プロローグ

「あんたがここに来るのは珍しいな」

ローは睨むでも微笑むでもなくソファーに腰を下ろした男を見下ろした。

「フッフッフッ。ツレねェなァ」

男は口許だけ笑うとサングラスをローへと向けた。

「相変わらず派手な生活しているみたいだな」

男は出された茶を手に取る。

「……普通だろ」

ローは面倒臭そうに返す。

「普通?お前の口からそんな言葉が出るとはな」

「……」

「もうすぐ大学も卒業か?」

無言のローに男は話題を変える。

「世間話でもしに来たのか?」

ローは冷たく男を見る。

「フッフッフッ!!!ツレねェ」

男はさも面白そうに笑った。

「……医学部はまだ2年ある」

「そうか」

男は茶を飲み干すと席を立った。

「帰るのか?」

ローは玄関へと移動する男を追いかける。

「フッフッフッ!!!今度は速効性のある毒にすると良い」

「……チッ」

男はリビングに置かれた茶器を指差すと部屋を後にした。


まだ離れられない。


自分をさらけ出す事も出来ない。


素直に物を感じられる場所を必要としていなかった。



あいつに出会うまでは…………

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