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「…………痛っ」
○○は固く、冷たい床の感触に目を覚ました。
「うふふ、おはよう」
綺麗な声がして目を開けると美女が立っていた。
「……?誰?」
ボーッと霞のかかる頭で美女を見る。何だか体が冷たく、動きも鈍いようだ。
「ふふふ、もうすぐ来るから待っててね」
美女は楽しそうに笑うと優雅に紅茶をすすっていた。
「……」
○○は体が動かない事に気付いた。後ろ手に縛られて、床に無動作に転がされていた。何が起こったのか○○には解らなかったが、ただ1つ思い当たる節があった。
(ローの保護者って人……?)
○○は美女を見ながら考えようとするが、頭がはっきりせずに考えがまとまらない。
(ここから出なきゃ。ローに会いたい。……そうだ、卒業式)
次々と思い出していく。○○は起き上がろうと足を動かす。
「あら、ここにいてもらわなきゃ困るわ」
「くっ……」
くすりと笑うと美女は○○を足で押さえ付けた。
「何で出ないんだ?!」
焦りながら携帯電話を睨むシャチ。
「……まさか。…………いい、このまま行くぞ!」
ペンギンは嫌な予感に焦りながら自転車を漕ぎ続けた。シャチも携帯電話を乱暴にしまうと全速力で自転車を漕いだ。
「何だ?!あれ!!」
「警察?」
人だかりと数台のパトカー、救急車にシャチとペンギンは驚きに叫んだ。
「あっ!ジャンパール!!!」
シャチが救急車へと運ばれる大きな男を見付け、自転車を飛び降りた。
「あ!君!」
「ジャンパール!!どうした?!一体何が?!」
救急隊員の制止を無視してシャチはジャンパールの運ばれているメイン・ストレッチャーにかじりつく。
「……しゃ、ち」
ジャンパールは辛そうに声を出す。
「おう!何があった?!大丈夫なのか?!」
シャチはジャンパールの顔を覗き込んだ。
「……あれを……取られた。悪い」
「あ!おい!ジャンパール!!!」
それだけを言うとジャンパールは目を閉じた。シャチは慌てて声をかける。
「君!少し離れて!」
救急隊員に言われてシャチは運ばれていく救急車を見送った。
「……テメェは確か」
「っ?!」
後ろから声をかけられてシャチは振り返る。白い髪をオールバックにし、葉巻を吹かせた男が立っていた。
「あ!!!……えーっと、誰だっけ?」
シャチは驚きに声を上げてから考える様に顔を傾ける。
「スモーカーだ」
「あ!そうだそうだ!」
後ろから来たペンギンがシャチに言うとシャチは納得したように何度も頷いた。
「お前らはローの手下か」
スモーカーは葉巻を吹かしながらシャチとペンギンを見下ろした。
「何があった?」
ペンギンはスモーカーの視線を物ともせずに聞く。
「お前らには関係ないだろ」
スモーカーは面倒臭そうに手でしっしっと2人を煙たがる。
「関係無いわけないだろ!ジャンパールは俺達の仲間だ!!」
シャチはスモーカーに食って掛かる。
「あー、そうか」
スモーカーは面倒臭そうに2人に背を向けた。
「スモーカーさん!ダメです。何も出ませんでした」
「俺じゃありませんよ!巡査部長」
「え?あ!!すみません!!」
スモーカーの近くの制服警察官に若い女がかけよった。
女は眼鏡をかけると今度はスモーカーに走り寄った。
「先程被害者が言っていた物は何もありませんでした」
女はハキハキと言葉を出す。
「ジャンパールが何を言ったんだ?!」
シャチは女に詰め寄った。
「え?スモーカーさん、この方達は?」
女は困惑気味にシャチとスモーカーを見比べた。
「行くぞ、たしぎ」
「え?……でも」
スモーカーの言葉にたしぎと呼ばれた女が困った声を出す。
「俺達はさっき運ばれて行ったジャンパールの友人だ。お願いだ、何か教えてくれ!」
ペンギンはそう言うと頭を下げた。シャチも慌てて頭を下げる。
「……解りました」
「たしぎ!」
たしぎの言葉にスモーカーが制止の声を出す。
「この方達は被害者の関係者なんでしょう?なら、事情聴衆もしなくては!」
「…………勝手にしろ」
「はい!!!」
たしぎの勢いにスモーカーはたじろぎ、ため息をついた。
「100当番を受けたのは今から30分ほど前です。通報は近所の方から。被害者の家に男が押し入り、叫び声や暴力の気配あり。私達が来た時には血だらけの被害者と被害者から言われたSDカードがなくなっていた。部屋の中も何かで殴り散らされた様な跡が多数」
たしぎは真剣な顔で状況を喋り出した。
「話し過ぎだ。……お前ら、なくなったSDカードの中身知ってるか?」
スモーカーはたしぎを止め、ペンギンとシャチを睨み付けた。
「……あァ」
ペンギンは頷いた。
「って事はあれの事だよな?なくなったの!どうする?キャプテンが危ないよな!?」
シャチは焦りながら駆け出そうとする。
「逃げるな!こらァ!!!」
スモーカーが走り出すシャチを捕まえようと手を伸ばす。
「っ!!」
「うォっ!」
ペンギンが反射的にスモーカーを足払いして膝をつかせる。
「シャチ!緊急事態だ!早くキャプテンに!!!」
ペンギンがスモーカーを押さえ付けながら叫んだ。
「ペンギン悪い!」
シャチは振り返らずに自転車を拾うと走り出した。
「ペンギーーン!!!お前の犠牲は無駄にしねェェェェ!!!!」
「…………だとよ。お前は大人しく出頭だな」
「犯罪者じゃないんだ」
「公務執行妨害は立派な犯罪だ」
「…………そうか」
「もー!スモーカーさん!素直じゃないです!」
「…………たしぎ、俺はこっちだ」
「え?え?あ!!」
「……」
(警官がこんなので大丈夫なのか?)
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