26
「あれ?ローも行くの?」
慌ただしく支度をする卒業式当日。
○○は着付けの為に朝早く起きていた。
「あァ。お前の晴れ姿を一番に見なくてどうする」
卒業生ではないローだが、出掛ける準備をしていた。
「……そっか」
本気か冗談か解らないローの言葉に○○は頷いた。
あれから数日、ドフラミンゴの襲来など無かったかの様な平和な日々が流れていた。
「おはよう!」
待ち合わせ場所には優子とボニーが待っていた。
「遅い!」
「ごめんごめん!化粧道具忘れてたの」
怒るボニーに○○は化粧ポーチを掲げた。
「おはよう!ふふ、私達も今来たばかりだよ」
優子はクスクスと笑いながら言う。
「じゃあ、私達は着付けして貰って来るね!」
○○はローを振り返る。
着付けをする建物の前で待ち合わせをした3人。建物内は女子学生しか入れない事になっていた。
「ここにいる。何かあったらすぐに連絡しろ」
「わかった」
ローの言葉に○○は素直に頷いた。
「医学部って奴は暇だな」
ボニーは呆れた様に声を出す。
「卒業式まで実験に勤しむ奴は手際の悪い奴だ」
ローはクククと喉を鳴らした。
「カー!!!相変わらずやな奴だなお前!ほら!行くぞ!!」
ボニーはローから離れる様に○○と優子の腕を掴むとくるりと回転をした。
○○はボニーに従いながらも、ローに笑顔で手を振った。
「……」
ローは小さく頷いて3人を見送った。
朝方のひんやりとした空気は不安を誘っていた。
建物の中では着付け待ちで人はかなりいた。
「ボニーちゃんはピンクの着物に紫の袴かぁ!ブーツだし可愛いね!」
受付で受け取った自分が着るレンタルの着物を手に優子はボニーを見た。
「だろ?」
ふふっと嬉しそうに鼻を鳴らすボニーの目はキラキラと輝いた。
「やっぱりポニーテール?」
○○はわくわくとボニーを見上げる。
「そうだな、どうすっかな?」
大学に入ったレンタルは、着付けのみをしてくれて、髪型や化粧は自分でする事になっていた。
即席のメイク台には鏡やドライヤーなどは完備されていた。
「あ!」
「どうした?」
○○の声に驚くボニー。
「着付けするとトイレ行けないよね?」
「……行って来い」
「行ってきます!順番来たら先に着替えてて!」
呆れる2人を残して○○は荷物を預けると走り出した。
「全く、そそっかしい奴だな」
ボニーは呆れながら○○が出て行った方を見る。
「ふふ、ボニーちゃん、先に行っといて良かったね」
優子はクスクスとボニーを見上げる。
「……時間内だからセーフ」
ボニーはばつの悪そうに両手を広げた。
普段は人気のない校舎。トイレを済ませた○○はホッと胸を撫で下ろした。
「さて!後は着付け!……今日で本当に終わりなんだなぁ」
○○は染々と物思いにふけりながらボニー達の元へ帰ろうと足を向けた。
するとこちらに歩いてくる人影を見付ける。
(うわ!美人!ボニーと良い、美人って本当にいるんだなぁ)
目の保養だと○○はチラチラとその人を見る。
その人も○○を見ると目が合った。その人がにこりと笑うと○○の胸がどきりと鳴った。
「□□、○○……さん?」
慌てて通り過ぎ様とすると、その人はすれ違い様に静かな声を出した。
「え?」
自分のフルネームを言われて驚いた○○は通り過ぎてから振り返った。
美女は静かに笑みを称えていた。
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