楽しい誕生日
昨夜、大晦日の出来事。
○○はずっと憧れていたエースに告白を受けた。初めは驚きが勝ったが、段々と喜びと実感を感じていた。
そして、もう少しで初日の出が昇ろうとしている甲板では多くのクルーが今か今かと日の出を待ち望んでいた。
「明るくなってきたね」
年数だけは立派に古株な○○はエースの横で地平線を見つめた。
「だな。何か楽しいな」
エースは無邪気に笑顔を見せた。
この船、四皇エドワード・ニューゲートが率いる白ひげ海賊団に来たばかりの時は「人切りナイフ」と揶揄される程に荒れていた。
そんな彼が白ひげや1番隊隊長のマルコなどの人柄に触れ、今ではすっかり白ひげ海賊団の一員となっていた。
今ではその実力で欠番が続いた2番隊の隊長へとの声もあった。
「うん!私も楽しい!こんな素敵な年越しは初めてだよ」
○○は嬉しそうに笑うとエースの肩へと頭を預けた。
「っ!……」
それに一瞬顔を赤めるエースがそろりと○○の肩に自分の腕を回そうと手を伸ばす。
「あ!そうだ」
「な、なんだ!?」
突然○○が振り返りエースは慌てて手を引っ込めた。
「どうしたの?顔赤いよ?」
○○が不思議そうにエースを仰ぐ。
「いや!何でもねェ!!!それより、何だ?」
エースは平静を装うと口を開いた。
「うん!エース!お誕生日おめでとう!!」
○○はにこりと笑った。
「……誕生日……ねェ」
エースは途端に顔を歪めて地平線を見た。
「そうだよ!エースがこの世にこうして産まれてきてくれなかったら、私はこの幸せを味分けなかったんだよ!」
○○は力を入れてエースに訴えかけた。
「…………そうだな」
エースは驚いた顔をしてから優しく顔を緩ませた。
「だから!おめでとう!!」
「ああ、ありが」
○○の笑顔に返そうとしたエース突然強い力に引かれた。
「そうか!エース誕生日か!」
ガッシリとエースの肩を掴んだのは4番隊隊長のサッチだ。
「そりゃ、めでたいねい」
逆側の肩を掴んだのはマルコ。
2人共に昨夜からの宴のせいか、非常に酒臭かった。
「邪魔すんな!」
エースは不機嫌に肩に掛かる腕を振り払おうとする。
「そう言うなよ!」
サッチがニヤリと笑う。
「酒臭ェ!!!」
エースが嫌そうに顔を背ける。
「まァまァ、俺達が祝ってやるよい」
マルコがニヤリと笑う。
「っ!ッテメェ等!!!離せ!!!」
ひょいと2人にエースが持ち上げられると、サッと周りのクルー達が集まってエースを胴上げし始める。
「おめでとう!エース!!」
「誕生日おめでとう!」
「いくつになったんだー?少年!!」
「エースちゃんおめでとうさん!!!」
次々と声をかけられるエース。
「やめ!!俺はガキじゃねェよ!!!」
エースは意地になりながら「おろせ!」と叫んだ。
「グララララララ!!!エース!!!」
「お、オヤジ!!!」
担ぎ上げられたままエースは白ひげに目線を向ける。
白ひげはエースとマルコをつまみ上げる。
「俺からのプレゼントだ!!!」
白ひげはフンっ!!!と叫びながらエースとマルコを空高く投げ飛ばした。
「うわぁぁぁぁ!!!!」
エースは余りの速さと高さに思わず叫ぶ。
「よっ」
マルコが不死鳥に変身するとエースを爪で捕まえた。
「おお!!こうして見ると良い景色だな!!!」
エースはキラキラとした目で周りの景色を見回した。
「○○は子供の時からこの船で育った」
マルコが静かに声を出した。
「あいつの事はクルーみんなで可愛がってたよい。だから」
マルコの声が低くなる。
「あいつを泣かせる様な事するなよい」
マルコのニヤリと笑う顔にエースはごくりと喉を鳴らす。
「もちろだ!!」
エースは真剣な目でマルコに頷いた。
「そうかい。なら、安心だよい。でも」
「へ?」
マルコはパッとエースを掴む手を離した。
「可愛い妹に手を出した罰だよい」
「ふざけるなぁァァァァ!!!!!」
マルコは笑いながら落ちていくエースを見ていた。
楽しい誕生日「え、エース!!!」
「おーい!誰かエース引き上げてやれー!!!」
「ぶはっ!!!死ぬがどおもっだ!!!」
「おめでとうエース!!!」
「たのしいか!!!?」
「…………ふざけんなよ!!!!」
「顔笑ってるぜー!!!」
「「「あははははは!!!!」」」
新年も白ひげ海賊団は笑いが絶えない。
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