04

「……」

サンジは出航準備をしながら萌を待っていた。

屈辱だが、店主に手話を習い萌に気持ちを伝えた。
いつものようにもっとたくさん褒め言葉を並べなかったが、時間が短過ぎで割りと真面目な手話しか覚えきれなかった。

「でも……言いたい事は言えたな」

サンジは紫煙を吐き出しながら陸に目を向けた。
すると、萌がゆっくりと現れるのが見れた。

「っ!萌さん!」

サンジはキッチンから甲板へ、甲板から陸へと軽やかに降り立った。

「っ!!」

突然船から飛び降りたサンジに萌は驚きの表情を隠せずにいた。

「『こんにちは』」

サンジは声と手話を同時にした。

『こんにちは、サンジさん』

萌はゆっくりと指を動かした。
サンジのそれとは違い、優雅な手付きはまるで指先から声が聞こえる様だった。

「『どう?』」

サンジは言葉少なく聞く。サンジらしくなく、手には汗が滲んでいた。

「……」

萌は小さく首を左右に振ると、手紙をサンジに差し出した。

サンジがそれを受け取ると萌は少し寂しそうに笑った。

『貴方が許してくれるのならば、私は貴方の帰りを待ちます』

萌の言葉を見てサンジは彼女とは一緒に居られない事を理解した。

「『ありがとう』」

答えを聞かせてくれた事に対してサンジは紳士的に頭を下げた。

『私こそ、ありがとう』

萌も頭を下げた。








「サンジくんたら、今回は本気だったのね……」

ナミは甲板で2人の様子を見ていた。

「ふふ、残念そうね」

ロビンはクスリとナミを見て笑う。

「っだれがよ!」

ナミは呆れながらロビンを見る。

「いつも冗談にしか聞こえないものね。……今回はとても誠意もあったし」

ロビンはこちらに帰ってくるサンジを見つめた。

「あ!ナミさーん!ロビンちゅわーん!紅茶いれるねェー!!!!」

サンジはナミとロビンを見付け、メロリーンと声を出した。
それが空元気である事はすぐにわかった。







『サンジさんへ

素敵なお誘いありがとうございました。ですが、私は耳が聞こえません。危険を察知する事がどうしても遅くなってしまいます。
貴方や船の方達に迷惑をかける事は火を見るより明らかです。

貴方が私の事を愛してると行ってくださった事を嬉しく、誇りに思います。

貴方が許してくれるのならば、私は貴方の帰りをここで待ちます。

私も貴方を愛しています。   萌』





サンジは何度も手紙を読み返していた。

「おーい!サンジ!!!魚釣ったから飯作ってくれ!」

「サンジー!!!俺も釣ったぞー!」

「おい、エロコック。酒」

次々に声をかけてくるクルーにサンジは大きく舌打ちをした。

「うるせェ!!!!ナミさんとロビンちゃんにデザートを作るのが先だ!!!」

サンジは大切に手紙を胸ポケットにしまうと仲間達の元へと歩き出した。








指先から聞こえる声









「オールドブルーを見付けたら迎えに行くからな!!!」

「何言ってんだ?」

「うわ!ルフィ!!」

「そうだ!みんな!新しい仲間を紹介すんぞ!!!」

「「「は?」」」

「萌だ!!!」

「っ!!!??」

「…………『よ、宜しくお願いします……』」

「る、ルフィ?」

「面白そうだから連れて来ちまった!」

「っ!…………『もう、離さない』」

『はい!サンジさん、宜しくお願いします』

「新しい仲間に宴ダァ!!!!」

「「「オゥ!!!!」」」

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