その後の時間7

「今日1日禁煙を命じます!!」








「……な、なァ、マルコ」

サッチが怖々とマルコに声をかける。

「あァ?!」

それは、それは恐ろしい顔付き目付きのマルコが苛立たし気にサッチを振り返る。

「ひィッ!!!」

それはただ振り返っただけなのだが、とても恐ろしい形相で睨まれたとサッチは悲鳴を上げた。

「なんだよい」

マルコは噛み付くようにサッチを見上げる。

「こ、これ、書類だ」

「ん」

マルコは引ったくる様に書類をサッチから奪い取ると目を通す。

「ど、どうしたよ、マルコ?他の部下がお前に近付けないって嘆いてたぞ」

サッチは恐る恐る探りを入れる。

「あァ?!普通だろい」

やはりドスの聞いた声は縮み上がりそうになる。

「普通じゃねェよ!!……あれか!お前今日煙草忘れたのか?ヘビースモーカーの癖に」

サッチはいつもある灰皿が綺麗な事に気付いた。
いつもデスクで吸うなと言っても聞かないマルコ専用の灰皿には灰もなければ、デスクの上には煙草すら置いていなかった。

「うるせェって言ってるんだよい!!!」

マルコから繰り出される蹴りをギリギリでかわし、サッチはマルコのデスクから離れた。

「一体なんなんだ?!」

サッチは命からがらと言った声を出す。

「あれだろ、今日は何の日か知ってるか?」

にやりと笑ったのはイゾウ。

「イゾウ!お前知ってるのか?!」

サッチはすがるようにイゾウを見る。

「あァ、今日は世界禁煙デーだそうだ。俺も煙管は置いてきた」

イゾウはクスクスと妖艶に笑った。

「……?そんな事マルコがする訳ないだろ。だって今までやった事なかったんだぜ?!」

サッチはありえるはずがない!と叫んだ。

「あァん?今まではな。だが、今はいるだろゥ?胸焼け起こす程甘ったるい女がさ。まァ、あのマルコをあそこまでする人間だ。猛獣使いかなんかじゃねェか?」

イゾウはにやりと妖艶に笑うとその場を去って行った。

「…………なるほど、○○ちゃんね」

サッチは大きくため息をつき、今日はマルコに近付くのを止めようと心に誓ったのだった。







「お帰りなさい!」

いつものように笑顔で出迎える○○。
しかし、その笑顔ですら今のマルコには苛立たせる原因でしかなかった。

「テメェ、覚悟は出来てるんだろうない?」

ドスの効いた声に○○の笑顔がひきつり、冷や汗が流れ落ちる。

「で、でも!たまには禁煙も良いでしょ?」

○○はマルコの脅迫めいた顔にもめげずに声を出す。

「あァ。今すぐテメェを組敷いて散々泣かしてやりてェよい」

マルコは今にも○○の襟元に掴みかかりそうな勢いだ。
いつもよりかなり乱暴な言葉使いにも○○はビクビクと怖がる。

「で、でもね、マルコさん」

「あァ?」

「もし、子供が出来たら……煙草は有害なんですよ?」

○○は少し寂しそうに口を開いた。

「……出来たのかい?」

「え?いえ!そう言う訳じゃ無いですけど!」

静かに声を出すマルコに○○は慌てて否定した。

「ただ……」


ーーピピピピ


「あ!鍋!!!」

○○は言いかけた言葉をそのままにキッチンへと姿を消した。

「…………」

マルコはその場に力なく項垂れた。










「豪華だねい」

「マルコさんが1日禁煙頑張ったご褒美です!」

「それは、嬉しいよい」

「さ!食べましょう!」

「……さっきの話だが」

「…………はい」

「…………夜は制服で」

「えぇ?!そっち?!え?あのサッチさんがくれた奴ですか?」

「あァ。ご褒美くれるんだろい?」

「…………3日続ければ……」

「………………普通で良いよい」

「諦め早っ!!」

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