17
ーーコンコン
静かな廊下に○○が出したノック音が響き渡る。
「……ロー君?○○です」
○○が声をかけるが、部屋からは何も聞こえない。
「っ!……お邪魔しまーす」
ドアノブを回すと扉が開き、○○はゆっくりと部屋へと入った。
「入って良いとは言っていない」
暗い部屋に冷たいローの声が響く。
「……入っちゃダメ……とも、言ってない……よね?」
「……」
○○が声を出すとローは無言になった。
「入るよー」
○○はローの無言を肯定と取ると部屋に入り、ドアを閉めた。
ローはベッドに横になり、こちらに背を向けていた。
部屋は荒れて荷物が散乱していた。
「……あの、ロー君が助けてくれたんだよね?ありがとう!」
○○は(辛辣な言葉を言われてもめげない!)と心に言い聞かせてしっかりとした声を出した。
「……途中で吹雪になっちゃって!怖かったけどね、ロー君と降りた時の事を思い出して頑張ったよ!」
○○がわざと明るく声を出す。
「馬鹿か?」
ローはゆっくりと声を出した。
「ゲレンデには俺もいたんだ。電話くらいすれば良いだろう」
怒りに満ちた冷たい声でローは喋った。
「……ごめんなさい」
○○はローの怒りを感じて恐くて頭を下げた。
「ふざけるな!」
「っ!!」
ローは起き上がると同時に枕を○○が入ってきたドアに向けて投げた。
「お前は何なんだ!山の天気は変わりやすいんだ!!吹雪で素人が道を見失ったらどうする!!!」
珍しく声を荒げるローに○○は身を縮ませた。
「……ごめん、なさい」
「今何に謝ったんだ?」
ローは冷たい目で○○を見る。
「ロー君を心配させた」
○○は恐怖を感じながらもローへの申し訳なさ、感謝と謝罪を伝えるためにローへと近付いた。
「っ!!」
近付いて来た○○の腕を力任せに引っ張り、ローは○○をベッドに引きずり込むと組敷いた。
「まずは俺に言えば良いだろ?言っても解らないならバラすか?」
ローは○○の首を絞める様に片手を首に巻いた。
「っろ……」
○○は痛さと苦しさでローの絞められている手を持った。
「お前は俺のモノだ。何より先に俺に相談しろ」
ローは絞める手に力を入れる。
「苦しいか?」
ローは愛しそうに○○の目から流れ出た涙を指で拭った。
「お前は俺の側で息をすれば良い」
「っはっ!ごほごほ!」
ローが○○の首から手を離すと○○は酸素を求める様に口を開き、咳をした。
「……ろー、くん」
○○は何とか声を出した。
「何だ?」
ローは落ち着きを取り戻したのか、○○を組敷いたまま聞き返す。
「心配してくれて、ありがとう」
「っ!……」
○○の意外な反応にローは眉間にシワを寄せた。
拒否をされるか、怖がられるかと思っていたのだ。
「私もロー君が大好きだよ」
「……誰が、お前なんか……」
「酷っ!!」
○○はクスクスと笑った。
「でも、出来たら首を絞めるより、優しくして欲しい……な」
○○が勇気を出してそう顔を真っ赤にして言った。
「……首絞められて感じるとか、変態だな」
ローはニヤリと笑った。○○の態度に冷静な自分を取り戻した。
「なっ!変な事っ」
○○が慌てて言葉を返そうとしたが、ローの口付けによって阻まれた。
先程までの態度とは打って代わって優しいキスだった。
「……ろー、くん」
○○に名を呼ばれたのを合図にローは口付けを深くした。
○○はローの首に自分の腕を巻き付ける。
ローは○○の服に手を侵入させる。
ーードンドン!!
「トラファルガー!!!」
「っ!!」
突然ドアを激しくノックされ、ボニーの怒鳴り声が響いた。
○○は驚いて体をびくりと反応し、ローから手を離す。
「……」
「ん!」
ローは外の声を無視する様に○○を攻め立てる。○○はローを止めさせようと必死でもがきながら、声が出ない様に力を入れた。
「○○は無事なんだろうな?!」
ドンドン!!と激しく叩きながらボニーは叫ぶ。
「ローくっ!」
○○がローを止めさせようと手と声を出すが、ローはそれを楽しむように○○の体に手を這わせる。
「ぎゃぶでーん!!○○を殺さないでー!!!」
「……」
シャチの泣き声にローの動きが緩む。
「こら!シャチ!」
ペンギンの慌てて止めようとする声も聞こえる。
「ろ、ロー君!」
○○は慌ててローを見上げる。
「……」
ローは不機嫌さを隠しもせずに○○の上から退いた。
○○はホッとしたように乱れた服を戻した。
「……何だ?」
ローは不機嫌な声のままドアを開けた。
「○○は無事か?!元はと言えば私が悪いんだ!」
ボニーが○○を庇う様に声を出した。
「ぎゃぶでーん!!人殺しちゃダメですー!!!」
心配したシャチがボロボロと涙を流した。
「こんな所で殺すわけ無いだろ」
ローが呆れた様にシャチを見た。
「そうだぞ、シャチ。こんな目立つ所ではしないだろう」
ペンギンは当然とばかりに声を出す。
「そうそう!ローだからな!」
エースはニヤニヤと笑った。
「そろそろご飯だって!」
優子はローの後ろに○○を見付けてホッとしたように笑った。
「……そうか」
ローは仕方ないと言うように頷くと○○を連れて部屋を出た。
そんなローの態度にホッとしたように皆が食堂へと向かう。
「ロー君」
「何だ?」
ローが○○を振り返る。○○がちょいちょいと指を動かすのでローは○○に合わせる様に屈んだ。
「っ!」
「頼りにさせてもらうね!」
○○は自らローに口付けると、嬉しそうに笑った。
照れ臭いのか、足早に皆を追った。
「……」
ローは満足そうに口の端を上げると皆の後を追った。
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