その後の時間6
それは休みの前日、ジグソーパズルがテレビの中で特集になっていた。
「ねぇ、マルコさん。パズルって面白いよね?」
○○が隣で晩酌をしていたマルコを楽しそうに振り返る。
「あ?パズル、ねェ」
マルコはカランと氷を鳴らしながら頷いた。
「マルコさん!出掛けるから起きて!」
休日でのんびり朝寝坊を決め込んでいたマルコの布団を○○が思いきりよく剥いだ。
「まだ、いいよい」
マルコは布団を取り返そうと手を伸ばすか○○は布団をさらに遠くへと引き離した。
「よくない!はい!起きて起きて!」
○○がてきぱきとマルコをベッドから追いやると、バスルームへと押し込んだ。
「ねぇ、マルコさん。これとこっちならどっちが良いかな?」
今までマルコそっちのけで真剣に悩んでいた○○がパッとマルコを振り返る。
「あ?………あァそうだねい、こっち」
某夢の国キャラクターが笑いかけるパズルのパッケージを見て正直「どちらでも良い」と答えたくなる。
だが、それにより○○の機嫌が悪くなるのを避けたいマルコは仕方なく指をさした。
「うん!私もこっちかなぁって思ってたの!」
○○が上機嫌に笑うのにホッとしながら、マルコは居づらい環境にそっとため息をついた。
ここは某大型オモチャ店だ。
とてつもなく広い店内に、ベビー用品からテレビゲームまで色々な玩具が揃う。
そこのパズル売り場で真剣に悩んでいた○○はマルコの存在など忘れてるのではないだろうかと思うほど、熱中して選んでいた。
「じゃあ、買いに行きましょう!ここ、レジ通らないと店の外に出れないから」
○○は嬉しそうに笑うとマルコを連れてレジへ行き、結局はマルコが支払った。
「ありがとうございます!」
○○は嬉しそうにパズルの入った袋を抱えた。
「まんまと買わされたよい」
マルコは言葉とは裏腹ににこりと笑った。
「ふふ、ランチは私が奢りますよ!」
「お、太っ腹だねィ」
「その代わり、私が行きたいところで良いですか?」
「あァ。もちろんだよい」
○○は嬉しそうに笑うとマルコの腕に自分の腕を絡めた。
「いらっしゃいませ。お二人で宜しいですか?」
南国風の店に入ると女性店員がにこりと笑った。
「はい」
「では、ご案内します」
やって来たのはファミリーレストランだが、若い女性が好むような店だ。
「じゃあ、私はロコモコ」
「俺はカレーライス」
店員を呼び、決まったメニューをオーダーする。
「かしこまりました。ランチタイムでは全てのお料理にサラダとドリンクバーが付きます。ご利用ください」
店員はにこりと笑うとメニューを持って去っていった。
「ここのドリンクバーかなり充実してるんです!」
○○は嬉しそうに笑いながらその場合を指差す。
「へェ。先に行って来いよい」
マルコも少し興味深そうに見ながら言った。
「じゃあ、お言葉に甘えます」
○○は嬉しそうに席を立った。
色々見回り、マンゴー酢ドリンクを持って帰ってくる。
「美味しいです!」
○○はマルコに見せながら笑った。
「良かったねい」
マルコも穏やかに笑うと○○に進められ席を立った。
丁度マルコが行く前に女性客達がドリンクバーでキャッキャと選んでいた。
「ん?」
○○がマルコの様子を見てると何だか動きがおかしい。
うろうろとドリンクバーを見て、そのまま奥へ行ってしまう。
数分後マルコは再び姿を表した。トイレだったのか、今度はドリンクバーの前を素通りして帰ってきた。
「?マルコさん?どうしたの?」
○○は不思議そうに手ぶらのまま帰ってきたマルコを見る。
「……あー……」
マルコはちらりとドリンクバーを見る。
何だろうと思いそちらに目を向けるとまだ女性客の集団がいた。
「……もしかして、あの人達に恐れをなしたんですか?」
○○は目をぱちくりとした。
「…………女の中に男が一人で入っていくのには勇気がいるんだよい」
マルコはテーブルに肘を立て、手のひらに顎を乗せ、そっぽを向いた。
「あはははは!天下の白ひげのナンバー2が!」
「…………」
「泣く子も黙る白ひげのナンバー2が!」
「…………」
「ふふ!マルコさん可愛いですね!」
「…………言ってろい」
「取って来てあげますね」
「…………頼むよい」
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