年越しはあなたと

「はぁ…………なんで私がこんな事を……」





年末、ようやく今年も無事に仕事納めを迎え、るんるん気分でおせちの材料を買ってスーパーを出た所で奴に捕まった。

○○は足取り軽く外に出るとカカシがいた。

「よっ!○○」

軽く片手を挙げるカカシに○○の顔は自然と歪んだ。

「はたけ……上忍……」

○○の声はもやは楽しそうな雰囲気は微塵も無かった。

「夫婦なんだからもっと気軽に呼べば良いじゃない」

カカシは呆れたように声を出した。

「私は認めてません!」

○○はキッと睨むようにカカシを見た。

「数の子に酢ダコ。うん!良いね!」

カカシは音もなく近付くとスーパーの袋の中を確認した。

「ちょっ!勝手に止めてくださいよ!」

○○はパッとスーパーの袋を自分へと抱き寄せた。

「さて!帰りましょーか!」

カカシはくるりと背を向ける。

「そうですね!では!良いお年をー!」

○○がカカシに背を向けると一目散に走り出した。

「さ!行こうか!」

先回りしたカカシに軽々と○○は抱き抱えられた。

「い、いやぁぁぁぁ!!!!」

○○の声はすぐにカカシと共に消えた。








そして、○○はカカシの家でお煮しめを作らされていた。

「……どうして私がこんな事を……」

○○は大きくため息を付いた。

「出来た?」

「ぎゃ!!!」

突然背後に現れたカカシに○○は悲鳴あげた。

「相変わらず色気の無い悲鳴だね」

カカシは呆れながら声を出す。

「もともと色気なんてないですよ!」

○○は怒りを隠そうとせずにカカシを睨み上げる。

「そんな事ないでしょーが」

カカシは良いながらにこりと笑う。
その顔に嫌な予感がした○○はとっさにカカシから距離を取ろうとするが、あっと言う間にカカシに捕まった。

「やっ」

口布をずらしたカカシの口が○○の首筋を這う。


グツグツと鍋が煮える音とカカシの息使いと○○の漏れる声だけが部屋に響く。





「さて」

すっかりと力の入らなくなった○○をカカシがニヤリと見た。

「出掛けるよ」

カカシは乱れた服を直すと立ち上がる。

「……」

「何?このまましたい?」

動かない○○にカカシが再び近付く。

「っ!!」

○○は首を激しく左右に振ると立ち上がった。

「そ?ざーんねん」

カカシは普段着で○○を連れ立って外に出た。






「どこに?」

初めは黙って木々の上を走っていたが、痺れを切らせて○○はカカシに聞いた。

「もう少し」

カカシはそれだけを言い黙った。




「……っうわ……!!!」

思わず○○は声を出した。
山の高い場所は灯りもなく見晴らしも良い。木の葉の里が一望できた。


ーーゴーン


「あ、除夜の鐘始まりましたね」

○○は木の上から耳を済ませた。大きな金の音が里中に響き渡る。

「この場所好きなんだ」

カカシが静かに声を出した。その声は○○に話をしていると言うよりは、自分自身に語るようだった。

「任務から帰ってきて、木の葉の里を見下ろすと帰ってきたと思える。どんなに辛い任務でも立ち直れる」

カカシの独白に○○は聞いても良いのか迷いながらも耳を傾けた。

「……」

「……」

2人の間に沈黙が支配し、除夜の鐘の音だけが響いていた。






しばらく2人は静かに金の音を聞き入っていた。

「百」

「え?」

カカシの声に○○は振り返る。

「101」

カカシの言葉に除夜の鐘の回数だと気付いた。

「私は訳のわからない年でした」

○○も静かに話し出した。

「103」

「遠い存在だった上忍の子を産めなんて無茶な任務」

「104」

「何だか詐欺のように結婚させられて」

「……105」

カカシの数える声が一歩遅れる。

「旦那様には愛してもらえないし」

「愛してあげるのに」

「体だけじゃ嫌です」

「…………107」

カカシが数え終わると日付を跨いで新年を迎えた。

「明けましておめでとうございます」

○○はカカシに体ごと向き直る。

「108。明けましておめでとう」

カカシも○○に体ごと向いた。

「今年はどんな一年になりますかね?」

○○はクスリと笑って顔を里へ戻した。

「     」

「え?なんですか?」

「……いや。何でもないーよ!」

何かが聞こえた様な気がして○○はカカシを見上げるが、カカシはいつものようにはぐらかす様に笑うだけだ。







年越しはあなたと








「さて!そろそろ帰ろうか?」

「そうですね。さすがに寒くなりました」

「誘ってる?」

「いいえ!と言うか、どうしたらそんな解釈に」

「寒い→温めて→カカシさんが温めて(ハート)みたいか?」

「いりません。帰ります」

「よし!今年中には一緒に住もうね!」

「は?嫌ですけど」

「よし!なら早い方が」

「って、聞いてないし!」

「善は急げって言うでしょーが!」

「触るな!担ぐな!連れて行くなぁぁぁ!!!」


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