30
ドルンドルン!!と言う爆音でバイクが滑り込んだ。
「ここか?」
バイクを路肩に停め、ヘルメットのシールドを上げてエースが聞く。
「……あァ」
ローも同じくシールドを上げて小さく頷く。
「よし!このまま入るぞ」
エースは言うとそのままスロットルを回して敷地内へと侵入した。
「…………お前に隠密を求めても仕方ないな」
ローは呆れたようにバイクの後ろから倉庫を見上げた。恐ろしいほど静かだった。
「っ!!!」
「なっ?!!」
急にハンドルが取られたと思ったら、そのまま鉄板の上に撒かれた油の上をバイクは滑る。
「くそっ!!!」
そのままバイクは横転し、エースとローは投げ出された。
2人は頭を庇いながら体を丸めていた。
「フッフッフッ、楽しそうだな」
「っ!!」
低い声が辺りに響き、ローは素早く体勢を建て直し、片膝をついた。エースも聞き覚えのある嫌な声に体が震えた。
「ドフラミンゴ……」
ローはゆっくりとした動作で声の聞こえた方を探すが、何も見えなかった。
「どこにいる!出て来い!」
エースは辺りを見ながら叫んだ。
「フッフッフッ、これはこれは、懐かしい顔だな。火拳」
姿が見えないままドフラミンゴの声がエースの耳に届く。
「俺はお前の事なんてすっかり忘れてたがな」
エースは建物を油断なく見ながら叫ぶ。
「フッフッフッ、つれないなァ」
ドフラミンゴの声が響く。
「○○はどこだ?!」
ローは2人の会話に割り込む様に叫ぶ。
「ロー、俺はお前を目にかけてやったのに。冷たい奴だな。やはりペンギンじゃなくてお前の女だろ?」
わざとらしい残念そうな声と楽しそうな声が入り乱れながら響いた。
「だったら、なんだ」
ローは自分を落ち着かせようと静かな声を出す。
「女は良い。だが失うのは意外と辛いぞ」
ドフラミンゴの笑い声にローはぞくりと背中に冷たい汗をかく。
「○○に何をした?!」
ローは冷静に保とうとしながらも、声は感情的な物だった。
「ロー、ゲームは好きか?」
「嫌いだ」
「フッフッフッ、冷たいな」
ローの吐き捨てる言葉さえドフラミンゴは楽しくて仕方がなかった。
「この倉庫の中にあの女はいる。誰かが解毒剤を持ってる」
「解毒剤?」
ローの代わりに声を出したのはエースだ。
「フッフッフッ、持って一時間。楽しみだな」
ドフラミンゴの笑い声が響く。
「テメェは何でこんな事を?!!!」
感情的にエースが叫ぶ。
「何故?それはロー自身が一番知っているだろ。なァ?ロー」
「…………飼い犬に噛み付かれたくなけりゃ、首輪でもしておけ!」
ローは苦虫を噛み潰した様な顔で声を絞り出した。
「キャプテーーン!!!ジャンパールが!!!」
倉庫に走り込んできたシャチが叫んだ。
「生きてるのか?!」
「一応は!救急車で運ばれた!」
「…………あれは?」
「無かった!取られたらしい!!」
「チッ!!!」
鉄板に気付いたシャチは自転車を放り投げてローの横に駆け込んだ。
「フッフッフッ!今ので10分は経ったか」
「ど、ドフラミンゴ?!え?!どこ?!」
ドフラミンゴの声にシャチは驚きながら辺りを見回した。
「ロー、部下の躾はちゃんとしておけ」
ドフラミンゴの声にローは嘲るような笑みを見せる。
「あァ、ちゃんとしている。なァ?シャチ」
ローの言葉にシャチはニヤリと笑った。
「あァ!!ドフラミンゴのくそったれ!!殴ってやるから姿を見せやがれ!!!」
シャチは叫びながら拳を掲げた。
「…………ここでまとめて死んでいけ」
ドフラミンゴの声に合わせる様に敷地内の扉がガシャンと閉まり、そして静寂が訪れた。
「まずは○○だ」
ローは厳しい顔付きで声を出す。
「あいつ、解毒剤って言ってたな」
エースも真剣な顔で先程の言葉を拾う。
「解毒?!○○に毒が?!」
シャチは驚いて声を出す。
「そうらしいな。とにかく出会った人間を片っ端から片付けて解毒剤とやらを奪え」
「了解!」
「任せろ!」
ローの指示にシャチとエースが頷く。
3人は広い倉庫の別々の扉から中へと入って行った。
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