前編
「ヤソップはおれとおなじくらいのこどもがいるんだろ?ならシャンクスは?」
小さなルフィが不思議そうにシャンクスを見上げた。
フーシャ村に赤髪海賊団が停泊をして半年は経った頃。
酔う度にヤソップから聞かされる「海賊旗が俺を呼んだからだ!!」を聞いてルフィはシャンクスに聞いた。
「俺にはガキはいねェよ」
シャンクスはだっはっはっと笑った。
「もてないのか!」
「そんな事ねェ!!…………ねェ……はず」
ルフィの言葉にシャンクスの語尾がどんどん小さくなった。
「良い事を教えてやるよ!お頭と副船長のベックマンは同じ女が好きなんだよ」
ニヤニヤと笑いながらヤソップがルフィの肩に手を回す。
「おなじ?」
「あァ!そうさ!でな、2人ともそいつに手も足も出せなくてなーなーになってる感じだな」
ヤソップはぐふふと笑った。
「おい、何ガキに吹き込んでるんだよ」
シャンクスは呆れた様にヤソップを見た。
「俺を巻き込むな」
ベックマンも呆れた様に煙草を吹かした。
「良いじゃねェか!本当の事だろ?それにあんまり時間かけてるとヒョイッと他の奴にかっ拐われるぜ」
ヤソップはやれやれと体全体で表現した。
「…………」
「…………」
シャンクスとベックマンは無言でお互いを見た。
「坂城」
「あー!シャンクス!!シーツ出してって言ったでしょ!」
船に戻ったシャンクスが坂城に声をかける。
「いや、悪ィ!」
シャンクスは笑いながら手を出す。
「何よ、薄気味悪い顔して」
坂城は訝しげにシャンクスを見上げて自らも手を出した。
「土産」
シャンクスは坂城の手にポロリと綺麗な石を落とす。
「うわー!これトパーズ?綺麗!」
坂城は嬉しそうに自分の手の中に入ったトパーズを見る。
「良かったな!」
シャンクスは満足そうに笑うと自分の部屋へと足を踏み入れた。
「どうしたの?これ!あ!マキノさんにあげようとしてフラれたんでしょ!あの人高嶺の花だもんねー」
坂城はクスクスと笑いながらトパーズを光に当てたりして眺めていた。
「別にフラれてないさ」
シャンクスはシーツを片手に廊下にいる坂城に近付いた。
「トパーズに意味があってな、自分に必要なものやチャンスを引き寄せる石なんだと」
シャンクスはシーツを渡しながら坂城に顔を寄せる。
「自分に必要……まさか!」
坂城は驚いてシャンクスを振り返ると近くにシャンクスの顔があり驚いて避けた。
「シャンクス!マキノさんと上手くいったの?!」
「は?!」
「だから今度は私にって事?!良かったじゃない!おめでとう!!」
坂城は我が事の様に笑顔満開でお祝いを口にする。
「お、おう……じゃない!そうじゃない!!」
坂城の笑顔に思わず頷いてから慌てて首を振るシャンクス。
「じゃあ、コックさんにご馳走用意して貰わなきゃ!じゃあね!シャンクス!!」
坂城は笑顔のまま走って行った。
「…………違うんだ、違うんだよ!坂城!!!」
シャンクスの叫び声は虚しく廊下に響いた。
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