貴方とクリスマスを1
師匠も走る12月。
町はクリスマスへ向けて浮かれていた。
ショーウィンドーにはクリスマスカラーのプレゼントに可愛らしいサンタやトナカイが並ぶ。
そんな中、○○は変わらずに仕事を忙しくしていた。
「○○ちゃん!ごめん!これコピーお願い!」
同僚がそう叫ぶ。
「私も忙しいんですよ!」
○○はパソコン画面から目を離さずに言う。
「○○ちゃんが触らないとこのコピー止まるんだよ!」
そうなのだ。
何故か○○が触る時だけ問題が起きず、他の人が触ると紙詰まりはもちろん、インク詰まりや故障を起こし、作業は大幅に遅れるのだ。
「もー!解りました!待ってください!」
「さんきゅ!」
嫌そうに言いながらも、結局はイエスと答えてしまうのはお人好しの○○らしい。
○○が切りの良い所まで仕事を進めてからコピー機に取り掛かる。
「あ!カミュー部長!お帰りなさい!」
先輩女性の黄色い声がして振り返ると、外回りから帰ってきたカミューがいた。
「あぁ、ただいま」
にこりと上品な笑顔でカミューは答える。
それに女性社員たちはメロメロになる。
もちろん、○○もその一人だ。
「○○さん」
「は、はい!」
突然名を呼ばれ驚いて返事をする。
「これもコピー頼めるかな?」
カミューは鞄から書類を取り出し申し訳なさそうに言う。
「はい!もちろんです」
○○はにこりと答えた。
「俺の時と違いすぎー」
と言う男性同僚の声はさらりと無視をした。
思ったよりも量も多く、コピーに時間がかかってしまい、既に回りには人がいなかった。
「部長、遅くなって申し訳ありません」
○○がコピーした束をカミューのデスクへと持っていく。
「いえ、ありがとうございます」
カミューはにこりと上品な笑顔で礼を言う。
それだけで、頑張った甲斐があると○○は嬉しくなった。
「ところで○○さん」
「はい。なんでしょう?」
○○が座るカミューを正面から見る。
それだけで、顔が赤くなりそうだ。
「この企画が終わった後の月曜日は何か予定など入っていますか?」
カミューがにこりと聞いてくる。
「……企画が終わった月曜日……」
○○が不思議に思いながら壁にかかるカレンダーに目をやる。
21日の金曜日が企画が終わる日。
その後の月曜日は……。
「あっ!24日はクリスマスイブですね!もう、そんか時期なんてですねー」
○○はぽんと手を叩く。
「……予定でも?」
「はい!高校時代からの友達とクリスマスパーティをする予定なんです!」
○○は嬉しそうに答えた。
「…………そうですか」
カミューは少し驚いてから目を伏せた。
「カミュー部長は?あ!彼女さんとデートとかですか?」
○○は前に素敵な女性と歩くカミューを見ていたのだ。
「……そう、思っていたのですか……振られてしまいまして……」
カミューは残念そうな声を出す。
「……そ、そうなんですか?」
○○は困った顔をする。
「えぇ」
カミューは寂しそうに頷いた。
「げ、元気出してください!あ!企画が終わったらみんなで打ち上げしましょうね!わいわい!」
○○が明るく声を出す。
「……えぇ。頑張りましょう」
カミューは少し明るく笑った。
「で、では、失礼します」
「はい。お疲れ様でした」
「お疲れ様です!」
○○は軽く頭を下げるとカミューから離れた。
「カミュー部長を振るなんて勿体無い事する人もいるんだなぁ」
○○は着替えながら声を出す。
「私が代わりに行ってあげるのに……なーんて!!」
○○はテンション高くロッカーを叩いた。