その後の時間4
「お帰りなさい!」
「ただいま」
○○はマルコを迎え入れた。
「休日出勤も大変だね」
「まァよい」
やれやれと疲れたようにマルコが言う。
「お風呂先入る?」
「沸いてるのか?」
「うん、その間にご飯の支度するね」
「頼むよい」
マルコは○○の頭をぽんぽんと叩くと風呂場へと向かう。
「よし!頑張りますか!」
○○は気合いを入れた。
「あ!マルコさん、ビール飲む?」
風呂から出たマルコへ声をかける。
「あァ、頼むよい」
「はーい」
マルコの前に缶ビールと刺身を出す。
「……独創的な切り方だねェい」
マルコは刺身を一切れ箸で摘まんだ。
「んー、ちょっとねー」
○○は真剣かのか、マルコへの返事が上の空だった。
「よし!出来た!!」
テレビを見ていたマルコがその声に電源を消した。
「あァ、今日は節分かよい」
「そうなの!なので、恵方巻きなる物に挑戦しました!」
「それでさっきの刺身か」
○○はドンッと置かれた太巻きを嬉しそうに見た。
「良いねェ」
「今、すまし汁も持ってくる」
○○は恵方巻きの他にもなん品か用意した。
「珍しいよい、すまし汁」
マルコがすまし汁を見る。
「えっと……たまには良いでしょ?」
「味噌買い忘れかい?」
「…………ご名答」
○○の言葉にマルコがくすりと笑った。
「今年の恵方は南南東だって!」
「コンパスまで用意したのかい?」
「うん!マルコさんの部屋にあったやつ」
「じゃあ、あっちの方だな」
マルコが指を差す。
「しゃべっちゃダメなんだよ?」
「はいよ」
「じゃあ、いただきまーす!」
○○はハムッと食べ始める。
ーーもぐもぐ
ーーじー
ーーもぐもぐ
ーーじー
ーーもぐもぐ
ーーじー
「んっ…………マルコさん?そんなに見られたら食べにくい」
マルコの視線に思わず○○は声を出す。
「いやな、この位置ってなかなか見られないからよい」
マルコがニヤリと笑う。
「……悪い顔だ。…………ってか、何が?」
「ふぇ」
「あああああああ!!!!」
○○が思い当たり大声を出す。
「何想像してんだい?」
マルコはいっそう楽しそうに笑みを深める。
「な!何でも!!!」
○○は顔を真っ赤にしてマルコを睨み付けた。
「もー!食べます!マルコさんも食べてください!」
○○は怒りながら食べ始める。
マルコは楽しそうに笑ってから恵方巻きに口をつけた。
「うん、旨かったよい」
マルコは手に付いた海苔を舐めとる。
「あ!まだあるんですよ!」
○○はにこりと笑った。
「ん?」
マルコは少し嫌な予感がした。
「じゃーん!!!」
○○は嬉しそうにもうひとつ太巻きを出した。
先ほどの恵方巻きと変わらない様に見える。
「なんだい?」
「ふふふ」
○○は嬉しそうに包丁を取り出した。
「見ててね!」
○○は嬉しそうに太巻きに包丁を入れた。
すると
「…………」
「どうですか?」
「…………なんだい?」
「パイナップル!」
「…………」
太巻きはいわゆる、飾り巻き寿司と呼ばれる物で模様はパイナップルであった。
「ほら!切っても切ってもパイナップル!!」
○○は嬉しそうに太巻きを切り分けた。
「凄いでしょ?」
○○は嬉しそうにマルコを見た。
「………………はぁ」
「マルコさん?」
「よし、解った」
マルコがすくりと立ち上がる。
「へ?」
「覚悟は出来てるんだない?」
マルコは恐ろしい笑顔を見せた。
「へ?いや、あの、冗談よね?冗談!!」
○○はあわわわと逃げようとする。
「それは、身をもって知るが良いよい」
マルコは素早い動きで○○を捕まえた。
「い、いやぁぁ!!!」
「鬼を倒すのには何が必要かねい?」
「あぁ!台所に豆が!!」
「残念、今から向かうのは寝室だよい」
「あう、いやぁぁ!!!」
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