01
揺れる船上。船の部屋の中では広い方の船長室。
「ん……」
二人の影が重なっている。
一人は赤い髪に無精髭、左腕はない男はだらしなくベッドの上に座っている。
それに抱き寄せられているのは白い髪に細い体、少女のような体付きと顔をした女が男に抱き付いていた。
「しゃ、シャンクス」
シャンクスと呼ばれた男はゆっくり体重をかけると少女をベッドへと押し倒した。
「大丈夫だ」
言いながら唇を重ねる。少女の体が緊張して力が入るのが解ると苦笑をする。
シャンクスはゆっくりと残っている右手で少女の体に触れる。
「っ!!」
少女の体がビクリと跳ねた。
「っ!!やっぱり無理ーーー!!!!」
「うわっ!!!」
少女はシャンクスを突き飛ばす。
「シロ!お前、また」
シャンクスは呆れた顔でシロと呼ばれた女を見る。
シロは布団を引っ張り自分へと巻き付けた。
「無理!無理無理無理!!」
シロはいやいやと首を左右に激しく振り、シャンクスが伸ばした手を拒否した。
「はぁーー……。初めてって訳じゃねェんだろ?年も年だし恥ずかしがるな!」
「うっさい!!!!」
「がふっ!!!」
シロは握った拳をシャンクスの顔面へと叩き込んだ。
「信じらんない!!デリカシー無しの最低男!!!」
シロはベッドから飛び出るとドアノブに手をかけながらシャンクスを振り返る。
「海賊にデリカシーなんて必要か?」
シャンクスは挑戦的に声を発する。
「海賊だろうが海軍だろうが男女間には必要よ!!この馬鹿!!!」
シロはそう叫ぶとドアを激しく閉め、部屋を飛び出した。
「……はぁ……」
しーんっと静まり返った部屋でシャンクスの重苦しいため息が響いた。
とある島のとある酒場。ワイワイとアルコールで騒がしい店内のカウンターに一人暗く座っている男がいた。
「……はぁ……」
カランとグラスの中で氷が鳴った。特徴的な金髪を揺らした男は暗い顔でため息をついた。
「おかわり」
グラスを口許に運び、中身がない事に気付き、男はカウンターの中のバーテンダーへと声をかける。
バーテンダーは少し怖がりながらも凛々しく背を伸ばし、男のグラスに酒をそそいだ。
「……」
「ラム酒」
「かしこまりました」
男の隣に空席をあけて座ったのはシャンクスだった。
「お待たせしました」
「おう、……はぁ……」
バーテンダーから酒を受け取るとシャンクスは重苦しいため息を出した。
「赤髪、こんな所で何してるよい」
男がちらりと赤髪のシャンクスへと声をかける。
「お?おお!マルコじゃねェか!!……駄目だ、落ち込む」
シャンクスは男ーーマルコに顔を向けて一瞬楽しそうな顔をするが、そのまま落ち込むようにグラスに口を付けた。
「ため息なんてつくなよい。お悩み相談なんてするんじゃねェ」
マルコは面倒臭そうにシャンクスから顔を背けるとグラスを傾ける。
「お悩み相談ね、そうだんだよ。今悩んでてさ」
「聞かねェよい」
シャンクス言葉にマルコはバーテンダーにまた酒を頼む。
「俺の彼女さ、全っっ然!!抱かせてくれなくてさァ」
「お前に興味ないんだろうよい」
「そんな事あるか!俺にメロメロだぞ!」
「金目当てなんだろい」
「うーん、そう言う感じでもねェんだよな」
律儀に反応するマルコにシャンクスはうーんと悩むように無精髭を撫でる。
「触ってもキスしても気持ち良さそうにするんだけどよ、服脱がそうとすると怒んだよな」
「……」
「でさ、無理矢理続行しようとすると殴られるんだよ」
ホラと顔にはまだアザがある。
「…………」
「どうした?黙り込んで?」
無言のマルコにシャンクスは不思議そうに酒を煽る。
「同じだ」
「あ?」
「同じだよい」
「同じ?」
シャンクスははやり不思議そうにグラスを置いた。
「あァ……。抱き寄せてもキスしで嫌がらねェが、脱がそうとすると殴られる」
酔っているのか、弱っているのか、マルコも顔のアザを見せる。
「……いるんだなァ……同じ悩み」
「何でだろうな……」
2人はボーッと酒を飲んだ。
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