その後の時間5

「お邪魔します!」

「どうぞ」

▲▲が○○の家に料理を教わりに来て早4回目。

初日は遠慮と緊張から失敗もしたが、今ではかなり色んな話を出来る様になった。
すっかりメル友でもある。

自分より年下の大学生と色々話すのはかなり刺激になった。






「じゃあ、今日はちらし寿司ね」

「宜しくお願いします」

「はい、お願いします」

▲▲が深く頭を下げるのを○○は楽しく笑った。

「まずは干し椎茸を水で戻します」

「お水で良いんです?」

「うん、良いよ」

▲▲は用意してあった小さなボールに水を入れ干し椎茸を5個ほど入れた。


人参、竹の子は千切りにし、油揚げは切った後熱いお湯をかける。

「余分な油を落とすためね」

○○は真剣に作業する▲▲に説明する。

ごぼうはささがきにして、灰汁抜きのために水で浸す。

水で戻した干し椎茸も形を揃えて切る。

「そしたら、具材を入れて椎茸の戻し汁を入れる」

「炒めないんですか?」

▲▲は不思議そうに聞く。

「炒めてももちろん良いけど、油使うからね。今回はなし」

○○はそこに醤油、酒、砂糖、みりんを加える。

「……適当に見えます」

▲▲が詳しい分量を求めるが

「うん、適当。こればっかりな舌と感覚で覚えるしかないわね」

○○は苦笑しながら舌を指差した。

「それが一番難しいのに……」

▲▲は少し不服そうであった。

「ふふ、愛しのエース君の為に頑張って」

○○がにこりと笑った。

煮込んで味を馴染ませる。

「あの」

「なに?」

▲▲がそろりと口を開いた。

「○○さんは、その、マルコ先生と結婚しないんですか?」

▲▲がおずおずと聞いた。

「え?うーん。どうかな?」

○○はにこりと笑った。

「一緒に住んでるのに?」

▲▲は純粋な顔で聞いてくる。

「うーん。結婚っていくら私がしたくても、マルコさんが興味なかったら出来ないでしょ?」

「で、でも、マルコ先生とは恋人なんですよね?」

「うん。大人って意外と臆病なのかも」

こう言う関係になるのに10年かかったし。と○○は胸中で付け加える。

「年を取れば取るほど難しく考えちゃうのね、きっと」

○○は困った様に笑った。

「…………良く、わかりません」

▲▲はうつ向いた。

「貴女達は?」

「わ、私達は大学を卒卒業したら結婚するつもりです」

▲▲は頬を赤く染めながら言う。

「あら、良いわね!若い方がウエディングドレスはえるわよ!」

○○はにこりと笑った。

「その、○○さんはそれで良いんですか?」

「ん?」

「マルコ先生と結婚しなくて……」

▲▲は気になるのか、食い下がる。

「うーん。まぁ、このままでも良いけど、やっぱりちゃんとしたいよ?まぁ、最終手段も残ってるけどね」

○○はくすくすと笑う。

「最終手段?」

▲▲が不思議そうにするので、○○は耳元で囁いた。

「っ!!な、なるほど」

▲▲は顔を真っ赤にした。

「さて!続きやっちゃおう!」

○○は楽しそうに気合いを入れた。







お酢と砂糖と少しの塩を混ぜ、炊きたてのご飯と混ぜる。

白ひげ夏祭りの内輪でそれを扇ぐ。

あら熱を取った具を酢飯に混ぜる。


「錦糸玉子を作ります」

「薄焼き玉子をって難しいですよね」

▲▲はむむむと卵を混ぜる。

「ふふ、裏技です。水溶き片栗粉を少し入れらと破れにくくなるの」

○○の焼いた薄焼き玉子は丈夫であった。

「凄い!」

▲▲は手を叩いた。

「じゃあ、これで出来上がり!」


ーーピンポーン


「あ!マルコ先生ですかね?」

▲▲がチャイムに反応する。

「本当。これ、使って。エース君に持っていくんでしょ?」

「はい!」

○○は▲▲に使い捨ての容器を渡した。







「お帰りなさい!」

「ただいまよい」

疲れたとマルコはネクタイを緩める。

「今ねっ!」

「あァ、良い匂いだよい」

マルコが○○を抱き寄せて髪の匂いを嗅ぐ。

「ま、マルコさん!」

○○の嫌な予感は的中する。
マルコはそのまま○○の唇に自分のそれを重ねた。
嫌がる○○の口を無理矢理こじ開け、舌を入れる。
流れ出る唾液も気にせずより深い物へと荒くする。

「っ!!」

「マルコさん!」

あまりに止まらない口付けに、○○はマルコの横っ腹を強く突いた。
マルコは突然の攻撃に不意を突かれた。

「何すんだい」

「お客様です!」

○○の言葉にそちらに顔を向けると真っ赤な顔でちらし寿司の入った使い捨ての容器を持った▲▲がいた。

「……来てたのかい」

マルコの問いかけに▲▲は今にも泣き出しそうな程顔を真っ赤にした。

「わ、わわわわわわわわ私、か、帰ります!!!お、おおおじゃ、お邪魔しましたぁぁ!!!!」

▲▲は自分の荷物を掴むとそのまま部屋を飛び出して行った。

「…………やっちまったねい」

マルコはぽつりと呟いた。

「これで▲▲ちゃん来なくなったら怒りますよ、マルコさん!」

○○はマルコをジッと睨んだ。










「お!▲▲!」

「え、エース!!!」

「え?どうした?泣いてんのか?!」

「ふえーん!!」

「え?泣くな!」

「私、私!み、見ちゃったよー!!」

「おい!どうしたんだ!何を見たんだ?!」

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