11

「おー!○○!」

「おはよう」

待ち合わせ場所にシャチとペンギンがやって来た。

「おはよう!シャチ様!ペンギン!」

○○はにこにこと2人を出迎えた。

「さて!じゃあ行くか!」

シャチはにかりと○○に笑った。

「うん!今日はありがとうね!」

○○はこの前の帰り道、ローにスキー場での着るものをアドバイスを貰った。「一緒には行けないがシャチとペンギンを貸してやる」と言う事で3人で買い物にやって来たのだ。

「キャプテンじゃなくて悪いが我慢してくれ」

ペンギンが真面目な顔で○○を見下ろす。

「確かに少し残念だけど」

「素直過ぎだろ!」

空かさずシャチが突っ込みを入れる。

「でも、新しい友達が出来て私は嬉しいよ」

○○の笑顔にシャチとペンギンは一瞬固まる。

「……あ、ああ!そうだな!」

シャチは慌てた様にうんうん頷いた。

「俺も、新しい友人は嬉しいよ」

ペンギンも我に返ると表情を和らげた。

「ふふ!ありがとう!あ!あの店?」

スポーツ用品店が近付き○○は指をさす。

「そうそう!結構品揃え良いぞ」

シャチは○○と2人で駆け出しそうになる。

「おい、子供じゃないんだ」

ペンギンはやれやれとその後ろを追いかけた。





「ほら!これどうだ?!」

シャチは真っ白な耳の付いた毛糸の帽子を手に取る。

「……少し、可愛すぎないかな?」

○○はうーんとそれに手を伸ばし、被る。

「どう?」

「あはははは!!可愛い!」

シャチが大笑いする中、ペンギンは携帯カメラでカシャッと撮影した。

「ちょっ?!ペンギン!!」

○○は慌ててペンギンの携帯に手を伸ばすがペンギンは携帯を頭上で操作する。

「キャプテンに送信」

「え?!」

ペンギンはクスクスと笑うと携帯に収められた○○の写真を見せた。

「っ!!ペンギンは意地悪だ!」

○○は赤い頬をしてペンギンに驚いた顔を向けた。

「あはははは!!こんな顔してペンギンはキャプテンに次ぐドSだぜ!」

シャチは楽しそうに腹を抱えて笑い出す。

「お、返信。『買え』だと」

ペンギンは含み笑いをしながらメールを読み上げた。

「あはははは!!ドS!!!」

「……」

シャチは更に笑い、○○は押し黙った。


「うっせェな!!」

突然赤髪を立てた男が○○達に怒鳴った。

「ご、ごめんなさい!!」

○○はびくりと肩を震わせて振り返りながら反射的に謝った。

「なんだ!キッドじゃん!」

脅かすなよなーとシャチがキッドを見た。

「あー、何で休みの日にまでお前らと顔合わせなきゃなんねェんだよ」

キッドは面倒臭そうにシャチとペンギンを見た。

「それはこっちの台詞だ」

ペンギンも呆れた様にキッドを見る。

「で?この乳クセェ女は何だ?お前のこれか?」

キッドは○○を見下げて小指を立てた。

「ちち……?」

○○はポカンとキッドを見上げる。

「俺達じゃねェって!キャプテンだ!」

シャチがニヤリと笑った。

「…………は?ローの女?」

「ひっ!」

キッドは眉間にシワを寄せ、腰を屈め○○に顔を寄せるとまじまじと至近距離から見た。

「…………冗談だろ」

キッドは目を細めて○○を見る。

「いや、どうも本気のようだ」

ペンギンは○○をキッドから引き離しながら言う。

「キッド」

「おい!キラー!!面白いもん見れるぞ!」

キッドがキラーと呼ばれた金髪長髪の男を手招きした。

「こいつローの女だってさ!」

キッドが○○を指差す。

「…………」

「…………ど、どうも……」

無言で見下ろされ、○○はどうすれば良いか戸惑いながら頭を下げた。

「ない」

「だろ?」

キラーがきっぱりと言い切り、キッドが可笑しそうに同調する。

「……あの、でも!こ、恋人です!」

○○が慌ててキッドとキラーに自分がローの彼女であると訴えた。

「あー、遊ばれてるな」

キッドは興味無さそうに呟き、キラーは哀れそうな顔を向ける。

「…………買ってきます」

○○は居たたまれなくなり、シャチが持っていた買い物かごを取るとレジへ向かった。

「おい!○○!」

「やり過ぎだ!」

シャチが○○に声をかけるが、○○は振り返らなかった。

「でもよー。…………あ!」

キッドはニヤリと笑うとそのまま黙った。

「あの、今日はありがとう!また」

○○が買い物袋を持ち、ペンギンとシャチに頭を下げるとその場を離れた。

「よし!」

キッドはそれを追いかけて「来い!」と○○の腕を掴んだ。

「へ?」

「あ、おい!」

「○○!!」

キッドはシャチとペンギンの声を無視して○○を連れて店を出た。

「乗れ」

店の近くに停めてあった大型のバイクに○○を促す。

「…………」

○○は訝しげにキッドを見上げる。

「黙ってねェで乗れ!!」

「っ!!」

無言の○○に無理矢理ヘルメットを被せるとバイクの後ろに無理矢理乗せた。自分はバイクに跨がるとスロットルを回す。

「キッド!!」

駆け付けたペンギンがキッドを睨む。

「ローにでも連絡入れろ!」

エンジン音に負けない声で叫ぶとキッドは○○を連れ去った。
キラーもキッドの後をバイクで追った。

「やべえよ!!○○が!!」

シャチは慌てて携帯を取り出した。

「俺は追う!」

ペンギンはシャチを残して走り出した。

[ 12/37 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -