01
せっかくの任された大きな仕事を使えない上司のせいで無駄にしてしまった。
「そう、落ち込まないで○○」
優しい声をかけてくれるのは同期入社の上司、美しき親友のニコ・ロビン。
「落ち込まないでって言う方が無理な話。あー、せっかくのチャンスを」
○○は悔しくて、情けなくて、ついつい優しいロビンに愚痴ってしまった。
「やはり男は信用ならんな」
美しき同期入社の上司、ボア・ハンコックが不機嫌そうに話に入って来た。
「○○は頑張ったわ。途中まで上手く行ったんでしょ?」
ロビンが優しい声色を出す。
「うん」
そう、そうなのだ。
出来て2年の会社だが、凄まじい勢いでこの世界に名を広げた赤髪と言う会社。
そこと取り引きをすると任されたのだ。
「□□○○と申します。こちら、わが社で働く女子の一番人気のお菓子です。どうぞ、奥さまにお渡しください」
初対面の時に、愛妻家の情報を手に入れていたので、あえて奥さま宛に折菓子を用意する。
「お!悪いな!●●も喜ぶよ」
シャンクス社長は至極嬉しそうに折菓子を受け取った。
次の時
「●●が凄く喜んでね」
シャンクス社長はメロメロな顔で嬉しそうに折菓子と奥さまの話をする。
「本当ですか!こちらとしても嬉しいです。あ、こちらも女子の間で人気の」
奥さまへのプレゼント作戦大成功!
何度も何度もゆっくりと確実に進んで行ったが、それを羨んだ上司ネズミがそれをかっさらう。
せっかく、お互いにメリットのある契約で進めていた物を勝手に自分に良いように書き換えた。
もちろん、破談。
ネズミは全ての責任を○○に押し付け、自分は悠々と上司の椅子に座りっぱなしなのだ。
「うう、怖かったのに!頑張ったのに!」
見た目はなかなかのイイ男なのだが、左目に目立つ三本の傷や部下達の人相の悪さに○○は必死に耐えていたのだ。
「ふん!男などから契約など!」
ハンコックが美しい眉間にシワを寄せる。
「まぁ、気持ちを切り替えて頑張りましょう」
ロビンは優しく○○の頭を撫でた。
「そうじゃ、○○は何も悪うない」
ハンコックも上から目線ながら、○○を気遣った。
「ありがとう!ロビン!ハンコック!」
○○はにこりと笑った。
とは、言った物の、悔しいものには変わり無い。
同期入社のロビン、ハンコックは共にガンガン出世して行った。
それは、驚くべきスピードであって、決して○○が遅い訳ではない。
標準的スピードで、着実に地位を築いて行っている。
しかし、如何せん、ロビンとハンコックと共にいると、自分がダメな人間に思えてならないのだ。
「はぁ……」
○○は小さくため息をついた。
「ふふ、悩み事?」
初めて入ったbarの美人店主が声をかけてきた。
「え?いえ!…………はい」
「クスクス、どうしたの?」
「……」
「知らない人間何だから、言っちゃえば?」
タバコを取り出しながら、美人店主が冗談めかして言う。
「……仕事で……嫌な事があって」
「あらあら、なにが?」
美人店主に進められるがままお酒を飲み、聞かれるままに答えていく。
「そんな上司、殴っちゃえば良いのに」
美しい顔をして恐ろしい事を言う美人店主は拳を作る。
「むひろ、殴らなかった私を褒めて欲しいでふ」
だんだんと怪しくなる呂律。
「ふふ、そうね。なら、忘れちゃいなさい。またすぐチャンスなんて回ってくるわ」
妖艶な笑みと共に○○の耳に雪崩れ込んで来る美人店主の言葉。
「そう、ですかね?」
○○は何だか楽しくなりニコニコと笑う。
「貴方もそう思うでしょ?」
美人店主は○○の隣の席に話しかける。
「そうだねい」
どうやら男のようだ。
チラリと○○は男を見る。
いつからそこに座っていたのだろう?
男と目が合った気がして、○○はにこりと微笑んだ。
そう、今思えばそれが合図になったのだ。
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