15

「っ疲れた!!!」

ようやくボニーが降り切ると深くため息をついた。

「お疲れさん!根性はあるな!」

シャチはにかりとボニーに笑った。

「私も疲れちゃった。私達は少し休むからエース達は滑って来たら?思いっきり滑ってないでしょ?」

優子はエースを見上げながら疲れた様に笑った。

「それだ!そうしろ!」

ボニーはしっしっと男性陣を手で払った。

「そうするか。お前達は昼飯食べた場所にいろ」

「はーい!」

エースにびしっと言われて優子は手を上げた。

「あ、私トイレに行くね」

優子が離れるとボニーと○○が2人になった。

「先に席取ろうか?」

ボニーにそう言って見上げるとボニーの顔色が悪かった。

「どうしたの?どこか具合でも」

「……いや」

ボニーは耳を触り床に目をやる。

「どうしたの?」

もう一度ボニーに聞く。

「ピアス」

「ピアス?」

「あァ。ピアスがない」

ボニーには珍しく少し焦った様に耳を触る。ボニーの片耳にはピアスがなかった。

「え?」

「確か、リフトで頂上に行った時はあったんだ」

ボニーはそう言って頂上を仰ぎ見た。

「……あの、木にぶつかった時じゃ……」

頂上でボニーが木にぶつかったのを思い出した。

「……あの時か」

「ジュエリーさん?!」

ボニーが迷わず外に行こうとする。

「見て来る」

「え?いや!待って!」

○○は慌ててボニーを止める。

「うるせェ!あれは大切な物だ!!」

ボニーは乱暴に止めようとした○○の手を払った。

「……じゃあ、私が行くよ」

「は?なんでお前が」

ボニーは苛立たし気に○○を見る。

「ジュエリーさんはここに降りて来るまでに体力凄い使ったでしょ?ウィンタースポーツって気付きにくいけど結構疲れるんだって」

「……そんな事……」

ボニーの声が小さくなる。体力自慢のボニーでも、慣れない雪は少し恐怖を感じた。

「私はだいぶ慣れたし!上の方アイスバーンだったから、ピアスも滑ってるかも。雪は降ってないから積もってないだろうし!ね?」

○○はにこりと笑った。

「……なんで」

「え?」

「私はあんたに辛く当たった」

ボニーは顔を伏せた。

「何言ってるの!友達が困ってたら助けるでしょ!」

「……別にあんたとは友達じゃないし……」

ボニーは照れるように小さく呟いた。

「じゃあ!ピアス見付けたら友達になってね!」

○○はにこりと嬉しそうに笑うとレストランを飛び出した。

「…………」

ボニーはそれを無言で見送った。








「ふう、ついた。さてと」

リフトを何度か乗り継いで再び頂上へとやって来た。
念のためリフトで係員に落とし物を聞いたが、ボニーのピアスらしき物はなかった。

「あ!あそこだ」

端にある木は誰も近付かず、ボニーが倒れた時のままだった。

「……えっと」

○○はその場所をくまなく探した。

「ないな。やっぱりし滑ったのかな?」

○○はそっと後ろの方を見た。

「……あそこに何か落ちてる」

○○は下の方に何かが落ちてるのを見付ける。それからリフトの方を見た。

「あそこまで行くとリフトでは下れない……。よし、行くか」

○○はゴーグルをかけ直すと意を決して滑り出した。前回はローが道標になっていたが今は誰
「大丈夫。ロー君の時を思い出して……」

○○は自分に言い聞かせるとゆっくりと下り始めた。








「たっだいまー!」

1時間以上滑ってから待ち合わせのレストランに来てシャチが優子とボニーに声をかけた。

「どうかしたか?」

エースが深刻そうな顔をする2人に声をかける。

「あ、お帰り!ねぇ、○○さん見なかった?」

優子は立ち上がりながらエースに聞く。

「○○がどうした?」

ローが眉間にシワを寄せた。

「あの……」

優子はどうしようとボニーを見る。

「また頂上まで行ったんだ」

ボニーはポツリと声を出す。

「頂上?」

ローはいっそうシワを寄せた。

「おい!頂上って、外は凄い吹雪になってきたぞ!」

シャチは慌てたように外を指差した。
外は吹雪、気温も下がりゲレンデにはあまり人がいなかった。

「っ!大変!見に行かなきゃ!」

優子が慌てて乾かしていたウェアを手に持つ。

「ダメだ!」

エースは優子の肩を押さえた。

「だって!」

優子は心配そうに外を見る。

「ペンギン、先に宿に行ってろ」

「キャプテン!」

ローは手袋を付け直すとペンギンの声を無視して外へ向かった。

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