初夢をリセット
「っ……!!!」
カミューは隣から聞こえる苦しそうな声に目を覚ました。
まだ辺りは暗く、静かで深夜だと解った。
カミューはそっと隣に眠る○○の顔を覗き込む。
「○○」
カミューは余りにも苦しそうなその顔に静かな声で○○を起こす。
「ん……くっ」
その内どんどん状況は悪くなり、○○は目を覚まさぬまま涙を流し始める。
「っ!○○さん?大丈夫ですか?」
カミューはしっかりした声を出し○○を揺り動かした。
「っ!!かみゅー……さん」
○○はボーッとした表情でカミューを見上げながら名前を呼んだ。
「どうしました?怖い夢でも見ましたか?うなされていましたよ」
カミューは優しく笑いながらゆっくりと○○の髪をなでた。
「カミューさん……。カミュー……さん!!」
○○は寝転んだままカミューの腰に抱き付いた。
「大丈夫です。私はここにいますよ」
なるべく優しく声を出しながらカミューは○○が落ち着くように撫で続けた。
「落ち着きました?」
呼吸が整ったところでカミューが○○に静かに話しかけた。
「……はい」
カミューに抱き付いたまま○○は頷いた。
「どうしたんですか?」
カミューは○○の髪を撫でたまま聞く。
「……怖い夢を見ました……」
○○は消え入りそうな声で呟いた。
「どんな?」
「……」
「喋ってしまった方が楽になりますよ」
「……」
優しいカミューの声に○○の瞳は不安に揺れる。
「大丈夫。私がいます」
カミューは愛しそうに○○の額に口付けをした。
「……この前の……」
○○は意を決した様に話し出した。
「あの、カミューさんが怪我をした時の事を……」
○○の言葉をカミューは噛み締める。
「それは……あの炎の運び手の?」
カミューは同郷のマキを助けた時に背中に大きな火傷を負ったのだ。
「…………」
「○○さん?」
カミューは黙り込んだ○○を不思議そうに覗き込む。
「夢で……私はいらないから、カミューさんはマキさんの元に残ると……」
○○はギュッとカミューに抱き付く手を強くした。
「……すみません」
カミューは小さく謝る。
「例え夢の中であっても貴女を不安にさせてしまって」
カミューは○○の体を引き上げ、顔を合わせた。
「俺は○○を守るとユーライアに誓っている」
カミューは真剣な目で○○を見つめる。
「悪夢からも守りたい」
カミューはそっと○○の唇に己のそれを重ねた。
「……ん」
段々と深くる口付けに○○は目を閉じた。
「今日はこうしていましょう。きっと幸せな初夢が見られます」
カミューは顔が見れる様に○○の首の後ろに腕を通した。
「これじゃカミューさんが疲れて……」
「大丈夫ですよ」
カミューは柔らかく微笑むと布団をかけなおした。
「ゆっくりお休みなさい」
カミューが言うと○○はホッとした顔をして目を閉じた。
「おはようございます○○さん」
「おはようございます!カミューさん!」
「眠れました?」
「はい!カミューさんと一緒になすを食べる夢を見ました」
「なす……ですか?」
「そうたんですよ。不思議なんですが、あと!左右対称の綺麗な山を見て、鷹が飛んでました」
「へぇ、不思議な夢ですね」
「はい。今年も良い年になりそうです!」
「ふふ、私もですよ」
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