01

「後は……リップクリームにペットボトル?それにストロー付きのキャップにフォークとスプーン?何これ?」

素子は瑠奈が作った買い物リストを見て不思議そうに声をあげた。

「出産て時間がかかるから飲み物必要!体力使うから喉も乾くし、意外に乾燥するからリップクリームも必須!私はペットボトルホルダーにリップクリームくっ付けたの!」

瑠奈はドラッグストアーに入りながら力説する。

「じゃあ、このスプーンとフォークは?」

「産んだ後に驚くほど体力消耗してるから、お箸だと掴めないのよ!だから!ストローもペットボトルの蓋が開けられなかったり、寝たままでも飲めるようにだよ!」

瑠奈はにこにこと説明を加えた。

「へぇー……」

素子は知らない事だらけだな、と感心したように頷いた。
既に臨月でいつ生まれても可笑しくない大きなお腹で素子はようやく産休に入った。
下手に一人で家にいるより、旦那であるベックマンの近くで仕事をする事を選んだ素子はようやく出産準備をしに買い出しに出てきたのだ。
もちろん瑠奈には「遅すぎる!」と怒られたのだ。

「後、生理用品も」

「生理用品?」

「うん!産院でもナプキン用意してくれるけど、市販の大きい方が羽も付いてるし、良いんだって」

瑠奈は大きな生理用品を手にとってかごに入れた。

「へぇー……」

素子は大きなお腹を撫でた。

「動いた?」

「ううん。最近は動きも少ないの。前みたいに胃の圧迫も減ってきたし」

素子は一時期食べ悪阻になっていた。空腹になると気持ちが悪くなる。しかしお腹に胎児がいるせいか、すぐにお腹がいっぱいになってしまい、おにぎりを小さくたくさん作り、持ち歩いていた。

「ふーん。じゃあ、そろそろ産まれるのかな?お腹痛い時ある?」

瑠奈は大きなお腹を気にしながら聞く。

「……んー、重いもの持つときゅーってする」

素子はリップクリームを選んで瑠奈の持つかごに入れた。

「……それは、ダメ」

瑠奈は心配そうに首を横に振る。

「大丈夫。無茶はしないよ。と言うか、させてもられない。車の運転もしてないよ」

素子はベックマンの顔を思い出しながらクスクスと笑った。

「旦那さんがベックマンさんで良かった」

瑠奈はホッとしたように頷いた。

「後は?」

素子はリストの物をかごに詰め終わった。

「そうねー。あ!赤ちゃんの物は洗った?」

瑠奈は思いを巡らせてからハッとした様に聞いた。

「うん。言われた洗剤で洗って部屋干ししたわ」

素子は頷いた。

「じゃあ、大丈夫かな?」

瑠奈はもう一度リストを眺めてから頷いた。

「じゃあ、行こうか。待たせている人達が気になるわ」

素子は苦笑しながら上を指差した。

「……そうね。○○の事も心配だし、行こうか」

瑠奈は頷くとレジへと向かった。

「駄目だよ!」

素子が荷物を持とうとしたので、無理矢理荷物を瑠奈が奪い取る。

「大丈夫なのに……」

素子は言いながらも嬉しそうに笑った。

「楽なのは妊婦の間だけだよー」

ニヤニヤと瑠奈が楽しそうに笑った。

「今でも十分腰が痛いわ」

素子は腰を伸ばそうと上体を反らせた。

「ふふ!産む時も産まれてからも大変だよー!」

「もー!これからの人の不安を煽らないで」

素子は困った顔をして瑠奈を見た。

「でも、産まれてからの方が赤ちゃんの顔が見られるから幸せだよ」

瑠奈はにこりと本当に幸せそうに笑った。

「ふふ、 私にも血の繋がった家族が出来るのよね」

素子はクスリと笑って自分のお腹を見ながら愛しそうに撫でた。

「……そうだね。半分ベックマンさんだしね!」

瑠奈も嬉しそうに素子のお腹を見た。

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