23
ローと○○そしてベポが同じ部屋で生活を始めて5日。卒業式間近になったある日の事。
「あ、あの、ロー?」
「あ?」
「え、えっと、何してるの?」
○○は冷や汗をかきながらローを見上げた。
「…………気を楽にしろ、すぐに済む」
「何それ!怖い!」
ソファーに押し倒され腕をソファーに縫い付けられ身動きが取れない○○は懸命にローから離れようと暴れる。
「暴れれば暴れるほど楽しくなると、いい加減いつ覚える?」
ローは楽しむ様にニヤリと笑った。
「っ!!む、無理だよ!」
○○は顔を赤くしながら首を左右に振る。
「そうか」
「ふっ!」
ローは構わず○○の首筋に唇を落とす。
「あ、ろ」
「すぐにエロい顔になるのは割りと気に入っている」
ローは満足そうに笑うと○○の手をまとめて○○の頭上でひとまとめにした。
「っ!!」
「気持ち良かったら声を出せ」
ローは唇と空いた手を使って○○の体を翻弄して行く。
ーープルルルル
「っ!!!」
いつもとは違う電話の呼び出し音にローは弾かれた様にそちらを向く。
「?どうしたの?」
○○は不思議そうにローを見上げる。
と言うのも、ローは行為を始めると最後までするか、不機嫌そうに呼び出し音に切れる。
今のローの反応はそのどちらでも無かった。
「…………良いか、物音を立てるな」
「っ!!」
ローの人さえ傷付けそうな殺人的な視線にぞくりとしながら、○○は慌てて口を手で覆うとこくこくと頷いた。
「…………俺だ」
ローは静かに携帯電話の通話ボタンを押すとその場を立ち、廊下に出た。
(誰からなのかな?……女の人……って感じでもなかったけど)
○○は不思議に思いながら乱れた衣服を整えると静かにその場でローの帰りを待った。
ほんの短い通話を終えてローは緊張した面持ちのまま帰ってきた。
「あの、ロー……」
「急用が出来た。出掛ける。……ペンギンか?車持って来い。呼び出しだ」
ローは○○の顔を見ないまま携帯でペンギンを呼び出す。
「……」
この様なローの様子は初めてな○○は口を開けずにいた。
「○○」
「は、はい!」
ローの呼び掛けに思わず姿勢を正す。
「…………行ってくる」
ローは何かを言おうとしたが、出てきた言葉は違うものだった。
「あ、うん!行ってらっしゃい!」
○○は慌ててローを玄関まで送った。
ぱたんとドアが閉まると静寂が訪れる。
「……どうしたんだろう?ね?ベポ」
いつの間にか○○の足元に擦り寄って来たベポを抱き上げる。
ローはペンギンの運転である豪華な門へと入る。
ペンギンがローのドアを開けるとローは無表情のまま車から出た。
「良い、ここで待ってろ」
「…………」
「心配するな」
付いて来ようとするペンギンをローが制する。
「……お気を付けて」
ペンギンはローの背中に頭を下げたが納得はしていないようだった。
「相変わらずお前の部下はお前に甘いな」
家の中へと踏み入れると後ろから声をかけられた。
「ヴェルゴか……」
ローは静かに声を出した。
人気の無い家の中、ローとヴェルゴと呼ばれた男の声だけがこだました。
「久々に会ったのに随分な態度だな……それに」
「っ!!」
ヴェルゴは言葉が途切れてから、予備動作なくローを殴り付けた。
「ヴェルゴさん、だ」
「…………」
殴り飛ばしたヴェルゴも殴り飛ばされたローも互いに人を目で殺しそうな表情を見せた。
ーーピンポーン
「誰かしら?」
呼び出し鈴の音に○○は立ち上がった。
「シャー!!!」
「ベポ?」
突然毛を逆立てて威嚇をするベポを不思議そうに眺めながらも○○は玄関を開けるためにそちらへと足を運んだ。
ベポはそれを阻止しようと何度も○○の足にまとわりついていた。
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