その後の時間2

「あっ!!」

○○の息を飲む声がキッチンから聞こえた。

続いてガシャンッと言う何かが割れる音。

「大丈夫かよい」

マルコはくわえ煙草で新聞を読みながら何とはなしに声をかける。

「っきゃぁぁぁああ!!!」

少しの間の後、○○の悲鳴が響いた。

「どうしたい?!」

マルコは慌てて新聞を放り出し、キッチンへ走った。

「ま、マルコ……さん」

○○は泣きながら割れたマグカップを持ってマルコを見上げる。
その顔は恐怖に歪んでいた。

「大丈夫かよい?!怪我でもしたか?!」

マルコはただ事ではない○○の雰囲気に焦りを感じて、しゃがみこむ。

「う、う!ご、ごめ、なさい」

○○は泣きながら謝る。

「何に謝ってるんだよい?怪我はないのか?」

マルコはもう一度○○の顔を覗き込みながら聞く。

「わ、私は……無傷です。でも……」

○○は泣きながら割れたマグカップを差し出す。

「○○に怪我が無いならコップくらい良いよい」

マルコはホッとした。

「こ、コップくらい?!これ、エル○スじゃないですか?!」

○○は泣きながら、怒り始めた。

「あ?あァ」

マルコは不思議そうに頷く。

「本当にすみませんでした!このカップだって、私の1ヶ月の給料……」

○○は恐ろしい事が起きたかのようにカタカタと震える。



食洗機から食器棚に戻している時に、手が滑って落として割ってしまったのだ。
「あーあ」と思いながら裏面を見ると「HERMES」の文字が…………。
それに驚き悲鳴をあげたのだ。




「形あるものいずれは壊れるよい」

マルコはよしよしと○○の頭を撫でる。

「…………よくよく見れば……」

○○は立ち上がると食器を手に取る。

「このよくマルコさんが乱暴に使ってるグラス、バ○ラじゃないですか?!」

「手触りが好きでねい」

マルコはしれっと答える。

「こ、この大皿!ロイヤルコペンハ○ゲン!!」

「それは安物だろい?」

「何言ってるんですか?!これ、お皿立てて飾るための脚付いてますよね?!」

○○は叫ぶ。

「あァ、邪魔だから捨てた」

「捨てたァ?!」

「だって、飯食うのに要らねェだろい」

マルコは○○の驚きを見て呆れながら言う。

「い、意味が解らないです!これだから金持ちは!!」

○○はその後も食器棚に並ぶ食器がそうそうたる顔ぶれである事を知る。

「…………今まで食洗機なんて使ってごめんなさい!」

○○はマルコではなく、食器棚に向かって頭を下げる。

「……食洗機の方が割る心配無いだろい?」

マルコは呆れながら言う。

「何言ってるんですか?!パズルの様に隙間なく入れてしまったんですよ!」

○○は目を真っ赤にして怒る。

「…………割れたらまた買えば良いだろい」

マルコはため息をついた。

「…………ぶるじょあめ!!!」

○○はキッとマルコを睨み付けた。

「……あー、なら、お仕置きでもするかい?」

マルコはニヤリと○○を見る。

「……う……」

○○は怯み、一歩引く。

「高いコップ割っちまったもんねい?」

マルコは逃げる○○に静かに追い付く。

「っ!!ごめんなさい!」

○○は頭を下げて謝る。

「ちゃんと、体で払って貰おうかい?」

マルコは○○の腕を掴んだ。











「…………ぶるじょあめ」

「まだ言うかい」

「……そんなにお金あるならプ○ダのバッグでも買ってくださいよ!」

「良いよい。エル○スじゃなくて良いのかい?」

「っ!!…………うぅ……」





○ルメスを持つには不相応だと感じてしまう○○であった。

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