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「……それで?俺を呼び出した張本人は?」

ローは口の端から出た血を忌まわしげに手の甲で拭き取りながら立ち上がった。

「ドフィーはいない」

「何だと?」

ヴェルゴの言葉にローは眉間のシワを濃くした。

「呼び出しておいて自分はお出掛けか?…………まさか」

ローは頭をフル回転させた。そしてひとつの考えにたどり着くとヴェルゴに背を向けた。

「どこへ行く?」

ヴェルゴはローの行動に驚かずに声をかける。

「……」

ローは答えずに家を飛び出した。

「キャプテン?」

広い駐車場に車を止めペンギンは車外で待っていた。あまりにも早いローの帰りにペンギンは驚いた。

「出せ!帰るぞ!」

「了解」

珍しいローの焦る姿にペンギンは出来る限り冷静に運転席に乗り込むとエンジンをかけた。
ローが飛び乗るとそのまま車は豪華な門を飛び出した。






「はい?」

「フッフッフッ……この部屋に女と猫……か」

○○は玄関を開けると派手で大きな男が立っていた。サングラスの為に表情は解らないが口は常に笑っていた。

「…………あ、あの」

○○はただならぬ雰囲気の男に恐れながら『何故扉を開けたのか?』が自分でも解らなかった。誰かを確認せずにドアを開けるなど、普通ではしない。

「あァ、俺はローの保護者だ。聞いてないか?」

男は当然の様に声を出す。

「……すみません」

○○は男に思わず謝った。
男は決して高圧的な態度ではないが、何故か有無を言えない○○だった。

「ローはいないか?」

「は、はい。用事が出来たと」

男の言葉に○○は素直に声を出す。

「そうか。中で待たせて貰って良いか?」

下手に出ているが、男は断られ無い事を知っているかのような声色だった。

○○は断り方も頷き方も忘れたように男を部屋の中へ招き入れた。

ベポはずっと毛を逆立てて男を威嚇するが、体は冷たく震えていた。



「……どうぞ」

○○は怯えながらもソファーに座った男へとコーヒーを差し出した。

「フッフッフッ」

男は笑いながら置かれたコーヒーを見てから○○を見た。

「ずいぶんとこの家に詳しいんだな」

笑顔を口に乗せたまま男は○○に声をかける。

「いっ!いいえ!そんな!!」

本能でこいつを敵にしてはいけないが、素直に言ってもいけない!と○○は必死に首を横に振った。

「何より女がこの部屋にいるのが珍しいな、フッフッフッ」

男は立ち上がると○○の腕を掴んだ。

「っ?!」

「ローの女か?」

「っ!!」

○○はそのまま背中を壁に叩き付けられ、質問に対しては必死に首を横に振った。

「フッフッフッ、そうか?」

ニヤニヤと口許を歪ませながら男は○○の顔を至近距離から眺める。○○は走って逃げたいが、足がすくんで動けない。蛇に睨まれた蛙のようだった。


ーーガチャっ!!


乱暴に玄関ドアが開くとこちらへと近付いて来る足音に○○は意識を向けた。

「○○!!!」

入ってきたのはローとペンギンだった。
すぐに動いたのはペンギンだ。

「すみません、ドフラミンゴさん。俺の彼女が何かしましたか?」

いつもは絶対にしない人の良い笑顔を貼り付けてペンギンは○○と男ーードフラミンゴへと近付いた。

「……お前の?」

ドフラミンゴは眉間にシワを作ってペンギンを見た。

「ええ!可愛いでしょう?最近告白したんですよ。な?」

ドフラミンゴからペンギンに体が渡ったが、○○の体から緊張は緩まなかった。

「……」

○○はペンギンに抱き締められながら小さく頷いた。ここはペンギンに従った方が利口だと感じ取ったのだ。

「フッフッフッ。そうか。俺はローの女かと思ったがな」

ドフラミンゴは再び口許に笑いを貼り付けた。

「まさか!キャプテンが一人の女に絞る訳ないですよ」

ペンギンは笑顔のままローを見る。
全く顔は動かさずに2人は合図を送り合う。

「ペンギン。今日は悪いが帰ってくれ」

ローは静かに声を出す。

「解りました。失礼します。行こう」

ペンギンはドフラミンゴに頭を下げると○○を抱き締めたまま部屋を出て行った。

「フッフッフッ。女は良いぞ」

ドフラミンゴはソファーに大きな体を沈めながら声を出す。

「……逃げられたがな」

「フッフッフッ、キツいな」

ローの言葉にもドフラミンゴの表情は変わらなかった。





「……大丈夫か?」

車を降りて自分の家まで連れてきたペンギンは心配そうに○○を見た。

「……うん」

何かを聞かなくてはいけないのに何を聞いて良いのか解らずに○○は頷いた。

「怖い思いをさせたな。これはキャプテンと俺の落ち度だ」

ペンギンは疲れきった様にローテーブルの前に腰を下ろした。
○○もペンギンにつられるように腰を下ろした。

「あ、あの人は……。ローの保護者だと……」

○○は少し落ち着いた様に声を出した。

「…………紙の上ではな」

ペンギンは間を置いてから頷いた。

「紙の……」

○○は小さくペンギンの言葉を繰り返した。

「ありがとう」

「え?」

突然のペンギンの礼の言葉を不思議そうに聞く○○。

「あの時○○が俺の芝居に付き合ってくれなかったら……俺は首が飛んでた」

ペンギンは少しおどけた様に自分の首を撫でた。

「ま、まさか!」

○○は驚きに声を出した。

「いや、本当に。それだけ怖い相手だな」

クスクスと笑うペンギンを○○は不思議そうに眺めた。

「そっか。なら、良かった」

○○は小さく笑った。


ーーカチャッ


「キャプテン」

「ロー!!」

玄関から入ってきたローは暗い顔をしていたが、○○はローに抱き付いた。

「…………怪我はないか?」

「うん!大丈夫っ!」

ローは優しく○○を抱き締めると○○はようやく涙が流れ出した。

「悪かったな」

ローは涙を流す○○を強く抱く。

「キャプテン。取り込み中悪いんだが」

「空気を読め」

「そう言う訳にも行かないでしょう。早く脱いでくれ」

ローの言葉に呆れながらペンギンが言う。

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