バレンタイン
2月14日バレンタインデーである。
どこからか聞き入れたのか、ナナミ、ニナ、アイリ、テンガアールが○○の所に来て、チョコレートを作っていた。
「ここは?」
「うん、そう!上手!」
「これを、こうして!」
「あっ!ピンク良いなー!」
「はい!」
みんなで楽しそうにデコレーションをした。
「出来た!」
「皆は誰にあげるの?」
「フリックさん!」
「ヒックス!」
「U主」
「……私も」
みんな出来上がったチョコレートに大満足のようだ。
「あ!お礼に○○さんにもラッピングあげる!」
「赤で良い?」
「わぁ!綺麗なリボン!良いの?」
「もちろん!○○さんは誰にあげるの?」
「え……?」
○○は少し考えた。
「さあね」
にっこりと笑うと誤魔化した。
みんなで綺麗にラッピングを済ませると、それぞれ相手に渡すべく、出て行った。
○○はとりあえずカミューを探すために城をうろうろしてみた。
テラスに行くと、すぐに見つかった。しかし、カミューの回りにはたくさんの女性が群をなしていた。
「カミューさん!これ私から!」
「こっちも!」
「カミューさん!これ私の気持ち!」
女性は我先にとカミューに可愛くラッピングされたチョコレートを渡して行く。
それに嫌な顔ひとつせず、一つ一つを大切に受け取っていた。
○○は意を決してその群れに入った。
「カミューさん!」
「これは○○さん、こんにちは」
カミューの笑顔が柔らかさを増した。
「あの、私も、チョコレート」
○○は赤くなりながらチョコレートを渡す。
「ありがとうございます」
カミューは大事そうに騎士服のポケットに入れた。
夜、○○はまたテラスに来ていた。
「ちょっと寒かったかな?」
○○は満天の星空を見上げた。
「お待たせしました」
「カミューさん!」
まさか、本当にカミューが来るとは思わず、○○は驚く。
「手紙が入っていたので」
カミューはにこりと笑うと○○に近付いた。
「あの、すみません。迷惑でしたか?」
「迷惑と思うなら来ていませんよ」
「良かった」
ほっと○○は胸を撫で下ろした。
「あの、その、カミューさんとお話ししたくて」
「今日ですか?」
「今日……です」
○○は深呼吸をする。
「今日はなんの日か知っていますか?」
「バレンタインデーですか?」
「バレンタインデーがなんの日か知っていますか?」
「いえ、詳しくわ……。女性がお世話になった人にチョコを渡す日だとか……」
「いえ……本当は、女性が好きな男性に告白する勇気をくれる日なんです」
○○はカミューを正面から見据えた。
「カミューさん、私、カミューさんの事が、好きです」
○○は真剣にそう伝えた。
「……」
「……」
「……」
「……あの、それだけ、です」
○○は何も言わないカミューに怖じけ付きそうになる。
「ご、ごめんなさい。私、別に答えて欲しい訳じゃ……」
「困りました」
「あ……」
カミューの言葉に○○は言葉をなくす。
「で、ですよね、本当にごめんなさい!」
○○は恥ずかしく、泣きそうになりながら走り出す。
ーーパシッ
「っ?!」
その手をカミューが捕まえる。
「困りました……。先に言いたかったのですが、断る理由もない」
「え?」
「それどころか、嬉しくて仕方がない」
カミューはそう言うと優しく微笑んだ。
「あ、あの?」
「私も○○さんが好きです」
カミューははっきりとした声でそう伝えた。
「あ、の」
「私とお付き合いして頂けますか?」
「も、もちろん。その、宜しくお願いします」
○○は赤くなりながらお辞儀をした。
「はい、こちらこそ。失礼」
カミューは○○の捕まえていた手を強く引いた。
「きゃっ」
カミューは○○を腕の中に抱き入れた。
「守ります。何があっても貴女だけは」
「……私も。カミューを守れる存在になりたい」
○○も強くカミューを抱き締めた。
「お互いに、ですか?」
「お互いに、です」
「では、そうしましょう」
カミューはクスクスと愛しそうに抱き締めた。