01
「あ……」
春日の視線の先には同じ会社の若きホープ、ポートガス・D・エースがいた。
高卒で入ってきた彼はメキメキとその実力を惜しみ無き発揮し、次期部長候補とまで言われる。
綺麗な顔立ちとは言えないが、自信に満ちた鋭い眼差しと鍛えか抜かれた肉体で多くの女性を魅了し、何故か目が離せなくなるその性格は男女問わず彼に魅入れられた。
春日もそんな彼等と変わらずエースの事が気になっている一人であった。
しかし、彼女の目線の先にはエースとエースに寄り添って幸せそうに微笑む金髪の女性の姿。
「……いるよねー、彼女」
春日は胸に突き刺さる痛みでようやくエースが好きである事を自覚した。
「あー、恋に気付いた瞬間に失恋とかカッコ悪いなー」
春日はため息をつきながら帰路へとついた。
家に帰ると涙が溢れた。
「おはよー、ございます」
春日はふらふらと出社した。
「おはよう!って、凄い顔!!!大丈夫?!」
同僚が春日の顔を見てぎょっとした。
泣き腫らした腫れぼったい目。寝てないのか目の下には深い隈。肌は荒れていて、その上に無理やり化粧をしたせいか、酷い事になっていた。
「……もーさ、失恋しちゃって……」
春日はため息をつきながら席についた。
「え?何あんた!彼氏いたの?!」
同僚は驚いて声を出した。いつも残業や休日返上で仕事もしていたからだ。
「うーうん。片想いー。辛いわー」
春日は冗談を言うように声を出した。
「は?お前失恋したのか?」
「っ!!!」
驚いて後ろを振り返るとエースが立っていた。
「は、はい」
春日は少し緊張しながら頷いた。
「それは辛かったな」
うんうんと物知顔で頷くエース。
「って、エースって失恋とか知らなそう!」
クスクスと笑う同僚。
「お前っ!失礼だな!」
エースは楽しそうに笑った。
それから同僚とエースが話し出したので、春日はそっとその場を離れて仕事を始めた。
(辛いなぁ……。綺麗と言うか目の離せない感じの人だったもんね)
春日は昨日のエースと彼女の姿を思い出しながら、痛む胸を抱えて過ごした。
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