01

「で?付き合い出したと」

ベックマンが熱燗を口に運びながら聞いた。

「だってよー」

「だってじゃねェ」

シャンクスの言葉をベックマンはピシャリと遮る。

「大丈夫だって!高校生なんて思春期真っ只中だろ?ちょっと年上の男にくらっと来ただけだよ」

シャンクスはビールを煽る。

「……まァ、否定はしないが」

ベックマンは呆れながらもししゃもを口の中に放り投げた。

「お前は大丈夫なのか?」

ベックマンはカウンターに隣り合うシャンクスの顔を見ずに口を開く。

「は?」

シャンクスは何だ?とベックマンを見る。

「もし、お前が本気になって、相手が恋に恋していただけだと気付いた時、大丈夫なのか?」

ベックマンはチラリとシャンクスを見た。

「……あのなー、相手は20は年下だぞ?有り得るか?」

シャンクスは呆れながら塩辛を箸で口に運ぶ。

「さてな」

ベックマンは熱燗を飲み干した。

「…………」

シャンクスもビールを飲み干した。



それはもう4ヶ月は前の話。

クラス担任ではない、国語の担当クラスの生徒である□□逢が告白をしてきた。
いつもならそれで追い返すはずだが、何故か「なら、次の模試で全教科百点取ってみろ」と言った所、国語以外を満点を取って見せたのだ。


「有り得ないと言うが、お前が条件出してOK出す時点で、気になっていたと言えないか?」

ベックマンの言葉にシャンクスは「まさか!」と鼻で笑った。







「シャンクス先生ー!」

高校生でも化粧をしている女子はかなり多い。
そんは女子生徒がシャンクスに近付いて腕を絡める。

「おー、木下。どうした?」

シャンクスは笑顔のままで聞く。

「いつになったらデートしてくれるのー?」

木下と呼ばれた女子生徒が甘く囁く。

「そうなー」

シャンクスは女子生徒に顔を近付ける。
女子生徒はそれにドキリとする。

「お前が化粧を止めて年が20は俺に近付いたらな」

ニヤリと笑うシャンクスの顔に女子生徒がハッとする。

「もー!化粧止めるのなんて今更無理!!」

「はいはい」

シャンクスは女子生徒の頭をぽんぽんと叩くとそのまま離れた。









「で、これがこー」

「…………」

冬の日な日は短い。
既に落ちかかった太陽は赤く染まっていた。
そんな中教室に響くのはシャンクスの解説する声と逢の鉛筆を動かす音。

「…………□□」

「なんですか?シャンクス先生?」

シャンクスに名を呼ばれて逢は顔を上げずに声を出す。

「何怒ってんの?」

「…………出来ました」

それに答えず逢は出来上がった課題をシャンクスに差し出す。

「読解力がなー。これはさー、主人公の気持ちが」

「へー、女子高生一人の気持ちも解らなくて良くもそんな事言えますねー」

シャンクスが解説しようと赤ペンを持つと不機嫌そうに逢が口を開いた。

「……やっぱ怒ってんのか」

シャンクスはやれやれと赤ペンで自身の赤い髪をかく。

「だって!先生ってば、木下さんにベタベタされてデレデレー!」

逢は口を尖らせて不機嫌そうにした。

「なんだ、焼き餅か!可愛いとこあるじゃねェか!」

シャンクスはニヤニヤと笑うと逢の頭を乱暴に撫でた。

「焼き餅焼くよ!悪い?!」

逢は顔を真っ赤にしてシャンクスを睨み付けた。

「いやー、子供は素直が一番だな!やっぱ!」

シャンクスは満足そうに笑った。

「子供扱いー!」

逢はますます不機嫌な顔になる。

「子供だろ?せめて一人立ちして自分で働いて金稼ぐ様になったら言え」

シャンクスはべーっと舌を出す。

「お金ならバイトで!」

「バイトなんかと一緒にするんじゃねェ」

「なら、大学行かないで働く!」

「はぁー……」

逢の言葉にシャンクスは大きくため息をついた。

「あのなー、大学行かせて貰えるんだろ?ちゃんと出ろ。親や金のせいで行きたくても行けない奴もいるんだぞ」

シャンクスは真剣な顔で逢を見る。

「でも……」

「でも?」

シャンクスは真剣な表情のまま逢の顔を覗き込む。

「私はシャンクス先生とちゃんとした恋人同士になりたいの……」

逢は俯き顔を真っ赤にして言葉を出した。

「…………ちゃんとした恋人同士って?」

シャンクスは机に肘を置き、手の甲に顎を乗せる。

「え?えーっと、デートしたり?」

逢は考えながら口を開く。

「してんじゃねーか」

シャンクスは「今」と言う様に人指し指で下をさす。

「じゃ、なくて、街に出てクレープ食べたり?マック行ったり?ケーキ食べたり?」

「食べるのばっかだな」

シャンクスは呆れたように突っ込む。

「だって!!」

逢は照れ臭そうなのを大きな声で隠す。

「……約束だろ?俺は犯罪者になりたいんじゃない。□□が高校卒業して、大学に行っても俺の事が好きならデートしてやる。今はこれが恋人同士のデートだ」

シャンクスは静かな声でそう言葉にした。

「……分かってる。シャンクス先生と恋人同士になれたんだから贅沢は言わないよ!」

逢は必死に頷いた。

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