09

「あ!シャチくん!ペンギンくん!」

第三者の声にシャチとペンギンが振り返る。

「お!優子!エース!」

シャチが驚きから我に返り、2人を見上げた。

「お前ら何やってんだ?」

呆けてるシャチとペンギンに不思議そうにするエース。

「いや、あー、な?」

シャチは困った顔をしながらペンギンを見る。

「……昨日からキャプテンと付き合ってる○○だ」

ペンギンは落ち着きを取り戻してから○○を2人に紹介した。

「え?」

「は?」

優子とエースが驚いて○○を見た。

「わー!ローくんに彼女!!私、優子!宜しくね!」

優子がにこにこと嬉しそうに○○に手を出した。

「あ、○○です、宜しくお願いします」

○○は嫌でも目立ち、有名なカップルを見て驚いた。

「…………ローが?」

エースは眉間にシワを寄せながら○○を高い位置から見下ろした。

「お前さ、遊ばれてるだけだから本気にするなよ」

エースは冷たく言い放つ。

「ちょ、エース!」

優子は慌ててエースを止める。

「ハッキリ言っとく方が良いだろ。こいつらローに妄信的だからな」

エースは呆れながらシャチとペンギンを指差す。

「わ、分かってます!」

○○はにこりと笑った。

「卒業まで持てば良いなと私も思ってます!あんなに素敵な人が私を好きになってくれるなんて正直疑問です。だから、大丈ぶ、……です」

○○は笑いながらも気丈に声を出すが、涙が溢れていた。

「っ!!エース!!!」

優子はエースを諌めながら○○にタオルを持たせる。

「うー、大丈夫です!」

○○はタオルで顔を押さえながら必死に声を出す。

「お、おい、○○」

シャチはおろおろと○○を慰めようとする。

「エース」

ペンギンは低い声を出してエースを非難した。

「だ、だってよ!思うだろ!相手はあのローだぞ?」

エースは優子に怒られた事が堪えていた。

「わかってます。だけど、恋人と呼んで貰える内はローくんを信用するし、甘えたいし、頼りにしたいです」

○○はぐずぐずと泣きながらも何とかそう素直に訴えた。

「だー!泣くな!」

エースが「わかった!わかった!」と宥める。

「…………何してる」

低い声で現れたのは話の中心、ローであった。

「げ、ロー」

エースは面倒臭そうにローを振り返る。

「おい、ポートガス屋。これは一体どう言う事だ」

ローは泣く○○を見て眉間にシワを寄せた。

「あのね、目の中に睫毛が入っちゃって、取れなくて今、優子さんに見て貰ってたの」

○○はへらりと笑いながらローを見た。

「……そうか。擦るなよ」

ローは取り合えず○○の言葉を信用したのか、頷いた。

「うん!」

○○はローに嬉しそうに頷いた。

「…………」

エースはローの態度に愕然とした。

「優子!」

「ボニーちゃん!」

女性の声に○○が嬉しそうに振り返る。

「じゃあ、ご飯持って来よう!」

優子の号令でそれぞれが食事を手に元の席に戻ってきた。
○○は少し居心地悪そうにローの隣に隠れるように座った。

「今日は旅行の計画だろ?なんでそいつがいるだ?」

ボニーは不機嫌そうにカツカレー大盛りのスプーンで○○を指した。

「こいつも連れていく。ペンギン、1人追加だ」

ローが当たり前の様に指示をだし、ペンギンは「はい」と頷いた。

「はァッ?!ふざけてんのか?!」

バンッ!!とボニーはテーブルを叩いて立ち上がる。
○○は驚いてボニーを見上げた。
それはそうだ。急に知らない(同じ学科ではあるが)人が仲良しグループに入ってきたら嫌だろう。

「俺が決めた事だ」

ローはギロリとボニーを睨み付ける。

「あ、あの!急に参加とか……私、迷惑になるし!」

○○が慌ててローとボニーの間に入ろうとする。

「そりゃそうだ!」

「お前は黙ってろ」

ボニーの怒鳴る声とローの冷徹な声に○○は押し黙る。

「ろ、ロー君もボニーちゃんも落ち着いて」

優子がキリリと声を出した。初めはこれらの言い争いにおろおろとしていたが2年経つと慣れることもあった。

「落ち着けるか!こいつは優子に悪さした連中の仲間だぞ!」

ボニーは苛立たしげに○○を指差した。

「…………?」

○○は何を言われたか分からずにポカーンと口を開けた。

「口、開いてるぞ」

「っ!!」

ペンギンに突っ込まれ○○は慌てて手で口を覆った。

「ぎゃははは!相変わらず面白い奴!」

シャチがゲラゲラと○○を見て笑う。
今までの緊迫が和らいだ。

「あの、私……何か?」

○○はおずおずとボニーと優子を見る。

「……あ!もしかしてボニーちゃんと同じ学科?」

優子は思い当たる節があり○○に聞く。

「はい。話した事はほとんどないですけど。話そうとして無視された事なら」

あははと乾いた笑いと共に素直に口にする。

「そっか!それで!ボニーちゃん。大丈夫だよ!ありがとう」

優子は自分を心配するボニーににこりと笑った。

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