失恋

「専務!次は△△会社の方がアポを取ってます」

「あー……めんどい」

「え?えぇ?!」

マルコの秘書になって一年。ミミはマルコの第1秘書になっていた。

「専務、この前はオーケーって言ったじゃないですか!」

ミミは慌ててマルコにスケジュール通りにして貰おうと奮闘する。

「あの時はあの時は。今は今だよい 」

マルコは面倒臭そうにニヤリと笑った。

「……どうしてもですか?」

「どうしてもだよい」

真剣なミミにマルコも真剣な顔で返す。

「……はぁ、知りませんよ、どうなっても」

ミミはやれやれと首を振る。

「任せたよい。敏腕秘書様」

マルコはニヤリと笑うと煙草を手にして喫煙所へと向かった。

「はぁ……」

ミミは仕方なく名刺ケースを開いてアポを取っていた相手に電話をかけるために受話器を手に取った。




マルコは仕事は出来るが意外に自由奔放だった。
責任感は強いが、なかなか掴めない。一筋縄では行かない男だった。
第1秘書が引退して半年。仕事と言うよりは予定変更に大分慣れたのだった。


第1秘書が辞める時本当に不安だったが、「お前ならやれる」と優しく笑った顔に##NAME1#はやる気になった。

いざ、マルコと2人きりになるとドキドキと胸が高鳴って大変だと思っていたが、それ以上に忙がしかった。





「マルコ専務」

「あァ?」

煙草を吸い終わって帰ってきた時は気分転換出来たのか、スッキリとした顔だった。

「来週の木曜日に予定取り直しました。次は逃げないで下さいね!」

ミミは語尾を強く言い切った。

「ふん、強気になってきたねい。了解だよい」

マルコは満足そうに頷いた。

(絶対試されてるよね、これ)

マルコはこうして時々ミミを試す様なことをした。

(こう言う事にさえ喜びを感じてる私は絶対におかしいよね……)

ミミは自分自身に苦笑した。

「そうだよい。3ヶ月後2週間ばかり休みを取るからそのつもりで」

マルコは今思い出した様に声を出す。

「??ずいぶん思い切った休みを取るのですね」

ミミは不思議そうにマルコを見上げた。

「あァ。新婚旅行はヨーロッパが良いとか言うからよい。それくらい取らねェとな」

「…………え?」

マルコの言葉にミミは頭が真っ白になる。

「あァまだ秘密だが結婚するんだよい。休んでる間は宜しく頼むよい」

マルコはそっぽを向いて顔を赤くした。珍しいその表情を鈍器で頭を殴られたような感覚で見上げた。

「…………わ、解りました!おめでとうございます!!」

自分はちゃんと笑っていられるのか不安だった。

「おゥ、ありがとうよい」

にこりと優しく笑うマルコの顔はミミが大好きな顔だったが、それ以上に見るのが辛い顔だった。

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