01
医学部4年、トラファルガー・ローは長身ですらりとした体型。
手足も長く、それでいて鍛えているらしい体付き。整った顔立ち。
厚い隈を持ってしても彼の人気を妨げるものにはならなかった。
そんな彼は同じ大学生のみならず、年上、年下からの指示も受けていた。
しかし、特定のいわゆる恋人は作らずにいた。
ただ、女関係は派手で来る者選りすぐり、すがる者切り捨てていた。
同じ大学のポートガス・D・エースもかなり人気であったが、2年ほど付き合う彼女とは婚約者であり、お互いに別れる気などなく、かなりの人数がローへと流れたらしい。
季節は冬。卒業を間近に控える最終学年の□□○○は一大決心をしていた。
「ふ、フラれて当然。気持ちを伝えるだけ。辛辣な言葉に心を痛めない!」
○○は呪文の様に繰り返し、ローのいる医学部へと足を進めていた。
卒業したら4年生の○○は卒業。
医学部でまだ2年あるローとは離れてしまう。
と、言っても学部が全く違うので○○にとったらただの憧れであった。
出会いは入学式の後の初登校の日。
入学式を高熱を出して休んでしまった○○はふらふらになりながら大学へとやって来た。
「あ、ダメだ」
ふらりと体が揺れて、○○は硬い地面に叩きつけられそうになり、とっさに目を閉じた。
「……あれ?」
「大丈夫か?」
強い力で腕を引かれ、近くのベンチへ座らせられた。
「す、すみません。大丈夫でふ」
○○はボーッとしながらも口を開く。
「熱いな」
冷たい手をおでこに押し付けられた。
「気持ちい」
「だろうな」
○○の朦朧とした言葉に小さく笑ったのを感じた。
○○は顔を上げてその人を見ると、途端に目を奪われた。
少し、そのまま休むと体力が戻った。
「ありがとうございました。もう、大丈夫でふ」
「ふ?」
「大丈夫でしゅ」
「変な奴」
「あたっ」
彼は無表情で○○のおでこを叩いた。
「水分はまめに取れ。こんな時に出て来るな。帰って寝ろ」
それだけ言うと彼は長い足を動かして去って行った。
それ以来、学部の違う彼ーーローとは一度も話す事なく今に至る。
○○は前方にローを見付けた。
一人ではなく、いつものペンギンとシャチも一緒にいた。
心臓が可笑しくなるのではないかと思うほどに脈打った。
○○は怖じ気付く心を何とか無視して、震える足を必死に動かした。
「と、トラファルガーくん!」
○○は震える声を出した。
「あ?」
ローとペンギン、シャチも立ち止まって振り返る。
「あ、あの、少しお時間宜しいでしょうか?」
何だ、この堅苦しい言い回しはと自分で思った。
「何だ?」
ローは面倒臭そうに体ごと振り返る。
「いや、その」
○○は困った様にペンギンとシャチを見る。
「こいつらに言えない事なら用はない」
ローが○○から背ける。
「いや!あの!」
○○が呼び止めるとローが振り返る。
「す、好きです!!!」
○○が言うとペンギンとシャチは「またか」と言う顔をする。
「………………で?」
ローは無感情で口を開く。
「え?」
○○は不思議そうに顔をあげる。
「『好きです』わかった。で?」
「……」
「それだけか?」
「……はい」
ローの質問の意図が解らないまま頷いた。
「こ、こう。言わずに卒業すれば良かったのかもしれませんが……どうしても言いたくて」
○○は顔を赤くしながら口を開く。
「そうか。それで?」
ローはなおも聞いてくる。
「〜〜〜!もし良かったら付き合って下さい!」
言うつもりも無かった事を○○は口に出した。
「良いぜ」
「……は?」
「……え?」
「ですよね。やっぱりダメ…………」
ローの言葉にそこにいた全員が固まる。
「え?良い?」
○○は目をぱちくりとさせ聞き返した。
「あァ」
「本当に?」
「あァ」
「こ、恋人って事?」
「あァ」
「本当に?」
「くどい」
○○は信じられずに聞きまくる。
「いやっ」
「えぇえぇぇぇぇー!!!!」
「たー!」と言う前にシャチが信じられずに叫んだ。
「うるせェぞ、シャチ」
「だ、だって!!キャプテン今まで誰も選ばなかったじゃないですか!こんなのも!!!」
シャチが叫びながら両手を動かしてひょうたんを型どった。
「殴るぞ」
「も、もう殴ってる……」
ローに殴られシャチは小さく不満をもらした。
「それで良いな?」
ローは○○を振り返る。
「え、あ!はい!」
○○は何度も頷いた。
「なら、またな」
ローはニヤリと笑うと手を振った。
「うっそ!夢みたい!え?なんで?」
「キャプテン」
「何だ?」
「本気なんですか?」
「さァな」
((楽しそうだな、キャプテン))
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