07
あのまま逃げるように帰った春日だったが、その後は順調に交際を続けて行った。
「今日は何食うかなァ」
エースは両手をポケットに入れたまま店を見回した。
「私、辛いの食べたい」
春日は悩んでいるエースに提案する。
「辛いの、な。ビビンバとか?焼き肉行くか!」
エースは上機嫌に頷いた。
「ふふ、やっぱりお肉になるんだね」
春日はクスクスと笑った。
「じゃあ、行くか!」
ーーチャララララーン
「ッチ、悪ィ」
エースは舌打ちをして不機嫌そうに電話に出た。
いつもはすぐに切る電話にエースは随分と長く聞き入る。
「……大丈夫なのか?……帰る。あ?良いよ!仕方ねェだろ!!……あァ……じゃあ」
エースは真剣な表情をすると携帯電話の通話を切った。
「悪ィ。急用だ」
エースは片手を立てて謝る。
「どうしたの?」
「……あー……」
春日の言葉にエースが決まり悪そうに言葉に詰まる。
「……」
「ちょっと……悪ィ」
エースは困った顔のまま頭を下げた。
「……うん。何か困った事が起こったんでしょ?早く行かなきゃ!」
にこりと笑ってエースを送り出す春日。
「っ!!…………本当に悪ィ」
エースは驚いた顔をした後、その場を走り去った。
「…………あーあ。あれは、彼女の為に走る男の顔だよね……」
春日は走り去るエースの背中を見送った。
「……帰ろ」
「あれ?」
次の日、会社にはエースの姿が無かった。
「今日エースは?」
隣から聞こえてくる声に思わず耳を傾ける。
「何か休みらしいよ」
「珍しいね」
「何か、大事らしいけど……」
「ま、明日には来るだろ」
そうして仕事の話へと移行したので、春日も仕事へと意識を集中させた。
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