02
「何で私はここにいるのかしら?」
春日は深くため息をついた。
こことは居酒屋。問題なのは場所ではなくそのメンバーだ。
集まったのはオヤジと呼ばれる社長、エドワード・ニューゲートを筆頭とした幹部たち。
専務で1番支部部長のマルコはもちろんの事、そこには期待のホープエースの姿もあった。
仕事が終わり、帰り際に「ちょっと付き合え」と部長のサッチに連れ去られてここまでやって来たのだ。
「……はぁ」
「飲んでるか?春日」
ため息をついた瞬間に声がして、隣にどかりと座る音がして驚いた。
そこには社長の白ひげが腰を掛けた。
「っ!!は、はい!」
春日は驚いて白ひげに返事をした。
一般社員の春日にとっては雲の上の存在である。緊張しない訳がない。
「グララララララ!!!もっと飲め!」
白ひげは春日のグラスに強い酒を並々と注ぐ。
「は、はい!」
春日はぐっとその中身を飲み干した。
「グララララ!!!良い飲みっぷりだ!!!ほら!もっと飲め!!!!」
春日は緊張と混乱とで白ひげの望むまま飲み続けた。
「なるほどな、お前はエースが好きだったのか」
白ひげは納得した様に頷いた。他の人達は2人から離れ、どんちゃん騒ぎをしていた。
「はひ、れも、もういいんれふ」
春日は既に呂律も回らずに、机に突っ伏している。
「何故だ?」
白ひげは酒を煽った。
「いいんれふ。もう……」
春日はすやすやと寝息を立て始めた。
「なるほど……な」
白ひげはニヤリと笑うと、再び酒をのんびりと飲み始めた。
「……うぅ……痛い……」
二日酔いから来る頭痛に春日は目を覚ました。
「……あれ?」
自分が自分の部屋の布団の上で寝ている事に気付いた。
しかし、戻って来た記憶もなければ、着ていた服はそのままでしわになっていた。
「……んー、いたたた……思い出せない」
春日はため息をついてふと、時計を見上げた。
「……そう言えば今日は休日出勤だ。そろそろ準備しなきゃ」
春日はダルい体に鞭打って何とか立ち上がるとシャワーを浴びて出掛ける準備をした。
「お腹減らない……ってか、気持ち悪い……」
春日は前に先輩から貰ったウコンを飲むと気だるい体を引きずって家を出た。
「あれ?!」
出掛ける間際に春日は焦った声を出す。
「ない!ないない!鍵がない!!!」
春日は荷造りしたバッグから中身を全部出し、昨日着ていたものを調べても出てこなかった。
「…………でも、家に入ってるって事はこの部屋には鍵はあるよね。うわ!もうこんな時間!!」
春日は仕方なくスペアキーを取り出すと仕事へ行くために慌ただしく部屋を後にした。
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