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「うふふ、もう終わり?」

モネは楽しそうに笑うと床に転がったシャチを見る。

「……」

○○は近くに倒れたシャチを見て、助けようと動こうとするが、全く体は動かず、声も出なかった。

「はァー……はァー……」

荒い呼吸のシャチはゆっくりと立ち上がった。身体中が鋭利な刃物で切り刻まれていた。

「うふふ、シャチ」

モネの声にシャチはゆっくりと顔を上げた。

「貴方は一番鍛えがいがあったわ」

モネは過去を思い出す様に声を出す。

「無口で冷静なペンギンより表情が表に出せるシャチの方が合ってたのこう言う戦い方はね」

言いながらモネが自然にシャチに近付くと隠してあったナイフでシャチを切る。

「ぐァっ!!」

シャチは何度も痛みに耐えてきたが、痛みに声を漏らす。

「ふふ、良い声。私、シャチのそう言う耐える姿って好き」

モネはシャチから流れ出る血に指を這わせた。

「俺……」

「何かしら?」

荒い呼吸のままでシャチは口を開いた。

「俺、モネさんの事、結構好きだったんだ」

シャチは苦しそうに言葉を吐き出した。

「ふふ、私もよ、シャチ」

モネはにこりと人を魅了する笑みを浮かべた。

「だから、残念だよ」

シャチはキャスケット帽を脱ぐと○○の顔にかかるように投げた。





○○はもやがかかるような頭で外からの音を聞いていた。
助けに来てくれたシャチと自分を捕まえていたモネは知り合いの様だった。

話ながらの一方的なモネの攻撃。傷が増えていくシャチを目で捕らえても何もできずに床に寝ていた。

自分に帽子をかけて目隠しをする直前、シャチは笑っていた。それは○○が今まで見た事の無いシャチの笑顔だった。







「大丈夫か?」

シャチの声がすぐ近くでした後に○○の視界からキャスケット帽子が無くなった。

「……しゃ、ちさ」

何とか声を出そうとするとシャチのいつもの顔が見えた。

「ん?」

「だいじょ」

「あァ」

シャチは○○に言われて頬の傷を触った。血がシャチの指を赤く染めた。

「大丈夫さ、慣れっこなんだ」

シャチが言うと優しく○○を抱き抱えた。

「でも……」

大丈夫なら、何故そんなに泣きそうな顔で笑うのかと○○はシャチを問い詰める事が出来なかった。







「そう言えばお前の腹心がいないようだな」

血で汚れた竹棒を握り直しながらヴェルゴが静かに声を出す。

「はァー……」

荒い息を整えながらローは地べたに尻を付けたままヴェルゴを睨み付けた。

「どうやらジャンパールがやられたらしいな。内部密偵者でもいたのではないか?」

「……」

「ちゃんと部下は飼い慣らすものだ。キャプテンが無様に叩きのめされてい時にいないとは。……一番信用していた者が実は一番の裏切り者である。何て事は少なくない」

ヴェルゴは何の感情もなく言葉を紡いでいた。

「……へェ、そうか」

ローは口の中に溜まった血を吐き出しながら立ち上がった。

「仮にペンギンがテメェ達のスパイだろうが関係ない」

ローはにやりと口許を歪めた。立っているのがやっとに見えるが、ローの目は鋭い光を宿していた。

「関係ない?ほー、初めから解っていたと?」

ヴェルゴはローへ顔を向けると興味深そうにした。

「初めから?…………そうだな。俺は初めは誰も信用なんかしねェ」

「……そうか」

「あァ。だが、今は」

ローはスッと視線をドアへと向ける。それに吊られるようにヴェルゴもそちらを向いた。何やら外が騒がしい。

「あいつらに焼き肉を奢ると約束がある」

ローの言葉のすぐ後にドアが蹴破られた。

「キャプテン!!生きてるか?!」

ペンギンの叫び声とパトカーのサイレントが外から聞こえてきた。

「遅かったな」

ローはペンギンの姿を確認してからヴェルゴへと視線を戻した。

「あれを修復するのに時間がかかった」

ペンギンはいつもの冷静な声ではなく、少し興奮気味だった。

「……」

ヴェルゴは歯を食い縛った。

「早く閉めろ。サツなんか引っ張って来やがって。バレる前にやるぞ」

「あァ」

ペンギンはドアを閉めるとローの横で腰を落とした。

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