌そうに舌打ちをするとタシギを呼びパトカーへと入っていった。

「急ぐか、優子も待ってる」

エースは自分のバイクが動くのを確認するとヘルメットを持ち上げた。

「○○、ポートガス屋に乗せてもらえ」

「嫌。ローと離れたくない」

ローの言葉に間髪入れずに○○は首を横に振った。

「ダメだ。お前はまだ調子が」

「なら、卒業式は出ない。ローといる」

○○はローの手を取ると逃がすまいと強く握った。

「何言ってやがる。お前の両親も来るんだろ」

「それでも、今貴方の手を離すのは、嫌」

ローの言葉に○○は俯いた。○○は素直に自分の気持ちをさらけ出していた。

「……ほら」

エースがぐいっと鍵をローに差し出した。

「貸してやる。俺はシャチのチャリに乗る」

「おい!!俺は怪我人だぞ!お前、見るからに無傷じゃねェか!!!」

エースの言葉にシャチが食って掛かる。

「だから、俺が漕いでお前を乗せんだよ」

「ハハー!!!エース様!!!」

エースの言葉にシャチが土下座で感謝の意を表した。

「お前達はこれで来い。俺は早く優子に会いたいんだよ」

エースは鍵をローに持たせると後ろにシャチを乗せて走り出した。

「じゃあ、俺達は先に出る」

ペンギンもローと○○を残して自分の自転車に跨がるとエースとシャチの後を追った。







「キャプテン、嬉しそうだったな」

「そうか?」

「あァ。そうだな」

「……そうか。なら、良かったな」

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