12

「入れ」

連れて来られたのは廃屋だったが、中は綺麗にリフォームされた様で人が住める状態だった。

「で?トラファルガーの彼女だって?」

キッドは椅子に腰かけると出さしなく足をテーブルに乗せた。

「……はい」

○○はやはり恐怖を感じながら頷いた。

「あいつ、女とっかえひっかえで遊びまくってたぜ?遊びってより性処理の道具としか女の事思ってないんじゃねェか?」

キッドは睨むでも呆れるでもなく○○を見た。

「…………ロー君を一方的に見てきたけど、確かに女の人がいっぱいだった」

○○は考えるように頷いた。

「だろ?」

キッドは○○を監察する様に頷く。

「まァ、お前も知りたいだろ?トラファルガーがどんな気分でお前と付き合ってるのか?ここ場所はトラファルガーも知ってる。さて、どんくらいで来るか?」

クククと喉で笑うとキッドは○○を放っておく事にした。

「……あの」

「何だ?」

「……彼女が私だったら変?」

「んあ?」

キッドは○○をチラリと見た。

「私がロー君の彼女だったら、ロー君への評価って下がるの?」

○○はジッとキッドを見つめる。

「……さァな」

キッドは思いの外強い○○の眼差しに魅射られる。

「私は私なりに今まで精一杯生きてきた。自分の事を恥じる事も……あんまりない、かな」

「言い切られねェのか!」

キッドは思わず突っ込みを入れる。

「私はロー君の事大好きだからロー君に迷惑かけたくない。ねぇ、私がロー君の彼女だったら、ロー君の評価って下がる?」

「……」

キッドは体を起こし、○○に近付いた。

「俺はこう、胸がでかくて尻もでかくて腰が細くて派手な女が好きだ」

キッドは腕組みをして○○を間近かから見下げる。

「でも、お前みたいに目力の強い女も嫌いじゃねェ」

「っ!!」

ニヤリと笑うキッドに○○の顔はぱぁぁっと輝いた。


「あ、おい!トラファルガー!」

そんなキラーの声が外から聞こえ、すぐに硬いドアが蹴破られた。

「え?」

「……テメェ」

部屋に入ってきたローはキッドと○○が近い距離にいる事に苛立ちを覚えた。

「速ェ……お前、本当にこいつの女なんだな」

キッドはローの速い登場にかなり驚いた。

「いや、私も驚いた。今日ロー君用事があるって……」

○○もローの登場に驚いていた。

「ユースタス屋、俺のモノに手ェ出すんじゃねェ」

静かに低い声を出しながらローは○○の腕を掴むと自分の後ろへと隠した。

「ハッ!!ずいぶんな熱の入れようだな。まァ、女としては要らねェが、戦力としてなら欲しい。どうだ?○○?」

キッドはニヤリと笑うと○○に再び近付いた。

「お前にやるくらいなら俺がバラす」

ローは低い声で○○より先に答えると○○を連れてさっさとその場から立ち去った。

「へっ!気持ち悪ィ」

キッドはロー達の消えた方を見て呟いた。






「ロー君!」

足早に歩くローに手を引かれ、転びそうになりながら声をかけた。

「……」

ローは立ち止まるとゆっくりと○○に振り返る。
ローの冷たい目は○○を見下ろした。

「お前は俺のモノだ。勝手に他の男に尻尾振るんじゃねェ」

ローは怒りを滲ませた様な低い声を出した。

「し、尻尾なんて振ってないよ!」

○○は心外だとばかりに慌てて声を出す。

「ハッ、どうだかな」

ローは○○から視線を外す。

「心配かけてごめんね?」

○○は申し訳なさそうにローを見上げる。

「それならシャチとペンギンに言え。あいつらお前の荷物持って待たせてる」

「ううん。ロー君を心配させた」

「俺はしてない」

「素直じゃないな!」

ローの冷たい態度に○○はクスクスと笑った。

「……俺はお前みたいになる気はねェ」

ローは○○の頭に手を乗せ、顔を向けさせる。
○○の顔を固定すると呼吸を奪うように唇を重ねた。

「っ!!」

○○は必死にローの袖を掴んだ。

「……良いか、お前は俺のモノだ」

ローが静かに告げると○○が何かを言う前に唇を塞いだ。

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