06
「ご馳走さまでした」
○○は手を合わせる。
「旨かったよい。予想以上に」
マルコは感心しながら言う。
「それは、お口に合ったなら良かったです」
○○は自分の料理の腕前を誉められて、素直に嬉しそうに笑った。
「…………」
「な、なんですか」
驚いた様に目を丸くしてマルコは○○を見る。
「いや、そう言う風に笑うのはあの時以来だと思ってねい」
マルコは目を細めた。
「そうですか。あ、食器洗うんで、持ってきてください」
「……よい」
甘い雰囲気にもならないかとマルコは苦笑する。
「マルコさん!食洗機!!」
○○は驚いて声を出す。
「あァ、あるよい」
「使った事ないです!」
○○は興味深そうに食洗機を開けて覗く。
「俺もないよい」
マルコも言う。
「…………使ってみたい」
○○は適当に食器を入れ行く。
「入った!」
「ほら、食洗機用洗剤だよい」
「何故使わないのにあるの?」
「使ってないからあるんだよい」
まるで言葉遊びだと思いながら○○はマルコから洗剤を受け取る。
「これを、こう」
マルコが手を伸ばし食洗機を起動させる。
「へぇ!凄い!」
○○は楽しそうに声を出す。
「どれくらい掛かるんですか?」
「ん?」
「時間」
○○は意外と近かったマルコから距離を取るように後ろに下がる。
「んー、2時間くらいみたいだねい」
マルコは食洗機を見て答える。
「そんなに掛かるんですか」
○○は動き始めたらしい食洗機を見る。
「じゃあ、終わったらちゃんと片付けてくださいね」
○○は営業スマイルをマルコにする。
「帰るのかい?」
「はい」
○○はするりとマルコの隣を通り抜け、帰り支度を始める。
「それては、また明日」
○○はぺこりと頭を下げる。
「送るよい」
「いえ!」
○○の否定の言葉にマルコは目を細める。
「この前と時間が違うだろい。こんな時間だ、素直に送られろい」
マルコは引く気は無いらしく、キーを手に取る。
「…………では、宜しくお願いします」
○○はぺこりと頭を下げた。
「よし、行くよい」
マルコは頷いた。
車に乗せられ、大体の場所を言う。
マルコは言葉少なく運転する。
○○はチラリとマルコを見る。
(この人、一体何考えてるのかな)
訳が分からないと○○はまたため息をついた。
「本気だったと言えばどうするよい」
「は?」
突然喋り出したマルコに間抜けな声で返す。
「……この前の事だよい」
「あぁ……」
マルコはチラリと○○を見る。
「あ、その角で良いです」
○○が言うと車はゆっくり止まる。
「…………」
「……そうですね」
無言のマルコに○○はうーんと考える。
「覚えて無いので、どうですかね?」
○○は困った様にマルコを見る。
見た瞬間に重なる唇。
「なら、またするかい?」
マルコが至近距離でニヤリと笑った。
「………………帰ります」
○○は鍵を開ける。
「この辺なのかい?」
「ええ」
「どれだよい?」
マルコは周りを見渡す。
「…………教えません」
○○は車から出た。
「…………冷たいねい」
マルコは苦笑する。
「明日、仕事が終わったらメールします。その時に時間教えてください」
○○はぺこりと頭を下げた。
「わかったよい」
マルコはため息をつく。
「どうぞ?」
まだ車を動かそうとしないマルコを促す。
「……それじゃあよい」
マルコは「じゃあな」と車を動かした。
○○は車が見えなくなってからアパートへと歩き出した。
「あー、なんなんだ!」
「あら、○○、おはよう」
「ロビーン!!!私ピンチ!!!!」
「ふふ、朝から元気ね」
「○○!一体何事じゃ!」
「ハンコック様助けて!!!」
「わらわはすでにあの方のもの!」
「「あの方?」」
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