恋の始まり
ミミは世界でも有数な力を持つ白ひげと言う会社組織に入社した。
「あーぁ、去年も本厄で盲腸して入院したけど、今年もちょこちょこ怪我するなぁ……」
ミミは入社して半年、だいぶ会社にも慣れ、友人も出来た。その友人と社食でランチを取っていた。
「あー、それはお祓いか何かしてもらったら?」
友人の一人がAランチのエビフライをかじりながら言う。
「お祓い……?みんなした?」
ミミは友人と達を見渡した。
「私の時はしなかったなぁ」
大卒の友人が考えながらパスタランチを食べる。
「私も今年だけど全然何もなかったよ!」
Bランチの鯖の味噌煮を食べながら言う。
「そっか……。はぁ……これ以上何もないと良いな」
元気のないミミに友人達は「大丈夫!大丈夫!」と元気付けた。
「秘書課かぁ……」
新しい課に配属され、ミミはドキドキとそこへと足を踏み入れた。
「○○さんにはマルコ専務の第2秘書になって貰います」
「は、はい!」
緊張しながら頷く。
マルコの第1秘書は年配の男だった。年配で自分は居なくなる人間だからと自分の後継者を育てる為にかなり厳しく、根を上げる人が殆どで、新人のミミと白羽の矢が立ったのだ。
「それじゃダメだ」
「やる気あるのか?」
「嫌なら出て行け!!」
「また、か?!」
「…………もー、……無理!!」
ミミは第1秘書に付いて一ヶ月仕事を続けた。だが、かなり厳しい第1秘書にミミは根を上げかけていた。
「○○」
「は、はい!専務!」
突然マルコに声をかけられ、ミミは慌てて立ち上がる。
「今日はアイツは早番で帰ったよい。何でも急用だそうだ」
「あ、はい」
マルコの言葉にミミは頷いた。
「仕事は分かってるか?今日は特別な仕事もないよい」
「えっと……はい。あの、ノートを見れば!」
片っ端からメモをしまくっていたミミは業務の終わるまで後2時間の仕事は完璧だった。
「そうかい。なら、任せたよい」
マルコはニヤリと笑うとその場を去っていった。
「……よし!」
ミミは専務に任され気合いを入れた。
しかし、3時間後。暗い部屋でミミは必死に仕事を続けていた。
「っと!これで最後!!!!」
ミミはようやく締め作業を終了する事が出来た。
「大丈夫、何度も見直したし!皆仕事量多い癖に速いなぁ」
ミミはホッと肩を撫で下ろしてロッカールームで制服を着替えた。
「……あれ?」
会社から出ようとした所で、喫煙所でマルコが煙草を吹かしているのに気付いた。
「声、かけなきゃね!……お、お疲れ様でした!!」
ミミはとっくに帰ったと思っていたマルコに声をかけた。
「お、来たかい」
マルコは吸いかけの煙草を灰皿に押し付けるとミミに近付いた。
「○○が着替えている間に仕事を確認させて貰ったよい」
マルコは眠そうな目でミミを見下ろした。
「っ?!何か不備でも?!」
ミミは何か失敗でもしたかとおどおどとする。
「何かやらかしたのかよい?」
マルコは表情を変えないまま聞く。
「い、いえ!!時間かけて確認しながらやったので!……でも、後厄だからやっぱり何か……」
ミミは不安になる。
「ぶはっ!!」
「??」
突然マルコが吹き出した。
「悪ィ。面白過ぎだ」
クククと笑いながら謝った。
「仕事は問題ないよい。完璧だ。あいつの元で仕事して根を上げなかったのは3人目だ。まァ、後の2人は病院だが……。まァ、良く頑張ってくれたよい。これからも宜しくな」
マルコはニヤリと笑うと手をポケットに入れた。
「あ、ありがとうございます!!」
ミミは認められた事が嬉しくて元気に頷いた。
「じゃあな、これからも頑張れよい」
マルコはそう言うと先に会社を出て行った。
「はい!ありがとうございました!!これからも頑張ります!!」
閉まったドアに向かって大きく声を出し、頭を深々と下げた。
踊り出しそうな夜中の町をスキップをして帰った。
マルコの笑顔に胸がきゅんっと高鳴るのを感じた。
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