11
てくてくと言葉もなくエースと春日は夜道を歩く。ただ、繋いだ手が熱かった。
「……この前は母親が熱出してさ。ふらついてたから腕を貸した」
エースがポツポツと話し出した。
「……それで、腕組んでたんだ。…………それならそうとあの時に言ってくれたら良いのに」
春日もポツポツと静かな声で返す。
「……大の男が母親と腕組んで歩いてるのを彼女に見られたくないだろ……」
エースを見上げると珍しく顔を赤くしていた。
「……そっか……」
春日はそんな照れたエースを見て可愛いなと思った。
「で?」
「え?」
「俺は浮気なんてしなくねェ。あんな男と一緒にされたくない」
エースは不機嫌そうに声を出した。
「……あ」
春日は思い出した。エースに浮気や二股などと酷い言葉を投げ付けたのだ。
「ずっと好きだった女が失恋したとか聞いてさ、ショック受けたけどチャンスだと思った。やっと付き合えたのに拒まれるし、浮気とか言われるし」
エースは不貞腐れた様に口を尖らせた。
「ごめんなさい」
春日は歩みを止めると頭を下げた。
「失恋したのも、勘違いだったみたい。それに、エースを二股とか言ってごめん!出来たら許して」
「勘違い?」
エースは驚いた顔をして春日の言葉を遮る。
「あ、うん。あのね、エースがお母さんと歩いてるのを見て、彼女だって勘違いしたの」
春日は照れながら言葉を重ねた。
「そうだったのか」
「こんな、すぐに誤解して勘違いしちゃうんだけど、良かったらまた付き合って下さい!エースが大好きです!」
春日は頭を深々と下げる。エースは驚いてから、顔を赤くした。
「お、俺の方こそ今度はちゃんと説明するから付き合って下さい!俺も春日が大好きです!」
エースも同じように頭を深々と下げた。
「ふ」
「ぷ」
「「あははははは!!!」」
2人は同時に笑い出した。
「さて、今日は部屋は使えないからどーすっかなァ?」
エースは繋いだ手とは逆の手で顎を撫でる。
「そっか、部屋めちゃめちゃだったもんね。あ、なら家に来る?」
春日の言葉にエースは急に真面目な顔になる。
「誘ってるのか?」
「へ?!いや、ちが!」
春日が顔を真っ赤にしながら首を左右に激しく振る。
しかし、それを無視してエースは春日の腰に手を回すと強い力で引き寄せた。
「この前お預けんなった分も入るから、覚悟しろよ?」
エースはニヤリと笑った。
いけない事と分かっていて「って!まだ帰って無かったのかよ!」
「だってね!エース!ロジャーが離してくれな」
「聞いてねェ!!!」
「何だ、意外にうぶなのか?」
「うるせェ」
「ぐはっ!冷静に冷たく言われた!!父ちゃんは悲しい!!」
「俺の親父は白ひげだ」
「…………ニューゲートめェェ!!!」
「オヤジに手ェ出したらただじゃおかねェからな」
「…………」
「ロジャー、隅っこでのの字書かないの!」
「だーー!!!もー!良いからいい加減かえれよ!!!」
「「えー」」
「えーじゃねェ!!!」
「息子が冷たい……」
「散々一緒にいたろ?!」
「ムスコが冷たい……」
「出ていけ」
「…………本気で冷たい!!!」
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